ボーズが9月に発表したホームシアターシステム「Lifestyle 135 home entertainment system」の体験会が東京、大阪、名古屋で行われている。都内に行く都合があったので、1.1chのサラウンドとはどのようなものか、実際に音を聴いてみた。

1.1chホームシアター「Lifestyle 135 home entertainment system」

9月に発表されたのは、「Lifestyle 135 home entertainment system」(以下「Lifestyle 135」)と「CineMate 1 SR digital home theater speaker system」(以下「CineMate 1 SR」)の2製品だ。両モデルとも、バースタイルのワンボックス型キャビネットのスピーカーアレイに、ワイヤレス接続タイプのサブウーファーを組み合わせたシステム。違いは、Lifestyle 135にのみ入出力系とFMチューナーなどをまとめたコンソールが付属する点だ。Lifestyle 135ではHDMI×4系統に、映像入力インタフェースがコンポーネント×2系統、コンポジット×3系統、音声入力インタフェースがアナログ×4系統、光デジタル×3系統、同軸デジタル×3を備える。こういったシンプルなシステムとしては、入力端子が豊富といえるだろう。一方の「CineMate 1 SR」は、スピーカーキャビネットの背面にテレビからの入力端子×1(アナログ/光デジタル/同軸デジタル切り替え式)、AUX入力×2(光デジタル×1/同軸デジタル×1)を装備するのみとなっている。

キャビネットの中には、下のイメージ図のように複数のスピーカーユニットが配置されている。一見してスピーカーと分かるコーン型のユニットは低域用のドライバーで、その手前に見える横長のものが、フェーズガイドと呼ばれる中高域用のドライバー。フェーズガイドは非常に鋭い指向性を持つユニットで、特定の場所に音を定位させることが可能だ。

キャビネット内には、低域再生用のユニットと、中高域再生用のフェーズガイドが配置されている

同社では、昨年11月に、サラウンドシステムに液晶ディスプレイを組み込んだ「VideoWave entertainment system」(以下「VideoWave」)を発売している。同製品は、同社のシアターシステムのフラッグシップに位置付けられるモデル。このVideoWaveも、1つのキャビネット内に複数の低域用ドライバーとフェーズガイドを組み込んだシステムで、両社の構成はかなり似通っている。

さて、同社が1,1chと呼んでいるシステムだが、もちろんモノラルのシアターシステムというわけではない。搭載されている各ドライバーそれぞれが単独で5.1ch、あるいは7.1chのうちの1つのチャンネルを再生するのではなく、全てのチャンネルが複数のドライバーからの音で合成されているため、このような呼び方をしているとのことだ。最近のシアターシステムやAVアンプでは、これに近い考え方を採用しているシステムも少なくない(それらは1.1chとは呼ばれていないが……)。

後述するように試聴した環境は、広い部屋の隅に設置するという、極端な左右非対称の場所だ。壁などからの反射を利用してサラウンド再生を行うフロントサラウンドのシステムにとっては不利になりがちなのだが、短時間試聴した限りではバランスに関して全く不自然さは感じられなかった。サウンドは、最近の同社のパーソナルオーディそシステムなどによく見られるように、低域のパワーを効かせたものだ。また、サラウンド感は極端に強調されたものではなく、あくまでも自然な感じで、映画などを長時間視聴しても疲労感は少ないだろう。

バースタイルのスピーカーというと、テレビの前面に設置するというスタイルが定番だ。Lifestyle 135、CineMate 1 SRのキャビネットをテレビの前に設置して横から見ると、奥行きが長く、高さが少ないスタイルになる。しかしこのようなスタイルでは、壁掛け設置の際には不安定になってしまう。壁掛けの場合、高さはあっても、奥行きが薄いほうが安定する。そこで搭載されているのが、「Flexmount automatic placement compensation」と呼ばれるシステムだ。同システムはセンサーによりキャビネットの向きを検知し、設置スタイルにあわせたサウンドを作り出すというものだ。テレビの前に設置した状態でキャビネットの向きを変えてみたが、確かに向きによる音の変化はなくなっている。なお、このシステムで設定できる向きは、横置きのスタイルと縦置きのスタイルの2パターンだけで、その途中の斜めの状態には対応していない。

なお、体験会の東京会場は銀座の清月堂ギャラリーで、期間は10月10日までだ。この連休中に出かけてみるのも良いかもしれない。会場のスペースはわりと広めなのだが、試聴用のシアターシステムは、Lifestyle 135が部屋の隅の方に1台おかれているだけだ。それ以外のスペースはガランとしており、同製品のテレビCMに登場する「一」の文字が、壁一面に掲げられている。掲げれている書は、実際にCM撮影に使用したものとのことだ。