この記事では、スマートフォンや音楽プレーヤーに付属するイヤホンからの買い換え対象になりやすい価格帯の製品について、使い勝手や音質などをチェックしていいる。今回は、クリエイティブメディアの「EP-630」を取り上げてみたいと思う。
EP-630は2006年6月に発売されたモデルで、発売から既に8年が経過している。その当時にクリエイティブメディアが発売していたポータブルオーディオプレーヤーのフラッグシップモデルは、内蔵メモリ4GBの「ZEN V Plus」で、さすがに時代を感じる(本題とは直sつ関係ない話で恐縮だが……)。しかしEP-630は、現在においても定番モデルの1つとなっている製品だ。人気を博している原因は何なのか……少しでもその理由に迫ってみたい。
EP-630の音の傾向は?
まずは、EP-630のサウンドがどのような傾向なのかをチェックしたい。絶対的な比較は筆者の環境では不可能なので、相対的な比較を行うことになる。比較対象としているのは、オーディオテクニカのモニターヘッドホン「ATH-IM50」とソニーの「XBA-H1」だ。
再生機器は、AudinstのUSB DACヘッドホンアンプ「HUD-mini」を使用している。HUD-miniは2系統のヘッドホン出力を持っており、そこに2本のヘッドホンを接続して、両ヘッドホンの片チャンネルずつを同時に聴くという方法を採っている。まずは、全体的な音のバランスを調べるために、各周波数のテストトーンを再生してみた。
EP-630とATH-IM50を比較してみると、32Hzと64HzではATH-IM50のほうがやや強く感じられる。しかし、125Hz~500HzではEP-630がやや上回っている。1kHz~4kHzでは、ほぼ同レベルだ。8kHzではEP-630のほうがレベルが高いが、12kHzになるとATH-IM50のほうが上回っている。
続いてXBA-H1と比較してみると、125HzまではXBA-H1のほうが強いが、250Hzと500HzでEP-630のほうが上回っている。中域は同等で、8kHzではEP-630が上回るが、それ以上ではXBA-H1のほうが上回っている。
以上をまとめてみると、EP-630は、極端な低域までの再生能力を持つわけではないが、中低域にかけての厚みはあるようだ。高域に関しても同様で、純粋な高域ではレベルが下がるが、それでも中高域までは力強さを感じられる。
音楽を再生してみると……
続いて音楽を再生して比較してみた。ここで、比較対象にしている2本のサウンドについても簡単に触れておこう。ATH-IM50は、余計な部分をそぎ落としたモニターサウンドで、しかも、ボーカルに対して非常に高い適性を持っている。XBA-H1は、解像度の高さと低域、高域の再生能力が持ち味だが、実際のところ、オールラウンドに使える1本だ。
それらを踏まえた上での話なのだが、EP-630もオールランドに使える1本だといえるだろう。リリースされた当初は、低域の出るヘッドホンとしても評価されていたが、重低域再生に特化したモデルがいくつもリリースされている現在では、相対的にその部分での価値は下がっている。しかし、中域から高域にかけてのクリアさは特徴的で、基本的にはジャンルを選ばず、長時間聴いていても疲れにくいサウンドのモデルだといえるだろう。
発売後8年経過しても定番な理由
プレーヤーやスマートフォンに標準で付属してくるイヤホンやヘッドホンからの買い換えでは、価格も大きな要素になる。EP-630は2,000円台前半で購入できる低価格モデルだ。しかし、低価格ではあるが、標準品からのサウンドの向上を実感できるだけのクオリティは十分に持っている。中域から中高域にかけてのクリアさが生み出す聴きやすいサウンドは、発売後8年経過しても、古さを感じさせないものだ。このあたりのコストパフォーマンスの高さが、EP-630をロングセラー商品の座に押し上げている理由なのだろう。
次回に続く |