甲子園も世界陸上も終わり、ふと空を見上げてみればすっかり秋の色。でも、「夏が終わっちゃったよ~」と悲しんでいる暇はありません。芸術の秋、の到来です。ショービジネス業界は、「秋、待ってました!」とばかりに気になる作品が盛りだくさん。夏の遊び疲れは、心を震わせるような生の舞台の感動で癒しましょう。

『ジェーン・エア』 - トニー賞ノミネートのブロードウェイ版を練り直した「完全版」

きっとたくさんの人が読んだことがあるはず! ブロンテ三姉妹の長女、シャーロット・ブロンテの世界的名作『ジェーン・エア』のミュージカル版が、日本で初めて上演されます。2000年にブロードウェイで初演され、トニー賞5部門にノミネートされた同作の日本版の演出を手掛けるのは、『レ・ミゼラブル』などの演出で日本でもすっかりおなじみのジョン・ケアード。今回、自らが手掛けたブロードウェイ版の脚本を刷新するという点でも、要注目です。ブロードウェイ版をさらに洗練させた「完全版」となる可能性も!? 

強く、激しいヒロイン、ジェーンに挑むのは、松たか子。近年、女優としてさらなる円熟味を見せる松と、繊細な演出で知られるケアードとのタッグも楽しみ。ミュージカルといっても、芝居的要素が多く、19世紀のイギリスを舞台に大人の愛を描いた物語、しっとりとした秋にピッタリです。

松たか子が永遠のヒロイン、ジェーンに挑む!

『ジェーン・エア』
日程 2009年9月2日(水)~29日(火)
会場 日生劇場(東京・日比谷)
原作 シャーロット・ブロンテ
脚本・演出 ジョン・ケアード
出演 松たか子 橋本さとしほか
料金 S席・SP席12,600円、A席7,350円、B席3,150円

『サッちゃんの明日』 - 「大人計画」の新作を小劇場で堪能すべし

「大人計画」で、このキャストで、小劇場(シアタートラム)での公演? とあれば、演劇ファンはチラシを見ただけで色めき立つこと間違いなし! というわけで、東京公演の前売りチケットはすでに完売しているのですが、全公演当日券が出るので、「チケット、持っていない~」という人もご安心を! 芝居だけでなく、テレビや映画などさまざまなメディアで活躍著しい「大人計画」の新作『サッちゃんの明日』は、松尾スズキ初の下町人情喜劇。あわてんぼうのサッちゃんと近隣の人々の物語。とはいえ、そこは松尾のこと、ほのぼのだけでは終わらないだろう。

近年、舞台での存在感を増している、鈴木蘭々のコメディエンヌぶりも楽しみ~。ちなみに、松尾作品がシアタートラムで上演されるのも今回が初めて。「大人計画」のファンも、今回、初めて「大人計画」の芝居を見るというあなたも、きっと存分に楽しめるはず。

約1年ぶりの松尾新作公演。松尾流「NHK朝ドラ」に乞うご期待!?

『サッちゃんの明日』
日程 2009年9月18日(金)~10月11日(日)
会場 シアタートラム(東京・三軒茶屋) ※地方公演あり
脚本・演出 松尾スズキ
出演 鈴木蘭々、宮藤官九郎、猫背椿、皆川猿時、星野源、家納ジュンコ、小松和重、松尾スズキ
料金 6,500円

『コースト・オブ・ユートピア-ユートピアの岸へ』 - 上演時間9時間! ロンドン、ニューヨークで絶大な支持を得た超大作が日本初上演

9時間といったら、東京からサンフランシスコやシドニーまで飛行機で行ける距離だけど、三部構成でそれを超える上演時間となるのが、トム・ストッパード(『ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ』『恋に落ちたシェイクスピア』)作『コースト・オブ・ユートピア-ユートピアの岸へ』。19世紀、激動のロシアを舞台に、70人を超える登場人物、そして、30年以上に渡って展開する大歴史叙事詩は、2002年にロンドンで初演、2006年にはニューヨークで上演され、トニー賞最優秀作品賞をはじめ主要7部門を制覇。この、まさに"壮大"という言葉がぴったりの歴史ロマンの演出を手掛けるのは、今、日本でもっとも有名な演出家のひとり、蜷川幸雄。シアターコクーン芸術監督でもある蜷川が、2000年の『グリークス』以来となる長編に挑戦します。

さらに、テレビ、映画、舞台など、あらゆるジャンルで活躍する豪華出演者たち。思想家・ゲルツェンや革命家・バクーニン、詩人・オガリョーフ、作家・ツルゲーネフ──。理想と現実の狭間でもがきながら革命の礎を築いた若者たちの挫折と成長をとくとご覧あれ!

書きつくせない見どころの多さが、見どころです

『コースト・オブ・ユートピア-ユートピアの岸へ』
日程 2009年9月12日(土)~10月4日(日)
会場 Bunkamura シアターコクーン (東京・渋谷)
原作 トム・ストッパード
翻訳 広田敦郎
演出 蜷川幸雄
出演 阿部寛、勝村政信、石丸幹二、池内博之、別所哲也、長谷川博己、紺野まひる、京野ことみ、美波、高橋真唯、佐藤江梨子、水野美紀、栗山千明、とよた真帆、大森博史、松尾敏伸、大石継太、横田栄司、銀粉蝶、毬谷友子、瑳川哲朗、麻実れいほか
料金 通し券(土・日・祝)、セット券 S席29,000円、A席24,000円、コクーンシート15,000円[各部券(平日 I 部・ II 部・ III 部)]S席10,000円、A席8,000円、コクーンシート5,000円
長谷川あや
大学時代から舞台にはまり、小劇団のストレートプレイから大型ミュージカルまでジャンルを問わず観劇。卒業後は出版社に入社し、編集者として活躍。1996年に退社し、現在はフリーライターとして、All About演劇・コンサートや女性誌、情報誌などで読みものページを中心に執筆している

イラスト:gnk