冬季オリンピックも終わり、「なんだか気が抜けたな~」なんて感じているあなた。花粉症のシーズンが到来し、外をうろうろするのが億劫になっているあなた。そんなときこそ、劇場へGOです! 名作といわれる戯曲の妙に唸るもよし、濃密な空間での少人数の芝居に息をするのも忘れて集中するもよし。はたまた、豪華絢爛のド派手な舞台を日常生活を忘れて楽しむもよし。魅力的な舞台が数多く上演されるこの3月、そんななかでもとくに、「これは見ておきた~い!」という3本をピックアップしました。いずれも前売券は完売、もしくは残りわずかになっていますが、当日券など今から入手する方法もあり! あきらめるのはまだ早い!!!
『象』 - 別役実の初期の代表作に、稲垣吾郎が挑む
日本の不条理演劇の第一人者で、20世紀の日本演劇の礎を築いた別役実が、25歳のときに書いた初期の代表作がこちら。広島の原爆で背中に負ったケロイドを見せびらかすことで拍手喝采を求める「病人」と、それを我慢すべきだと彼を引き留める「男」を通じて、原爆の恐怖と悲しみ、苦しみをこれまで誰も試みなかった手法で表現。1962年の初演時、鮮烈な印象を残した別役の戯曲がふたたび上演されます。初演以来、約半世紀が経過したいまもそのテーマは色あせることなく、いえ、むしろ現代社会を生きる私たちにこそ、問いかけるものが大きいかもしれません。
今回の『象』では、「男」を稲垣吾郎、「病人」を大杉漣が演じます。演出は、劇団桃園会の主宰・劇作家・演出家で、『動員挿話』で読売演劇大賞優秀演出家賞を受賞している深津篤史。静謐で張り詰めた空気のなか、ときに激しくなる骨太の戯曲を深津がどのように表現していくか。そして、個性的なキャスティング! いまから仕上がりが楽しみ。前売券はすでに完売していますが、当日券も販売される予定(わたしも頑張る予定です)。
50年の時を経て、まったく色あせない名戯曲に浸る
『象』 | |
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日程 | 2010年3月5日(金)~30日(火) |
会場 | 新国立劇場 小劇場(東京・初台) |
作 | 別役実 |
演出 | 深津篤史 |
キャスト | 稲垣吾郎、奥菜恵、羽場裕一、山西惇、紀伊川淳、足立智充、阿川雄輔、神野三鈴、大杉漣 |
料金 | A席6,300円、B席3,150円、Z席1,500円 |
『農業少女』 - 「NODA・MAP」作品を「大人計画」の松尾スズキが演出
野田秀樹が20世紀最後の作品として2000年に発表した『農業少女』を、初演で同作に俳優として出演していた松尾スズキが演出! 主宰する「大人計画」で演劇活動を行うほか、映画の脚本・監督を務めるなど、マルチに活躍する松尾が、「農業」という言葉が初演時よりも大きなインパクトを持つようになったいま、あえて同作の新解釈に挑みます。野田戯曲、初演出となる松尾は、「芸術はおもしろくていいのだ、というボクの信念を、この芝居を通じて感じていただければ」と意気込み十分。
物語は、とある田舎にある「農業駅」からひとりの少女が電車に乗って上京するところから幕開き。東京で、彼女がさまざまな経験を通じ変わって行く様と、上京する電車賃を出してやり、少女を見つめ続ける中年男の叶わぬ恋を通じて、「日本が置き忘れようとしているもの」を問いかけた意欲作です。約300席の濃密な空間での4人芝居、いったいどうなる? NHK連続テレビ小説『つばさ』でヒロインを演じた多部未華子の初舞台主演作品としても注目度大、です。
連ドラのヒロイン、多部未華子の本格舞台デビュー!
『農業少女』 | |
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日程 | 2010年3月1日(月)~31日(水) |
会場 | 東京芸術劇場 小ホール(東京・池袋) |
作 | 野田秀樹 |
演出 | 松尾スズキ |
キャスト | 多部未華子、山崎一、江本純子、吹越満 |
料金 | 一般6,500円、サイドシート3,000円 |
『薔薇とサムライ~GoemonRock OverDrive』 - 結成30周年を迎える劇団☆新感線の真骨頂!
今年、結成30周年を迎える「劇団☆新感線」。節目となる年の最初の興行は、音楽メインの豪華版"RX"シリーズがお目見えします。2年前に発表され、好評だった『五右衛門ロック』のパラレルストーリーとして、「石川五右衛門」というキャラクター以外、時代背景も、物語の舞台も変わるシリーズ第2弾を上演。今回の舞台は、ヨーロッパ・イベリア半島の小国コルドニア王国というから、オドロキ! 新感線らしく、はちゃめちゃで、スペクタクルで、痛快な、とびきりのエンターテインメントが期待できそう。
作詞を担当するのは、『五右衛門ロック』、『蛮幽鬼』に続き、新感線作品は3作目となる森雪之丞。数々のヒット曲を生み出してきた森が、今度は新感線にどんな歌詞を施すのか──。五右衛門を演じる劇団の看板俳優・古田新太と、2003年『阿修羅城の瞳』以来、新感線の舞台には2度目となる天海祐希(ヒロインの女海賊役!)のW主演も見どころです。
古田演じる石川五右衛門が時空を超えて大活躍! 天海の女海賊にも注目
『薔薇とサムライ』 | |
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日程 | 2010年3月18日(木)~4月18日(日)/プレビュー公演3月16日(火) |
会場 | 赤坂ACTシアター(東京・赤坂) ※地方公演あり |
作 | 中島かずき |
演出 | いのうえひでのり |
作詞 | 森雪之丞 |
キャスト | 古田新太、天海祐希、浦井健治、山本太郎、神田沙也加、森奈みはる、橋本じゅん、高田聖子、粟根まこと、藤木孝ほか |
料金 | S席12,500円、A席10,500円/プレビュー公演:S席10,500円、A席8,500円 |
※『薔薇とサムライ』写真:みなもと忠之(みなもとは「さんずい」に「くび」)
長谷川あや
大学時代から舞台にはまり、小劇団のストレートプレイから大型ミュージカルまでジャンルを問わず観劇。卒業後は出版社に入社し、編集者として活躍。1996年に退社し、現在はフリーライターとして、All About演劇・コンサートや女性誌、情報誌などで読みものページを中心に執筆している
イラスト:gnk