前回はJR神戸線(東海道・山陽本線)の下り新快速を取り上げたが、今回はJR京都線・琵琶湖線(東海道本線)の新快速を見ていく。新快速は都市間を高速で駆け抜けるイメージがあるが、小刻みに主要駅に停車する性格も兼ね備えている。今回はJR神戸線の新快速とは違った一面をレポートしたい。

  • JR京都線・琵琶湖線の新快速に乗車。湖西線が分岐する山科駅まで、日中15分間隔で運転されている(写真:マイナビニュース)

    JR京都線・琵琶湖線の新快速に乗車。湖西線が分岐する山科駅まで、日中15分間隔で運転されている

■米原駅まで行く日中の新快速は30分に1本

前回と同じく「青春18きっぷ」を使用し、1月6日の午後、大阪駅から米原方面の新快速に乗ろうとした。JR京都線の時刻表を見たところで、早速、JR神戸線を走る新快速との違いに気づいた。

JR神戸線の下り新快速は大阪駅から姫路方面へ15分間隔で運行され、行先も大半が姫路行で、一部列車は網干駅・播州赤穂駅まで足を伸ばす。一方、JR京都線の上り新快速は日中時間帯、大阪駅において毎時0分発が米原経由の長浜行、毎時15分発が湖西線経由の敦賀行、毎時30分発が米原経由の近江塩津行、毎時45分発が野洲行となっている。したがって、米原駅まで行く新快速は30分に1本しかない。

  • 大阪駅から新快速に乗車

筆者がホームに着いたのは近江塩津行が発車した直後で、タイミングが悪かった。結局、次の長浜行まで、大阪駅で30分も待たなければならなかった。

■京都駅への直通客が多いJR京都線の新快速 

今回、筆者が乗車した列車は大阪駅14時0分発の長浜行。前回と同様、大阪駅を発車した時点で座席はすべて埋まり、立客が目立つ。年末年始休暇の最終日ということもあり、スーツケースを持った乗客が多かった。大阪駅から3分ほどで、東海道・山陽新幹線との接続駅、新大阪駅に到着。多くの乗客が新大阪駅で降りるものの、入れ替わるようにスーツケースを持った乗客が車内に入ってくる。

新大阪駅を発車すると、高槻駅まで止まらない。100km/h以上のスピードで次々と途中駅を通過するが、車内はいたって静かだった。

余談だが、筆者が乗車した新快速の使用車両は223系1000番台だった。この車両は窓側の座席にも肘掛けがあり、同じく新快速に使用される223系2000番台には装備されていない。肘掛けがあると落ち着きを感じられるのは筆者だけではないだろう。

14時15分、新快速は高槻駅1番線ホームに到着した。高槻駅では外側線にもホームが新設され、2016年3月ダイヤ改正に合わせて使用開始している。基本的に新設ホームは新快速と特急「はるか」が停車し、昇降式のホーム柵が設置されている。高槻駅での乗降客は思いのほか少なく、多くの乗客が京都駅へ向かうように感じられた。

  • 新快速の拠点となる駅のひとつ、京都駅

京都駅には14時30分に到着。ここで4分の3ほどの乗客が降りた。乗り込んでくる人も多かったが、それでも大阪~京都間の乗客数よりは少ない。なお、長浜行の新快速は京都駅で湖西線の普通列車と接続する。

■琵琶湖線に入ると停車駅が増える

京都駅から米原駅まで、さらにその先の北陸本線長浜駅まで「琵琶湖線」の愛称が与えられている。正式には、JR京都線と琵琶湖線京都~米原間は東海道本線だが、正式な路線名で放送されることはめったにない。

都市間輸送に徹した大阪~京都間とは異なり、琵琶湖線では小刻みに主要駅に停車する。大阪~京都間は営業キロ42.8kmで4駅のみ停車(大阪駅・京都駅も含む)。京都~米原間は営業キロ67.7kmで12駅も停車する。

今回の乗車では、琵琶湖線内において乗降客が多かった駅は守山駅と近江八幡駅だった。ただし、どの駅も乗降客に大きな差はなく、米原方面まで乗り通す人が多かったようだ。「青春18きっぷ」期間内というのも理由だろうか。乗降客はそれほど多くないものの、停車駅ではすべての扉が開く。季節柄、ひんやりとした空気が車内に入って来て、足もとが冷え込んだ。

車窓に注目すると、野洲駅まで駅周辺に大型マンションが目立ち、野洲駅以東になると真新しい戸建て住宅が見られる。また、大阪~京都間とは異なり、新快速と競うように自動車が横を走る。自動車が普及していることもあってか、滋賀県内での短距離移動は少ないように感じられた。滋賀県内から京都駅・大阪駅への利用が多そうだ。

琵琶湖線内では気になる光景にも遭遇した。スーツケースを持っていた隣の乗客が眠っている間に、スーツケースが車端部まで転がって行ったのだ。幸いトラブルには至らなかったが、荷棚以外にスーツケースを置ける場所が確保されていないため、同じような事態は容易に起こりうるだろう。

  • 東海道本線と北陸本線が接続する米原駅。日中の新快速は北陸本線長浜方面へ直通する

新快速は定刻より16分遅れ、15時39分に米原駅に到着した。JR京都線内で踏切事故が発生したため、遅れが琵琶湖線に波及したのだという。米原駅に到着した時点で、立客はなかったものの、座席は7割ほど埋まっていた。多くの乗客は階段を上がり、東海道本線上り(大垣・岐阜方面)普通列車が発車する7・8番線ホームへ向かった様子だった。

■JR京都線・琵琶湖線の新快速に望むことは

JR西日本は3月16日のダイヤ改正に合わせ、有料座席サービスとして新快速「Aシート」を導入する。運転区間は野洲~姫路・網干間とされており、JR京都線・琵琶湖線で新快速「Aシート」を導入する列車は、平日の上りが大阪駅8時48分発(網干発野洲行)・19時15分発(姫路発野洲行)の2本、平日の下りが野洲駅10時59分発(姫路行)・20時59分発(網干行)の2本、土休日の上りが大阪駅9時45分発・17時15分発(ともに姫路発野洲行)の2本、土休日の下りが野洲駅11時59分発・19時28分発(ともに姫路行)の2本となっている。

新快速「Aシート」のサービス開始時点では、湖西線や北陸本線(米原~敦賀間)への導入はないようだ。米原方面へ乗り入れる列車ではなく、野洲駅発着の列車へ導入することも意外だった。運転時刻を見ても、とくに午前の下りは滋賀県内から京都・大阪方面の通勤や外出に適した時間帯とは言いがたく、あくまで野洲駅で折り返すことを前提とした時刻設定のように感じられる。JR京都線・琵琶湖線での新快速「Aシート」は、JR神戸線以上に試行的な要素が強い印象を受けた。

加えて、JR京都線・琵琶湖線の新快速で一利用者の立場から感じたこととして、車内の空調管理と快適性を保つため、滋賀県の各駅において扉を半自動扱いにすることを望みたい。新快速「Aシート」では荷物スペースが設置されるとのことだが、他の車両も観光利用等に対応するため、スーツケースをはじめ大きな荷物を置けるスペースを確保しても良いのではないかと感じた。