今月はアメリカで起こった史実を元に舞台化し、話題をさらった2作品と、小劇場ならではの温かみにほっこりできる作品1本を紹介! 同じ「芝居」という手法でも、テイストはまったく違う。さまざまな表現方法こそ、舞台の最大の魅力のひとつなのだ。

2009年も残り少なくなった11月、あなたが見たいのは、ドキュメントを題材としたミュージカル? スリルあふれる会話劇? それとも、テレビ、映画でおなじみの女優の、人間味あふれる魅力いっぱいの舞台? はい、どれも、これも取りそろえておりますよ!

『フロスト/ニクソン』 - 今、明かされる!? 「ウォーターゲート事件」の真実

1977年、米テレビ史上最高の視聴率を記録した伝説のインタビューが舞台に! 「ウォーターゲート事件」で大統領を辞任したニクソン元大統領に、英国のテレビ司会者フロストがインタビューを申し込む。ニクソンはこのインタビューを名誉挽回のチャンスと考え、高額のギャラを取り付け、インタビューを受諾。一方、フロストはニクソンを追い込むことでジャーナリストとしての名声を確立し、さらには全米進出を狙っていた。そんな2人の思惑の中、4日間にわたる生中継のインタビューが始まる。

2006年にロンドンで初演、翌2007年にはブロードウェイを震撼とさせた傑作戯曲は高い評価を得て、2008年にはアメリカで映画化。今年、日本でも公開されている。このスリルあふれる会話劇に、今回、北大路欣也と仲村トオルが挑む。テレビドラマ(2007年『華麗なる一族』)での共演はあるが、直接対峙するのは本作が初めて。ベテラン俳優2人の静かなぶつかり合いが、70年代のアメリカという国の空気感を浮き彫りにする。

緊迫の会話劇の醍醐味を最強キャストで!

『フロスト/ニクソン』
日程 2009年11月18日(水)~12月5日(土)
会場 天王洲 銀河劇場(東京・天王洲) ※地方公演あり
ピーター・モーガン
演出・上演台本 鈴木勝秀
出演 北大路欣也、仲村トオル、佐藤アツヒロ、中山祐一朗、谷田歩、中村まこと、安原義人
料金 S席8,500円、A席7,000円

『サボテニング』 - 水野美紀と脚本家・楠野一郎の演劇ユニットの最新作

女優・水野美紀と、旧知の仲である脚本家・楠野一郎が立ち上げた演劇ユニット「プロペラ犬」。小劇場にこだわり、魅力的な演出家と客演を迎えて上演される公演も、今回で、第3弾となる。初舞台の『アテルイ』(劇団☆新感線)で舞台の魅力にとりつかれ、なかでも「小劇場が好き」と公言する水野の、テレビでは見られない弾けっぷりは必見! やりたいことを存分にやるのって、やっぱり楽しいよねと、見ているこちらにも、元気がみなぎってくる。

新作『サボテニング』は、多くの人の部屋でそっと佇み、「人の言葉を理解する」らしい不思議な植物・サボテンを中心にした、売れない俳優(福田転球)とその妻(水野)、そしてその娘(猫背椿)の物語だ。想像を超える、独特の世界観にであえるはず!

自らプロデュースも手がける水野美紀の魅力が炸裂!

『サボテニング』
日程 2009年11月26日(木)~12月6日(日)
会場 赤坂RED/THEATER(東京・赤坂)※地方公演あり
楠野一郎
演出 倉持裕
出演 水野美紀、猫背椿、福田転球
料金 5,300円

『グレイ・ガーデンズ』 - 大竹しのぶ、草笛光子が織りなす、母娘の愛憎劇

2007年度、トニー賞3部門を受賞した、実話に基づいたドキュメンタリー・ミュージカル。故ジャクリーン・ケネディ・オナシス元米大統領夫人の叔母とその娘が、上流階級から没落していく様をコミカルに、そして、シリアスに描く。華やかな生活から凋落し、いまやゴミ屋敷と化した「グレイ・ガーデンズ」に住み続ける母と娘。彼女たちはなぜいまだそこに居続けるのか──。

2007年にブロードウェイで観劇。セレブの世界とはまったく無縁ではあるが、妙齢の独身女の私には非常に身につまされるストーリー展開と主演女優の圧倒的な存在感はいまも記憶に鮮やかだ。11月に初演される日本版では、1幕では母、2幕では娘と、1人2役を演じるヒロインに大竹しのぶ。2幕の母役には草苗光子と、日本を代表する2人の女優が顔を揃える。もともと小劇場用に製作されたこの作品は、登場人物が非常に少ないのも特徴(キャストは、7人のみ!)。2人の名女優の演技合戦をどっぷり楽しめるはず。

コミカルさの中にも哀しさが漂う、大人のミュージカル

『グレイ・ガーデンズ』
日程 2009年11月7日(土)~12月6日(日)
会場 シアタークリエ(東京・日比谷) ※地方公演あり
ダグ・ライト
音楽 スコット・フランケル
作詞 マイケル・コリー
演出 宮本亜門
出演 大竹しのぶ、草苗光子、彩乃かなみ、デイビット矢野、川久保拓司、吉野圭吾、光枝明彦
料金 S席11,000円、A席8,500円
長谷川あや
大学時代から舞台にはまり、小劇団のストレートプレイから大型ミュージカルまでジャンルを問わず観劇。卒業後は出版社に入社し、編集者として活躍。1996年に退社し、現在はフリーライターとして、All About演劇・コンサートや女性誌、情報誌などで読みものページを中心に執筆している

イラスト:gnk