今年も早かったですね、もう12月ですヨ。1年の最後を飾る月は、仕事も、プライベートも大忙し……というのが定番ですが、そうなんです! お芝居のほうも大充実で、うれしい悲鳴。え、忙しくて、芝居をみる暇なんてない? いやいや、さみしいこと言わないでくださいな。ハードな仕事のちょっと息抜きに、連日の忘年会で疲れ果てたからだを癒しに──。こんなときだからこそ、2、3時間のお芝居が心に、からだに、効くのではないでしょうか。師走のひととき、しばし現実を忘れられる注目の舞台をご紹介します。

『曲がれ! スプーン』 - 映画と舞台、あなたはどちらを先にみる? 

長澤まさみ主演で、現在上映中の映画『曲がれ! スプーン』は、もともとは舞台用に書かれた作品。京都を拠点に活動する人気劇団「ヨーロッパ企画」の上田誠が執筆し、2000年に『冬のユリゲラー』として初演。その後、2度再演された。

クリスマスイブに喫茶店に集まったさまざまな超能力をもったエスパーたちの姿をつづったサイキック・コメディは、テレビの超能力特番に夢中になり、スプーンを曲げようとした経験のある人には堪えられない、って私か。劇団の代表作ともいえる同作が、映画の上映に合わせて、全国8都市で上演される。映画の舞台化、舞台の映画化は国内外問わず多いけど、映画と舞台を同時に見比べることができる機会は実は少なかったりする! さ、映画と舞台、どちらを先に見ましょーか…。

随所にはりめぐらされた伏線が、ぴたっとつながる心地よさ!

『曲がれ! スプーン』
日程 2009年12月10日(木)~12月22日(火)
会場 紀伊國屋ホール(東京・新宿) ※地方公演あり
作・演出 上田誠
キャスト 石田剛太、酒井善史、角田貴志、諏訪雅、土佐和成、中川晴樹、永野宗典、西村直子、本多力、山脇唯
料金 前売3,500円/当日3,800円

『東京月光魔曲』 - 奇才ケラの書き下ろし新作は「探偵小説」の舞台版!?

劇作家で演出家、ケラリーノ・サンドロヴィッチの独特な世界観は、「KERAワールド」と呼ばれ、芸能関係者の間でもファンが多いというのは有名な話。女優・緒川たまきと結婚し、今、公私ともに充実(知らないけど、たぶん)のKERAの書き下ろし新作は、昭和初期の東京を舞台にした心理活劇だ。当時、流行した探偵小説の舞台版的要素が強そうだが、チラシには、「かの谷崎潤一郎氏も平伏すエロティシズム、名匠海野十三氏も驚愕する奇天烈さ」と銘打たれている。

構成力にも定評のあるKERAは、いったいどんな世界を作り上げようというのだろうか。年をまたいでの公演となり、12月31日の大晦日にはキャストとKERAによるトーク&ライブ、そして2010年へのカウントダウンを行うスペシャルバージョンを上演予定で、こちらも気になるところ。舞台初主演となる瑛太の雄姿も要チェックだ。

ケラ独特の「ナンセンス世界」に、瑛太をはじめ魅惑のキャストが挑む!

『東京月光魔曲』
日程 2009年12月15日(火)~2010年1月10日(日)
会場 Bunkamura シアターコクーン(東京・渋谷)
作・演出 ケラリーノ・サンドロヴィッチ
キャスト 瑛太、松雪泰子/橋本さとし、大倉孝二、犬山イヌコ、大鷹明良、長谷川朝晴、西原亜希、林和義、長田奈麻、赤堀雅秋、市川訓睦、吉本菜穂子、植木夏十、岩井秀人、長谷川寧/桜乃まゆこ、嶌村緒里江、森 加織、吉沢響子、渡邊夏樹/伊藤 蘭/山崎 一、ユースケ・サンタマリア
料金 S席9,500円、A席7,500円、コクーンシート5,000円/[12/31カウントダウン・スペシャルバージョン]S席13,000円、A席11,000円、コクーンシート8,500円

『ANJIN~イングリッシュサムライ』 - 日英から精鋭が集い、作り上げる渾身の合作

(C)宮澤正明

16世紀末に日本に漂着し、のちに日本史上ただひとりの青い目のサムライとなった実在のイギリス人ウィリアム・アダムズ(三浦按針)を描いた大歴史活劇だ。演出は、ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーのグレゴリー・ドーラン。トニー賞受賞の名優オーウェン・ティールがタイトルロールを務める。さらに家康役には市村正親、宣教師役に藤原竜也と、日英を代表する舞台人が勢ぞろい!

2010年に創立50周年を迎えるホリプロのこれまでの集大成ともいえる入魂の企画で、上演を知ったときは驚きのあまり、思わず「え~!」と声をあげて驚いてしまったほどだ。とくに藤原の台詞は英語が7割、日本語が3割で、本作のためにイギリスに短期留学するなど、何もかもが前代未聞の同作、実は、将来イギリス公演も視野に入れてあるとか。見ておかないと後悔するかも!?

日英の視点で描かれる鎖国前の「日本」とは?

『ANJIN~イングリッシュサムライ』
日程 2009年12月10日(木)~2010年1月18日(月)
会場 天王洲銀河劇場(東京・天王洲アイル) ※地方公演あり
演出 グレゴリー・ドーラン
脚本 マイク・ポウルトン
脚本共同執筆 河合祥一郎
音楽 藤原道山
キャスト 市村正親、オーウェン・ティール、藤原竜也ほか
料金 S席10,500円、A席8,400円
長谷川あや
大学時代から舞台にはまり、小劇団のストレートプレイから大型ミュージカルまでジャンルを問わず観劇。卒業後は出版社に入社し、編集者として活躍。1996年に退社し、現在はフリーライターとして、All About演劇・コンサートや女性誌、情報誌などで読みものページを中心に執筆している

イラスト:gnk