今年3月16日のダイヤ改正で導入された新快速「Aシート」の乗車レポート。前回は平日朝ラッシュ時間帯の上り列車について紹介した。今回は平日夜間の利用状況など探るべく、大阪駅から姫路駅まで新快速「Aシート」に乗車したので紹介したい。
筆者は4月の平日を利用し、夜間に運行される新快速「Aシート」の下り列車(野洲発網干行)に乗るため、発車15分前の21時45分頃から大阪駅4番線ホームに立った。9号車への乗降口は連絡橋出口へ通じるエスカレーターの近くにある。
■平日夜間の新快速「Aシート」大阪駅でほぼ満席に
新快速「Aシート」の列車は大阪駅を22時0分に発車する。その10分前から「A-SEAT」と記された乗降口の前に人が並び始める。待つ人の数はドア1カ所につき10人ほど。スーツ姿の男性が多いが、お試し乗車と思われる若者グループもいた。警備員と駅員がホームに立ち、新快速「Aシート」が有料座席であることをていねいに伝えていた。
21時57分、新快速「Aシート」の列車が4番線ホームに入って来る。他の車両は混雑していたが、新快速「Aシート」の乗車率は4割程度に見えた。それでも大阪駅からの乗客が入ると、客室内はほぼ満席の状態に。朝ラッシュ時間帯の列車とは異なり、乗客同士の談笑する声が聞こえるなど、リラックスした雰囲気が感じられた。
新快速は大阪駅を発車した後、JR東西線・JR宝塚線(福知山線)の接続駅である尼崎駅に停車。続いて芦屋駅にも停車するが、両駅とも乗降客は少なかった。
大阪駅を出てから20分以上が過ぎ、間もなく三ノ宮駅に到着する時刻となったが、車内では車掌2名が大阪駅からの乗客に乗車整理券を発券する作業を続けていた。有料であることを知らずに新快速「Aシート」に座っている人もいたようで、車掌は対応に追われていた様子だった。車掌と乗客のやり取りに耳を傾けると、行先として「西明石」や「加古川」を告げる乗客が目立った。
22時23分、神戸の中心地である三ノ宮駅に停車。10人前後の乗客が入れ替わったものの、車内の乗車率はあまり変わらなかった。
■所要時間1時間以内での利用が多い?
続く神戸駅を発車すると、次の明石駅まで10分以上あり、新快速らしい快走を見せる。車内では背面テーブルにお酒を置き、晩酌を楽しむ男性の姿もあった。
進行方向左側の車窓にライトアップされた明石海峡大橋が見え、橋の下を通過すると、やがて明石市の市街地に入り、明石駅に到着。ここで5人ほど下車したが、乗車する人はほとんどいない。姫路方面の普通列車などが発車する1番線ホームに人の列ができていたが、隣接する山陽明石駅のホーム上はまばらだった。
次の西明石駅でも、明石駅とほぼ同数の乗客が降りる。西明石駅でJR神戸線の複々線区間が終わり、複線区間になるのだが、新快速は播州平野を100km/h以上で快走する。22時55分、加古川駅に到着すると、10人以上が下車。隣のホームに網干行の普通列車が停車していたが、乗り換える人はほとんどいなかった。加古川駅は加古川線とも接続しており、新快速「Aシート」の列車から厄神行の最終列車にも乗り換えられる。
加古川駅を発車すると空席が目立ち、車内は閑散となる。新快速における大阪~加古川間は所要時間1時間以内のため、新快速「Aシート」の利用率と「1時間圏内」がリンクしているように感じる。
23時7分、新快速「Aシート」の列車は定刻より少し遅れて姫路駅に到着した。この列車はさらに網干駅まで足を伸ばすが、車内を見たところ、新快速「Aシート」の乗車率は2割にも満たないように見えた。なお、姫路駅では山陽本線・赤穂線をはじめ、播但線や姫新線の23時台の列車にも乗り換えられる。
■着席サービス向上へ、通勤特急も新設
JR西日本が3月16日に実施したダイヤ改正では、新快速「Aシート」の導入に加え、JR神戸線に通勤特急「らくラクはりま」が新設された。「らくラクはりま」は平日朝に姫路発大阪行、平日夜に大阪発姫路行を運行している。
また、平日の18~20時台にかけて、特急「はまかぜ5号」「らくラクはりま」「スーパーはくと13号」が1時間おきに大阪駅を発車するダイヤとなった。いずれもJR神戸線の三ノ宮駅・神戸駅・明石駅・西明石駅・加古川駅・姫路駅に停車し、兵庫県西部への着席サービス向上の一端を担うようになった。
新快速「Aシート」の列車も、平日朝の通勤時間帯に網干駅・姫路駅から大阪・京都方面、平日夜間の帰宅時間帯に大阪駅から姫路駅・網干駅へ運行されている。ダイヤ改正で大阪駅から兵庫県西部への着席サービス向上をめざしたことがうかがえる。