今回は、デジタルノイズキャンセリングヘッドホン「MDR-NC300D」についてです。既存モデル「MDR-NC500D/600D」とは異なり、インナーイヤータイプの製品です。オーバーヘッド型ではハウジング部分に組み込まれている回路や操作部分、バッテリーケースなどを別体のコントローラー部分に装備するタイプです。
前回取り上げたウォークマン XシリーズとMDR-NC300Dは、どちらも「インテグレーテッドDNCプロセッサ」というチップを使用しています。このチップは、デジタルノイズキャンセル回路とデジタルアンプS-Masterとを組み込んだもので、デジタルノイズキャンセルとアンプの回路部分は2製品とも共通です。ヘッドホン部は構造から違います。MDR-NC300Dでは、ドライバーの口径もウォークマン Xシリーズの13.5mmから16mmへと大型化されています。また、外部ノイズ検出マイクも異なっています。前回、ウォークマン Xシリーズを聞いてから1週間。プレイヤー部が異なるため正確な比較はできませんが、音の傾向は似ている印象を受けました。良好なノイズキャンセルの効きも同様です。これらについては前回に詳しいので、そちらをご覧ください。
フィット感に関しては、ウォークマン Xシリーズに付属するヘッドホンのほうが高いという印象ですが、これはMDR-NC300Dが大口径ドライバを搭載していることによるもので、慣れの問題もあるでしょう。また、一般的なインナーイヤータイプのヘッドホンではS/M/Lの3種類のイヤーピースが付属していますが、MDR-NC300Dでは、通常のものに加えて高さが多めのものと少なめのものがそれぞれ2つずつ、計7サイズのイヤピースが付属します。
「フルオートAIノイズキャンセリング機能」の採用もMDR-NC300Dの特徴です。同社のノイズキャンセリングヘッドホンは、ノイズキャンセルのモードを3種類持っています。モードAは航空機内向き、モードBは電車やバス内向き、モードCは室内のノイズ向きのキャンセリングとなっていますが、フルオートAIノイズキャンセリング機能は、周囲の環境に応じて、これを自動的に切り替えるというものです。室内で電源を入れると、すぐにモードCになります。また、電車に乗ったところ、モードBに自動的に切り替わりました。航空機は試していませんが、両モードとも、周囲のノイズが気にならないレベルにまで引き下げることが可能です。
インナーイヤータイプであるMDR-NC300Dは、MDR-NC500Dとは異なり、電池ボックス兼コントローラー部分を持ちます。このコントローラー部分は、単3電池が入る関係もあり、コンパクトなプレーヤーよりもやや大めのサイズです。
操作系はいたってシンプルです。コントローラーの前面には、外部の音を聞くためのモニターボタンが配置されています。上面部分には、電源ボタン、ボリューム、サウンドモードの切り替えボタンが配置されています。また、裏側にはノイズキャンセリング調整用ボタンが配置されています。このボタンを押すと、周囲の環境をサーチして現在の状況にマッチしたモードを新たに選択し直すようです。ただ、たいていの場合、自動で最適なモードに設定されているので、あまりこのボタンを操作する必要はないようです。サウンドモードについては、ノーマルとMOVIE、BASEの3種類が用意されていて、そのうち、ノーマルは、そのままノーマルな感じ、Baseは低音が強調されます。MOVIEは、サラウンド系の機能ではなく、映画のセリフなど人の音声が聞き取りやすいように、中域を持ち上げたようなサウンドになります。
コントローラーとヘッドホンの間のコードは1.2mで、コントローラーから先のコードは30cm弱程度です。フルオートAIノイズキャンセリング機能を装備しているため、基本的に使用中にコントロールボックスで操作を行うということはあまりないのですが(周囲の環境による音量の変化が少ないため、ボリュームコントロールもあまり必要ない)、プレーヤーとの間は延長コードを使用した方がよいケースもあるでしょう(約1mの延長コードが付属)。また、航空機内での使用のために航空機用プラグアダプターが付属しています。
さて、使用してみた結果はというと、先に使用したウォークマン Xシリーズのシステムとしての使い勝手の高さや全体としてのバランスが非常に好印象だったため、他のポータブルプレーヤー+MDR-NC300Dの組合わせという使用環境では、コントローラーやハウジングのサイズなど、やや気になるところもありました。もちろん、MDR-NC300Dは、高性能なノイズキャンセリング機能と高音質を求める方向けの選択肢で、その点ではとても優れた製品です。また、すでにプレーヤーを持っている人や航空機に乗る機会が多い人にも高音質なノイズキャンセリングシステムとなるでしょう。ただ、プレーヤーを含めて購入を検討するなら、システムとしてのトータル性能が高いウォークマン Xシリーズもお勧めです。