前回は、ON STATION MICRO IIとSAS100という、比較的手軽なシステムでしたが、続いては、43xx系コントロールモニターの最新モデル「4319」と、JBLのフラッグシップモデル「Project EVEREST DD66000」です。

JBLサウンドに、新搭載ミッドレンジによる高解像度をプラスした「4319」

高い解像度を持つ、新生代のコントロールモニター4319

4319は今年の3月に発売された新製品で、43xx系モニタースピーカーの、現時点での集大成といってもよいモデルです。30cmウーファー、12.5cmミッドレンジ、2.5cmツイータを、4312系の集中配置ではなく、4318や4307などと同様に、ユニットが直線上に並ぶインライン方式で配置しています。また、ウーファーにはネットワークをプラス。4312シリーズまでの構成では、ウーファーは、フィルターによる帯域の制限はかけられておらず、ユニット本来の再生帯域で鳴っていました。これが、中域の厚みや荒々しさを生み、ロックやジャズファンからの支持を得ていたのですが、4318以降の新世代のコントロールモニターでは、ウーファーに送られる信号は、ローパスフィルターを通るようになり(4319/4318では800Hz)、いわゆる普通の3Wayとなっています。4319では、これに加えて、新しいミッドレンジ「105H-2」の搭載が大きなポイントです。105H-2は、アルミニウム-マグネシウム合金製の振動板を採用するミッドレンジで、この手法はTSシリーズで採用されていたものですが、ようやく、このクラスのスピーカーにも降りてきたということになります。ここまでが、4319の基本情報です。

試聴に使われたシステムは、デノンの10年ほど前のプリメインアンプ(PMAの一つ上のクラス)と、マランツのSACDプレーヤーSA-13S1の組み合わせです。このシステムで、同社で用意していたCDと、筆者が持ち込んだCDから、6曲ほど聴いてみました。

何よりも驚かされたのが、とんでもない解像度の高さです。筆者が持っていったCDで、普段、自宅のスピーカーやモニタータイプのヘッドホンで、一つの音だと思って聴いていたが、実はいくつもの音が合成されているといった部分に、何カ所も気付かされました。この辺りは、新搭載されたミッドレンジの威力というところでしょう。恐るべし105H-2。もちろん解像度だけのスピーカーではなく、43xx系の中低域のノリのよさとでもいったらよいのでしょうか、かそういったものも持ち合わせています。また、いままで中域も受け持っていたウーファーが低域に特化したことで、低域には、ある意味余裕といったものも感じられます。全体的な方向としては、4312などと比べると、クリアさがアップしているといった印象です。

これに関して同社の方は「4319のサウンドに関しては、賛否両論あるでしょう、4343が最高、というような、JBLのスピーカーに熱さを求めるという人にとっては、こんな見通しのよい音が出て来られたら困るといった意見もあるかもしれません。しかし、モニターとしての性能の進化をとめるわけには行きません」とのことです。

また、この前に聴いたON STATION MICRO IIやSAS100などでは、やはりカットされていた部分が多い、という点にも気付かされます。ソースに含まれている情報から、実際に引き出される情報の量がまるで違います。QVGAのディスプレイで映像を見ていたが、実はソースはフルハイビジョンでしたといったような感じでしょうか。

ここまで来ると、もはや非現実的「Project EVEREST DD66000」

とんでもない臨場感をもつサウンドだが、ちょっと非現実的なEVEREST

続いて試聴したのがEVEREST。もはやなんというか、謝るしかないというか、帰りたくなるような気分ではあります。いままで聴いてきたものとは、レベルが違う、音の固まりが存在する感じといったらよいのでしょうか。空間を範囲で区切って、そこにそれぞれ音を発するかたまりを配置したといった感じです。定位というのとはまた違って、音を発する存在が、一つ一つ確かにそこにあると認識できるほどの実在感と臨場感。マルチチャンネルではなくて、これをステレオで実現しています。

EVERESTのシステムは、2本の標準サイズ(38cm)のパルプコーンウーファーに、ツイーターとスーパーツイーターのコンプレッションドライバーを組み合わせたもの。これを、幅965mm×高さ1109mm×奥行き469mmのエンクロージャーに組み込んだというもので、質量は、グリル込みで142kg。2本で約600万のスピーカーですが、一品ものではなく、これはあくまでも、マスプロダクツで、すでに数百本単位の販売実績があるとのことです。

4本のスピーカーを聴き終えて

全部のスピーカーを通して聴いた後で、再び最初に聴いたON STATION MICRO IIを聴いてみました。ON STATION MICRO IIには、もちろんエベレストや4319のような切れ味や臨場感はありません。しかし、これはこれで、いままでの緊張を取り除くような、とにかく、ほっとするサウンドだと、とくにEVERESTを聴いた後だからなのかも知れませんが、そう感じられました。ただ、ほっとするようなサウンドではありますが、JBLのエッセンスのようなものは、その明朗なキャラクターから伺うことができます。とにかく、明るい。これは、こういったコンパクトなシステムから、エベレストに至るまで、JBLのすべてのスピーカーに共通した傾向の一つでしょう。同社のシステムエンジニア グレック・ティンバースは、スピーカーのサウンドに関して、「ダイナミズム」という言葉をよく使うとのことです。音が入ったときの反応のよさが、ライブ感や音像の立体感を生む。それがJBLのサウンドということなのでしょう。

今回聴いたスピーカーで、一番印象に残ったのは、やはり4319です。筆者は、自宅で4305というモデルを使用してるのですが、これは、いわばお買い得モデルでしかありません。それと比較するのも問題なのですが、例えば、4312Dの音と比べても、確かに、世代が一つか二つ上がった感があります。1本16万円という価格も現実的なレベルです(EVERESTの1本約300万円とと比べると)。実際、同社の方に、どうですか、お安くしておきますよ、といわれ(もちろん冗談でしょうが)、ついふらふらと心が動きそうになったのは確かです(設置場所を確保できれば、危ないところだった)。