寒さが増し、年の瀬が押し迫る12月は演劇シーンもにぎやか。大作や豪華キャストが揃った舞台が多く、「あの名作を舞台で観るチャンス!」「テレビでおなじみのあの人に生で会える!」なんていう欲望にこたえてくれるような作品がラインアップしています。もちろん、冬の寒さから心をほっこり温めてくれる作品も。さあチェックしてみてください!

『春琴』 - 英国人の奇才が紡ぎだす谷崎潤一郎ワールド

撮影=久家靖秀

2008年に初演、2009年に再演されている『春琴』ですが、じつはわたし、観ておらず…。そう、チケットが取れなくて悔しい思いをしたのです。しかし、その『春琴』が、2010年、ロンドン、パリ公演で好評を得て、初演が行われた世田谷パブリックシアターに戻ってくるとのこと(この後、台湾公演も予定されているとか)!

『春琴』のモチーフになっているのは、耽美主義で知られる谷崎潤一郎の『春琴抄』『陰翳礼讃』。演出は、世界を舞台に活躍するサイモン・マクバーニーが担当します。1995年の来日後、「日本文化への憧れを強めた」という奇才が描き出す谷崎ワールド、期待が高まります。イギリス人であるマクバーニーが演出することで、日本独特の文化や所作の美しさがますます強調されるという声も多く、またこの作品で紀伊国屋演劇賞個人賞と、読売演劇賞優秀女優賞を受賞した深津絵里の演技にも注目!

モントリオール世界映画祭で最優秀女優賞受賞後、初舞台の深津絵里の演技は必見!

『春琴』―谷崎潤一郎「春琴抄」「陰翳礼讃」より
日程 2010年12月2日(木)~2010年12月11日(土)
会場 世田谷パブリックシアター(東京・三軒茶屋)
演出 サイモン・マクバーニー
作曲 本條秀太郎
キャスト 深津絵里、チョウソンハ、笈田ヨシ、立石凉子、内田淳子、麻生花帆、望月康代、瑞木健太郎、高田恵篤、本條秀太郎(三味線)
料金 S席7,500円、A席5,000円(立見一般:1階5,000円、3階3,000円)

『ラヴ・レターズ』 - 20年間上演され続けている朗読劇の傑作

1990年にスタートして以来、PARCO劇場で繰り返し上演されてきた『ラヴ・レターズ』が20周年を迎えました。この作品は男女二人の俳優による朗読劇。舞台にはテーブルと2脚の椅子が並ぶだけの至ってシンプルな舞台です。『ラヴ・レターズ』は1989年にニューヨークで初演されたA.R.ガーニーの作品で、幼なじみのアンディーとメリッサが、50年にわたって交換した手紙の数々を通して、彼らの人生をひもといていくというもの。

日本版の訳・演出は、初演から青井陽治が務めていますが、これまで出演した俳優はなんと380組以上! 第1回キャストは、大竹しのぶと役所広司が務めました(観たかったな~)。この作品、わたしも何度か観たことがあるのですが、同じ脚本なのに演者によって、「ここまで変わるのか!」というほど、響いてくる言葉も雰囲気も異なるのですっ! 日変わりキャストの朗読劇の醍醐味をぜひ味わってみてください。

派手な演出がないからこそ、二人の言葉が響きます!

『ラヴ・レターズ』
日程 2010年12月7日(火)~2010年12月14日(火)
会場 PARCO劇場(東京・渋谷)
A.R.ガーニー
訳・演出 青井陽治
キャスト 森山未來&YUKI/ささきいさお&池田理代子/鈴井貴之&保坂知寿/中川晃教&神田沙也加/野村萬斎&若村麻由美/田中圭&蓮佛美沙子/市川段治郎&木村多江/ユースケ・サンタマリア&永作博美(2人ずつ日替わり)
料金 5,000円

『黴菌』 - 年の瀬にふさわしい豪華キャストによる大人の密室群像劇

ケラリーノ・サンドロヴィッチの書き下ろし新作。昨年の同時期に上演された『東京月光魔曲』に続くケラの「昭和三部作」の第2弾で、昭和20年代半ばを舞台にした「大人の密室群像劇」です。

この「スケール感を持った会話劇」(ケラ)に、北村一輝、仲村トオル、ともさかりえ、緒川たまき、山崎一、高橋惠子、生瀬勝久などといった豪華キャストが名を連ねているのだから、これは期待をせざるをえないでしょう。個性も実力も兼ね備えたキャストが繰り広げる密室劇とは──?

タイトルの「黴菌」が意味するところも気になります…。

『黴菌』
日程 2010年12月4日(土)~12月26日(日)
会場 Bunkamura シアターコクーン(東京・渋谷)
作・演出 ケラリーノ・サンドロヴィッチ
キャスト 北村一輝、仲村トオル、ともさかりえ、岡田義徳、犬山イヌコ、みのすけ、小松和重、池谷のぶえ、長谷川博己、緒川たまき、山崎一、高橋惠子、生瀬勝久
料金 特設S席、S席9,500円、A席7,500円、コクーンシート5,000円
長谷川あや
大学時代から舞台にはまり、小劇団のストレートプレイから大型ミュージカルまでジャンルを問わず観劇。卒業後は出版社に入社し、編集者として活躍。1996年に退社し、現在はフリーライターとして、演劇専門誌や女性誌、情報誌などで読みものページを中心に執筆している

イラスト:gnk