夏の暑さに負けないくらい、この7月は演劇業界もアツい! あれも観なくちゃ、これも気になる……といった具合にスケジュール帳とにらめっこ。まあこれも観劇の楽しみのひとつなんですけどね。今回は、注目作百花繚乱の7月の中でも、とっておきの3本をご紹介します。ジャンルも、時代背景もばらばらですが、どれも「演劇のおもしろさ」を堪能できる作品です。お楽しみあれ!
『ウエスト・サイド・ストーリー』 - 半世紀を超えて愛される音楽、振り付けに圧倒!
ミュージカルファンでなくても、このタイトルは耳にしたことがあるはず。1957年にブロードウェイで幕を開け、1961年に映画化。アカデミー賞10部門受賞という快挙を成し遂げ、以来、全世界で繰り返し上演されている名作です。日本人による日本語上演も行われていますが、今回は、2007年に上演50周年を記念して作られた特別プロダクションが、いよいよ日本上陸!
『ウエスト・サイド・ストーリー』は、『ロミオとジュリエット』の舞台をNYのダウンタウンに移し変え、ミュージカル化した作品。人種の違いによる軋轢や悲劇のラブストーリーをレナード・バーンスタインの名曲で綴っていきます。『トゥナイト』など作中で奏でられる楽曲は、作品を観たことのない人でも聞き覚えがあるのでは? バレエ界の巨匠、ジェローム・ロビンス振り付けのエネルギッシュなダンスも同作の醍醐味です。
ちょうど今、ブロードウェイでもリバイバル上演中。これがまた人気沸騰で、今、ブロードウェイ屈指のチケット入手困難演目になっています。社会性のあるテーマとメロディアスな楽曲、迫力のダンス──。半世紀以上前に作られたミュージカルですが、その魅力は今後も色あせることはありません。
名曲の数々に躍動的な振り付け。ミュージカルの魅力のすべてが凝縮
『ウエスト・サイド・ストーリー』 | |
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日程 | 2009年7月29日(水)~8月9日(日) |
会場 | Bunkamura オーチャードホール(東京・渋谷) ※地方公演あり |
原案 | ジェローム・ロビンス |
脚本 | アーサー・ロレンツ |
音楽 | レナード・バーンスタイン |
作詞 | スティーブン・ソンドハイム |
オリジナルプロダクション演出・振付 | ジェローム・ロビンス |
演出・振付 | ジョーイ・マクニーリー |
料金 | S席14,000円、A席12,000円、B席10,000円、バルコニーC席6,000円 |
『サンデー・イン・ザ・パーク・ウィズ・ジョージ』 - 緻密で美しい舞台構成にうっとり
ジョルジュ・スーラの点描画『グランジャット島の日曜の午後』にインスパイアされたソンドハイムが、一遍のミュージカルを作り上げました。スーラの絵の中には、労働者、兵隊、恋人同士、親子など、19世紀のパリに生きるあらゆる人々が収められており、そんな彼らのなにげない日曜の午後を綴ったのが本作です。戦争があったり、恋愛のもつれの結果、銃で撃ったりと、グランドミュージカルによくあるような大きな事件があるわけではありません。どこにでもあるような日常を丁寧に、そして、愛情を込めて描き出します。
昨年、ブロードウェイ版を観劇したのですが、絵画を音楽として見事に表現したソンドハイムの才能に改めて感服! 人と人とがつながり、重なり合って生きていくという哲学的テーマ、ソンドハイム本人を彷彿とさせる主人公の生き様など、さまざまなメッセージが込められています。
この異色作に臨むのは、ソンドハイムの『太平洋序曲』でブロードウェイデビューを飾り、彼からの信頼も厚い宮本亜門。劇団四季退団後、今年からフリーで活動を開始した石丸幹二、映像に舞台に大活躍の戸田恵子など、実力派キャストも顔を揃えました。458席というパルコ劇場の密接な空間でどんなメロディを奏でてくれるのか、期待が高まります。
点描画の世界を音楽で表現したソンドハイムの力量を見るべし!
『サンデー・イン・ザ・パーク・ウィズ・ジョージ』 | |
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日程 | 2009年7月5日(日)~8月9日(日) |
会場 | PARCO劇場(東京・渋谷) |
作詞・作曲 | スティーヴン・ソンドハイム |
脚本 | ジェームス・ラパイン |
演出 | 宮本亜門 |
キャスト | 石丸幹二、戸田恵子、諏訪マリーほか |
料金 | 10,000円 |
『風を継ぐ者』 - 幕末の時代を不器用に、懸命に生きた男たちの姿に感涙
大河ドラマ『篤姫』で脚光を浴びた幕末は、もともと多くの男性があこがれる時代。果敢に古い慣習を打ち破り、新しいものを積極的に取り入れようとする幕末の志士たちはたしかにかっこよく、魅力的です。そんなこともあってか、この時代をテーマとした作品はたくさんありますが、キャラメルボックスが描く「幕末」はちょっと違っています。おなじみ「新選組」にスポットを当てつつ、取り上げているのは混乱の時代を不器用に生きる、ごく普通の若者たち。決して「勇者」ではありません。物語は足が速いことだけがとりえの立川迅助と、昌平坂学問所の教授を父に持つ小金井兵庫が、新選組に入ったところから始まります。沖田総司や近藤勇、池田屋事件など歴史上の人物や事件を盛り込みつつ、作品はまったくのオリジナル。芝居って、こういう「たら」「れば」がおもしろいんですよね。
初演が1996年、再演が2001年と3回目の上演となる同作は、劇団屈指の傑作ともいわれている人気作。完成度が高く、観劇後にすがすがしい気持ちになれる同作は私もお気に入りで、初演、再演と劇場に足を運びましたが、キャストも一新される今回はこれまでとはまったく違った作品になりそうな予感も。期待大です!
鍛えられた殺陣、ほのかな恋愛模様と見どころ盛りだくさん!
『風を継ぐ者』 | |
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日程 | 2009年7月11日(土)~8月9日(日) |
会場 | サンシャイン劇場(東京・池袋) ※地方公演あり |
脚本・演出 | 成井豊+真柴あずき |
キャスト | 左東広之、大内厚雄、西川浩幸、岡田さつき、岡内美喜子、畑中智行、三浦剛ほか |
料金 | 6,000円 |
長谷川あや
大学時代から舞台にはまり、小劇団のストレートプレイから大型ミュージカルまでジャンルを問わず観劇。卒業後は出版社に入社し、編集者として活躍。1996年に退社し、現在はフリーライターとして、All About演劇・コンサートや女性誌、情報誌などで読みものページを中心に執筆している
イラスト:gnk