2010年は、AV機器的には3D関連とiPhoneを初めとするポータブル機器が盛り上がりを見せた年でしたが、それ以外にもいくつか新しい動きが見られた年でもあります。なかでも筆者が気になったのが、レシーバーの復権です。何の事かと思う方も多いかと思いますが、このところ各社はチューナーを搭載したAVアンプに「レシーバー」という名前を使い始めています。例えばデノンは、2010年に発表したモデルでは、以前の「AVC-xxxx」という型番ではなく「AVR-xxxx」という型番になっており、またAVサラウンドアンプではなく、AVサラウンドレシーバーという呼び名に変更されています。また、ヤマハも従来の「AX-xxxx」という型番から「RX-xxxx」という型番に変更するのと同時に、AVアンプからAVレシーバーへと呼び名を変更しています。

デノンの「AVR-1911」。7.1chのAVレシーバー

昔からのオーディオファンの中には、レシーバーという言葉にあまりよいイメージを持っていない方も多いのではないでしょうか。かつての各メーカーのラインナップは、中心となる単品コンポの製品群があって、その下に、エントリーモデルとしてシステムコンポが置かれ、さらにその下のオーディオとゼネラルオーディオの境界線あたりにあったのがレシーバーでした。現在、こういった機器はチューナーアンプと呼ばれるケースが多いのですが、これは、かつてオンキヨーがリリースした「Liverpool」シリーズあたりが、その原点となるのでしょう。それまでのレシーバーとは一線を画した、単品コンポ並みのクォリティをもつ、シンプルな一体型のオーディオ機器という扱いだったと記憶しています。しかし、レシーバーを名乗る機器が市場から姿を消していくにつれて、チューナーアンプという言葉は、かつてのレシーバーと同じ意味を持つようになってきました。そういったなかでのレシーバーの復活です。やはり、名称にも寿命があるのだと、思わされる一件でした。

レシーバーの機能のなかで、FMチューナーが2011年からかなり厳しい状況に置かれそうです。現在、FMを受信するのに、どのようなアンテナを使用しているでしょうか。製品に付属しているのは、たいていT字型のコードアンテナですが、これは、よほど強電界でないと良好な受信は望めません。かといって、FM受信専用にアンテナを立てるいう人は、それほど多くはないでしょう。TV用のアンテナからの信号を、そのままFM用としても利用しているというケースが多いのではないでしょうか。ご存じのように、2011年はアナログ放送の終了の年です。終了するのはアナログのテレビ放送のみなのですが、これによってVHF用のアンテナは必要なくなってしまいます。新規の住宅では、VHF用のアンテナは設置されなくなるでしょう。既存の住宅では、現行の設備が存在しているので当面は問題ないでしょうが、2011年以降、徐々に一般家庭でFMを受信するのが大変になってくるのではという気がします。

さて、2010年に登場したレシーバーの多くは、FM/AMだけでなくネットワークオーディオも含めたレシーバーということのようですが、AV機器はネットワーク機能をもっと強化してもよいのではと思います。残念ながら、ほとんどのAVアンプが搭載しているDLNA機能は、現在のところDTCP-IPには対応していません。そのため、著作権保護がかけられていない映像か、音声、静止画しか利用できないというのが現状です。一方、レコーダーが持つDLNAサーバー機能にはそういった制限はありませんが、それでもまだまだ力不足という面が見られます。各テレビメーカーは、26V型以下のテレビを、家庭での2~3台目以降のテレビ用として販売しています。つまり、各家庭に複数台、しかも3~4台のテレビがあることを想定しているということなのでしょう。DLNAサーバーを搭載したレコーダーならば、1台のレコーダーで録画した番組をネットワークを通じて他の部屋にあるテレビで利用することが可能になるのですが、残念ながら、現在市販されているレコーダーが搭載しているDLNAサーバーでは、ネットワーク経由で、1本しかコンテンツを流すことができません。複数台のテレビがあっても、同時に使用できる台数は1台だけということになります。この辺りの制限がクリアされて初めて「家庭内のネットワークで快適なAVライフを」といったようなっ状況になるのではないでしょうか。

いずれにせよ、2011年、AV機器とネットワークの融合は加速するでしょう。2010年の年末に、日本ビクターが、新しいブランド「RyomaX」の第1弾として「RY-MA1」を発表しています。RY-MA1は、ネットワーク対応のBDレコーダーにレシーバーを組み込んだような製品です。RY-MA1のネットワーク機能は、難視聴対策などに使用されていますが、それだけでなく、より広い範囲でのネットワークに対応したら、さらに楽しい製品になるのではと、期待しています。

今後の展開に期待したい、日本ビクターの「RyomaX」(RY-MA1)