一年でいちばん寒いこの時期、いつもはアウトドア派のあなたも、インドアのエンターテインメントを楽しんでみてはいかがでしょう? たとえば、お・し・ば・い。とくにこの2月は、硬派な(?)あなたにもぴったりの、知的好奇心をくすぐる作品が複数上演されます。お芝居を楽しみながら、歴史や人間の性を学べちゃうなんて、ほら、お得でしょ!? そうそう、ひとつ、冬場の観劇の注意点を──。寒い屋外と暖房のよーくきいた劇場内は寒暖差大。この寒暖差が自律神経に影響をおよぼし、眠気を誘うわけです。舞台上演中に眠りをむさぼるのは究極の贅沢だけど、(わたしのように)終演後に悔やまぬよう、万全の体調でのぞむべし!

『クローサー』 - 4人の男女の恋愛を通じ、人間の業に迫る名作

このタイトル、どこかで聞いたことありませんか? 『クローサー』は、1997年に、ロンドンで初演されて以来、これまで世界100都市以上で上演されてきた名作。ジュード・ロウ、ジュリア・ロバーツ、ナタリー・ポートマンといった豪華キャストが集った2004年の映画版をみている人も多いと思います。

この男女4人の織り成す恋愛ドラマが、今回、日本の若手俳優たちによって舞台化されるのです。ストリッパーのアリスを佐藤江梨子、フォトグラファーのアンナを辺見えみり、医師のラリーを眞木大輔、作家のダンを福士誠治──。ちょっぴりアダルトな本作で、彼らの新たな一面に出会えるのでは? とわくわく。愛の奥深さと怖さを赤裸々に描きながら、人間の本質を表出させた名作に、恋愛中のあなたも、恋愛をしたいあなたも、きっと刺激を受けるはず。

登場人物4人だけの濃密な恋愛ドラマに、日本の俳優陣はどう挑む?

『クローサー』
日程 2010年2月19日(金)~2月28日(日)
会場 サンシャイン劇場(東京・池袋) ※地方公演あり
パトリック・マーバー
演出・上演台本 鈴木勝秀
キャスト 眞木大輔、福士誠治、佐藤江梨子、辺見えみり
料金 8,000円

『上海バンスキング』 - 伝説の音楽劇、16年ぶりの再演!

「確か映画化もされたし、有名な作品だよね。でも舞台は見たことな~い!」って人も多いのではないでしょうか。それもむべなるかな。今回の再演は、1994年以来、16年ぶり! バンスキングファンが、そして、バンスキングの世界を体験したかった人(わたしもそうです)が待ちに待った瞬間がやってきました~。

キャストもほぼオリジナルメンバーというのが泣かせます。同作は、昭和10、20年代の上海を舞台に、ジャズにすべてを捧げたジャズマンたちの青春を描いた物語。当時を知らなくても、ジャズにくわしくなくても、上海に行ったことがなくても、なんだか懐かしく温かな気持ちがこみ上げてくる音楽劇です。いまはなきオンシアター自由劇場で、多くのファンを熱狂させた大ヒット作が、二十一世紀、どのように姿を変えてよみがえるのか、乞ご期待!

初演から31年。ほぼオリジナルキャストでの再演は奇跡!

『上海バンスキング』
日程 2010年2月23日(火)~3月14日(日)
会場 Bunkamuraシアターコクーン(東京・渋谷)
斎藤憐
演出 串田和美
キャスト 吉田日出子、串田和美、笹野高史、さつき里香、大森博史、真那胡敬二、小日向文世、服部吉次(黒テント)、小西康久、酒向芳、内田紳一郎、三松明人、片岡正二郎ほか ※配役は各公演当日開演1時間前に発表
料金 S席9,500円、A席7,000円、コクーンシート5,000円

『飛龍伝2010ラストプリンセス』 - 伝説のヒロインに、黒木メイサが挑む

この作品も見たことはなくても、タイトルに聞き覚えのある人は多いはず。舞台は、1960年代。日米安保条約の改定を目前に学生運動が激しさを増すなか、闘争の中で芽生えた全共闘の女委員長と機動隊の隊長の禁断の愛を通し、人間の生き様を描く、つかこうへいの初期の代表作だ。

1973年に『初級革命講座 飛龍伝』として産声を挙げた同作のヒロインは、これまで、石田ひかり、牧瀬里穂、内田有紀、広末涼子らによって演じられてきた。今回の公演で、学生運動に身を投じる女委員長、神林美智子役を務めるのは、黒木メイサ。実は15歳のとき、「北区つかこうへい劇団」に入団し、初舞台を踏んでいる黒木にとっては、6年ぶりとなる古巣での晴れ舞台となる。体のキレの良さには定評のある黒木が、どんな女委員長を見せてくれるか、楽しみ!

つかこうへい版『ロミオとジュリエット』

『飛龍伝2010ラストプリンセス』
日程 2010年2月3日(水)~2月21日(日)
会場 新橋演舞場(東京・新橋) ※地方公演あり
作・演出 つかこうへい
キャスト 黒木メイサ、徳重聡、舘形比呂一、矢部太郎(カラテカ)、馬場徹、東幹久ほか
料金 1等席・桟敷席9,000円、2等席6,800円、3階席3,500円
長谷川あや
大学時代から舞台にはまり、小劇団のストレートプレイから大型ミュージカルまでジャンルを問わず観劇。卒業後は出版社に入社し、編集者として活躍。1996年に退社し、現在はフリーライターとして、All About演劇・コンサートや女性誌、情報誌などで読みものページを中心に執筆している

イラスト:gnk