この記事では、スマートフォンや音楽プレーヤーに付属するイヤホンからの買い替え対象になりやすい価格帯の製品について、使い勝手や音質などをチェックしていいる。今回は、前回(第107回)に引き続き、オーディオテクニカの「ATH-CKX7」を取り上げていく。
ATH-CKX7の音の傾向は?
ATH-CKX7を入手し2週間ほど使用してみたのだが、ATH-CKX7のサウンドの特徴を一言で表せといわれたら、筆者ならば"ズドンとくる低域"と表現する。どのようなカテゴリーの音楽を聴いていても、豊かな低域のボリューム感を楽しむことができるのだ。
ATH-CKX7と、同じオーディオテクニカの「ATH-IM50」のサウンドを比較してみると、その差は非常にはっきりとする。なお、ATH-IM50はモニタータイプのイヤホンで、中域の情報量の多さを感じられるモデルだ。
同じ楽曲を聴いていても、ATH-IM50ではボーカルが前に出てくる感じなのに対して、ATH-CKX7ではベースがしっかりと聞こえてくる。まったく別のアレンジに聞こえるほど、2本の音色は異なっている。
続いてテストトーンで比較してみる。2系統のヘッドホン出力を持つヘッドホンアンプにこの2本を接続して。左チャンネルはATH-CKX7、右チャンネルはATH-IM50を装着。1kHzで同じレベルになるようにバランスを調節して、他の周波数を聞いてみた。
その結果、500Hz~2kHzでは同レベルだが、それ以外の周波数ではATH-CKX7側が強く聞こえた。圧倒的な低域のボリューム感に隠れがちだが、ATH-CKX7は高域の再生能力もなかなか高いようだ。
次に、ATH-CKX7とソニーの「XBA-H1」を同じ環境で比較してみた。すると、500Hz~2kHzはほぼ同レベルだが、それ以下の低域はATH-CKX7、そして4kHzでもATH-CKX7のほうが上回っていた。しかし、8kHz以上になると、XBA-H1のほうが上回る。このあたりは、BA(バランスド・アーマチュア)ドライバーとダイナミックドライバーのハイブリッドモデルであるXBA-H1の持ち味なのだろう。
Complyイヤーピースを使用してみると……
ATH-CKX7には、Complyイヤーピースが1組付属してくる。付属してくるのはスタンダードなTシリーズの「T400」だ。イヤピースを、標準のものからComplyに変えてみた。
ATH-CKX7は、その構造からもともと遮音性が高いモデルなのだが、イヤーピースをComplyに換えることで、よりいっそう高い遮音性を得られる。屋外で、歩行中などに使用するとかなり危険なレベルだ。また、ノーマルのイヤーピースに比べて、より低域の力強さがアップする。しかし、高域は少し抑えめになるようだ。
なお、イヤーピースの交換について一つだけ触れておきたい。ATH-CKX7でのイヤーピースの交換は、一般的なイヤホンに比べて、かなり大変だ。ATH-CKX7のイヤーピースを挿す軸の部分は、ボールジョイント構造となっており可動式だ。そのため、力を加えにくく、なかなかイヤーピースを取り付けることができない。Complyイヤーピースはまだ良いのだが、そこから標準のイヤーピースに戻そうとすると、慣れるまではかなり手間取ることになる。
低域を選ぶか? それとも可搬性を選ぶのか?
ATH-CKX7の低域は、個人差がある耳の穴の角度に正確に合わせることができるボールジョイント構造と、Cチップによる強力な密閉度によるところが大きいといえる。試しに筆者には小さいSサイズのイヤーチップに交換して装着してみたところ、まったく低域のパワーが感じられなくなった。
この2つの構造により、低域の量感が優れたイヤホンに仕上がっている。一方で前回も書いたように、低域を重視した構造のため、ATH-CKX7は大型のものとなっている。特に突起部が大きいため、持ち運びの際にはかなりかさばる。前回取り上げたソニーの「XBA-C10」と、ある意味対極にあるモデルだといえるだろう。
スマートフォン用やポータブルプレーヤー用として考えた際に、低域のボリュームを重視するのか、それとも可搬性を重視するのか、なかなか難しい問題だ。
さて、次回だが、このところ各メーカーからノイズキャンセリングヘッドホンの新モデルが相次いでリリースされている。気になるモデルをいくつかピックアップして、そのノイズキャンセリング能力や音質について、レポートしてみたいと思う。