冬の訪れを感じ始めると、なんだか劇場が恋しくなるもの。でも、年末はなにかと忙しくて……。そんな中、限られた時間をお金を出しても外したくない! 観ておくべき作品は? 充実のラインナップから3本をピックアップしました。

『タンゴ-TANGO-』 - 刺激的なスタッフ&キャストがポーランドの衝撃作に挑む

1965年のポーランドでの初演以来、繰り返し上演され続けている『タンゴ』。秩序の再建を求めて、家族を相手に革命に決起する青年・アルトゥルのあらぶる魂を、巨匠スワボミール・ムロジェックはおかしくも切なく、そして狂気的に描きだし、ワルシャワで上演された初演は激しい賛否両論、さまざまな議論が巻き起こったという話題作です。たたみかけるような展開に内包される鋭い社会風刺は、多くの人が毎日をのほほんと過ごす現代社会を映し出しているかのよう!? 怒りにうちふるえるアルトゥルの「革命」の行方は?

今回、とくに注目を集めているのは、当然ながら(?)人気演出家・長塚圭史と、さまざまなジャンルで存在感を見せつけている森山未來の強力タッグ。ナンセンスとブラックな笑いのあるムロジェックの戯曲を長塚がどう料理する? 串田和美の舞台美術も楽しみです!

45年前の戯曲に、現代社会を風刺する台詞がちらほら

『タンゴ-TANGO-』
日程 2010年11月5日(金)~11月24日(水)
会場 Bunkamuraシアターコクーン(東京・渋谷) ※地方公演あり
S.ムロジェック
演出 長塚圭史
キャスト 森山未來、吉田鋼太郎、秋山菜津子、片桐はいり、辻萬長、奥村佳恵、橋本さとし
料金 S席9,000円、A席7,000円、コクーンシート5,000円

『サンタクロースが歌ってくれた』 - 上川隆也が古巣「キャラメルボックス」の舞台に!

創立25周年を迎えた人気劇団、演劇集団キャラメルボックスの代表作。1989年に初演された同作は、この公演で4回目の上演となるが、今回は劇団OBの上川隆也と近江谷太朗が参加することで、大きな話題を集めています。実は上川の出演は劇団を退団する際に上川本人が希望したのだそう。

(C)堀弘子

舞台は、クリスマスイブの東京。彼氏のいないゆきみは友人と映画を見に行くことにします。が、約束の時間になっても友人は来ないため、ひとりで映画館のなかへ。映画館では芥川龍之介と平井太郎(後の江戸川乱歩)が怪盗黒蜥蜴と戦う『ハイカラ探偵物語』という作品を上演中でしたが、芥川が黒蜥蜴を追い詰めた場面で黒蜥蜴が映画の外の世界に逃げ出してしまった! その黒蜥蜴を追って、ほかの登場人物たちも映画の外に飛び出してしまい…。 上川、近江谷、そして、現在も看板俳優としてキャラメルボックスを牽引する西川浩幸と、メインキャスト3役を、21年前の初演時と同じ俳優が演じるという点も興味深いところです。

見て損なし! ハートウォーミングなストーリーが魅力の人気劇団の代表作

『サンタクロースが歌ってくれた』
日程 2010年11月30日(火)~12月25日(土)
会場 サンシャイン劇場(東京・池袋) ※地方公演あり
脚本・演出 成井豊
キャスト 西川浩幸、上川隆也、近江谷太朗、大森美紀子ほか
料金 7,500円

『ジャンヌ・ダルク』 - 堀北真希が、初舞台でジャンヌ・ダルクを演じる

15世紀のフランスに、彗星のごとく登場した少女、ジャンヌ・ダルク。13歳で"神の声"を聞いたとされ、19歳で火刑によってその生涯を閉じた彼女は、世界でもっとも有名な女性のひとりかも!? 敵対するイギリス軍に包囲されていたフランスの窮地を救った少女の劇的な物語はこれまでも世界各地で映画化や舞台化されてきましたが、本作はジャンヌの「人間性」に深く切り込むことで、リアリティのあるジャンヌ像に迫ります。

直木賞作家の佐藤賢一の原案を、人気劇団「劇団☆新感線」の座付き作家・中島かずきが脚本化。自身も個性派俳優として定評のある白井晃が演出、そして、世界を舞台に活躍する三宅純が本作のためにオリジナル楽曲を提供するなど、各方面のトップランナーが集結! 押しも押されぬ、2010年屈指の注目作なのです。そして、なんといっても注目は初舞台にしてタイトルロール・ジャンヌ役を演じる堀北真希。ジャンヌの働きによってフランス国王の座に就き、さらにジャンヌの運命を決定づけるシャルル七世は、本作が2度目の舞台となる伊藤英明が演じます。脇をかためる俳優陣も、壮大なストーリーにふさわしく、豪華絢爛! これは観るしかないでしょう。

日本のトップランナーたちは、世界的に有名な悲劇の少女をどう描く!?

『ジャンヌ・ダルク』
日程 2010年11月30日(火)~12月19日(日)
会場 赤坂ACTシアター(東京・赤坂) ※地方公演あり
脚本 中島かずき
演出 白井晃
キャスト 堀北真希、伊藤英明、石黒英雄、山口馬木也、柴本幸、塩谷瞬、高杉真宙、青木健、上杉祥三、春海四方、田山涼成、六平直政、浅野温子、西岡徳馬
料金 特設ステージサイド席/S席11,500円、A席9,500円
長谷川あや
大学時代から舞台にはまり、小劇団のストレートプレイから大型ミュージカルまでジャンルを問わず観劇。卒業後は出版社に入社し、編集者として活躍。1996年に退社し、現在はフリーライターとして、演劇専門誌や女性誌、情報誌などで読みものページを中心に執筆している

イラスト:gnk