あけましておめでとうございます。年が明けて、シアターゴーアー(芝居好き)が考えるのは、「観劇初め」をどの演目にするか、ということ。「なんだっていいじゃん」という声が返ってきそうですが、1年の観劇ライフ(?)を占うためにもこのセレクト、結構大事だったりするんです。エンタメ業界は年末年始もお休み知らず(というか、逆に稼ぎ時?)。家でテレビを見るのに飽きたら、さあ劇場へ!

『アンチクロックワイズ・ワンダーランド』 - 公私ともに注目の劇作家、長塚圭史の帰国後第一作

1年間のイギリス留学から帰国した気鋭の劇作家、長塚圭史の帰国後第一作。早稲田大学在学中に長塚が結成した演劇ユニット「阿佐ヶ谷スパイダース」の再始動作品ということもあり、演劇ファンの視線は熱いっ(常盤貴子と結婚し、世間を騒がせた長塚の新作とあり、演劇ファン以外からの注目も熱かったりもする)。演劇の本場、イギリスでの経験を経て、重さの中にも救いがある作品作りに定評のある長塚の作風はどう変化したのか?

キャストには中山祐一朗と伊達暁といった「阿佐ヶ谷スパイダース」の面々とともに、豪華ゲストがずらり。チケット売上も好調で、東京、大阪公演では早くも追加公演が決まっている。ちなみに、「アンチクロックワイズ」とは、英語で「反時計回り」という意味。ある作家が事件に巻き込まれるが、そこで出会う人々はどこか自分が今まで書いた作品の登場人物に似ていて…。現実世界と非現実世界が融合していく、演劇スペクタクルに御期待あれ!

芸能界にもファン多し。一年半ぶりとなる人気劇団の新作!

『アンチクロックワイズ・ワンダーランド』
日程 2010年1月21日(木)~2月14日(日)
会場 本多劇場(東京・下北沢) ※地方公演あり
作・演出 長塚圭史
キャスト 池田鉄洋、内田亜希子、加納幸和、小島聖、伊達 暁、中山祐一朗、馬渕英俚可、光石研、村岡希美、山内圭哉
料金 5,500円 ※プレビュー公演は4,000円

『キャバレー』 - 傑作ミュージカルで藤原紀香がランジェリー姿を披露!

1966年のブロードウェイ初演以来、世界各国で上演されているミュージカル『キャバレー』の舞台は、ナチスドイツが台頭する1920年代のベルリンのとあるキャバレー。米国人作家とキャバレーの歌姫との刹那的恋愛を軸に、彼らをとりまく人間模様や不穏な世相を描いた佳作だ。

1972年には、ボブ・フォッシー監督&ライザ・ミネリ主演で映画化され、日本でも何度か上演されている名作ミュージカルだが、今回、ヒロインの歌姫・サリー役に藤原紀香が挑む。サリーが働くキャバレーの司会者(MC)には諸星和己。物語のストーリーテラー的存在の個性的な役だが、チラシの写真を見る限り雰囲気十分で、いったいどんなMC役を見せてくれるのかどきどき、わくわく。宝塚歌劇団に所属し、『エリザベート』『モーツァルト!』などで数々の演劇賞を受賞している小池修一郎が演出を手掛けるという点も気になるところ。きらびやかな世界と退廃的な空気をあわせもつ『キャバレー』の世界観は、小池の得意とするところ(のはず)。2010年初春、今までにない新しい『キャバレー』に出会える!

奇才・小池が朽ち果てていくキャバレーにどんな色を添えるのか

『キャバレー』
日程 2010年1月7日(木)~29日(金)
会場 日生劇場(東京・日比谷) ※地方公演あり
ジョー・マステロフ
作曲 ジョン・カンダー
作詞 フレッド・エブ
修辞・訳詞・演出 小池修一郎
キャスト 藤原紀香、諸星和己、阿部力、高嶺ふぶき、戸井勝海、杜けあき、木場勝己ほか
料金 S席12,600円、A席8,400円、B席4,200円/キャバレーシート30,000円(ペアシート・プログラム1冊付き)

『血は立ったまま眠っている』 - 蜷川作品初出演の森田剛と初舞台の窪塚洋介とのタッグに注目!

寺山修司が23歳の時に手がけた処女戯曲を、蜷川幸雄が演出する──これだけでも、シアターゴーアーはくらくらしてしまうような企画だが、キャストも刺激的&豪華だったりする。1960年代の安保闘争を背景に、若者たちの憤りや葛藤を描いた『血は立ったまま眠っている』は二人の若きテロリストを中心に進行する青春劇。その孤独さゆえにまるで兄弟のように身を寄せ合う2人のテロリストに挑むのは、V6の森田剛、そして、本作が初舞台となる窪塚洋介だ。

偶然か必然か、1935年という同じ時代に生を受けた寺山と蜷川。スピーディーな展開と、魅力的な人間描写で名高い同作は、生前の寺山自身が「愛着をもっている」と公言していた作品。「この戯曲の中にその後の私の演劇のあらゆる要素が萌芽している」という寺山の代表作に世界の蜷川はどう挑む?

寺山修司の処女戯曲に、世界の蜷川が挑戦

『血は立ったまま眠っている』
日程 2010年1月18日(月)~2月16日(火)
会場 Bunkamura シアターコクーン(東京・渋谷) ※地方公演あり
寺山修司
演出 蜷川幸雄
キャスト 森田剛、窪塚洋介、三谷昇、六平直政、寺島しのぶほか
料金 S席9,500円、A席7,500円、コクーンシート5,000円
長谷川あや
大学時代から舞台にはまり、小劇団のストレートプレイから大型ミュージカルまでジャンルを問わず観劇。卒業後は出版社に入社し、編集者として活躍。1996年に退社し、現在はフリーライターとして、All About演劇・コンサートや女性誌、情報誌などで読みものページを中心に執筆している

イラスト:gnk