2週間ほどお休みを頂いてしまって申し訳ありません。色々割り込み作業が入って、手が廻りませんでした。

ただ過渡期的なソリューションとしてはこれで十分であっても、もっと広範囲に利用されるようになってくると、特にパフォーマンスとかHost側の負荷という観点ではどうしても見劣りすることになる。このあたりも関係してか、例えばFresco Logicは今年9月にAMIと共同で、FL1009向けのBIOSの提供を行う事を発表したり、Insyde Softwareと共同でUEFIへの対応を行う事を発表したりといった動きをしているが、これはFL1009を搭載したシステムで、FL1009の先にあるStorageからBootするとか、あるいはFL1009の先に繋がったマウスやキーボードを使ってBIOS Setupが行えるようになるといった事への対応を共同で行うといった趣旨だが、当然こうした対応はxHCI 1.0準拠を前提に行うことになると思われるため、今後はFresco Logicの製品もまともにxHCI 1.0対応となりUSB 1.1/2.0の対応を含むFull Functionalな動作となることが期待される。

ということで、予想よりずっと長くUSB 3.0の話を説明してきた。どの位長かったって、第一回で意味も無く登場させたのんちゃんが、里親さんのところに行って既に1年半近くたっている、という事からも推して知るべし。お蔭様で、アプリケーションプログラマレベルの人にはまず過不足ない程度に情報をまとめて御紹介できたのではないか、と思う。

USB-IFはUSB 3.0の立ち上がりには概ね満足(彼らの現在の問題は、むしろWireless USBの立ち上がらなさでしょう)だそうで、またUSB Hostを先行して開発したルネサスエレクトロニクスも、結果として予想外に長期間にわたりUSB 3.0 Hostを売り続けられる(当初は来年投入されるSandyBridgeの世代でチップセット側にUSB 3.0 Hostが入ると予定しており、これまでの間にどれだけ売れるかという話だったのが、最低でも更に1年売り続けられることになった)訳で、これは魅力的な商売になった。Intel陣営のみならず、AMD陣営にむけてもこんな動きがあるなど、同社のUSB 2.0コントローラを越える勢いで販売が続いているようで、その意味では先行者利益をうまく手にした典型的な事例といえそうだ。

もっとも現在はUSB 3.0の普及のまだ第一段階である。500MB/secの帯域をハンドルできるのは、現時点ではPCもしくはこれと同等の処理性能を持ったHostに限られており、32bit MCUですらこれの搭載はまだ相当先とみられる(何せUSB 2.0のHigh Speed OTGを搭載した、というのが未だにニュースになっている程度だからだ)。Host側の処理性能(と内部バスの転送性能)がよりあがると共に、USB 3.0のPHYがこのクラスのMCUに入る程度まで安くなるのは、多分40nm世代では無理で、28nm世代あたりをMCUが使うようになるまではお預けであろう(加えて言えば、MCUの場合はFlash Memoryの混載が必須なので、40nm未満のプロセスでMCUが製造できるようになるのがそもそもまだ数年掛かると思われる)。その意味では、第一段階の先行者利益は今から参入してももう得ることはできないだろうが、恐らく2014~2015年あたりでEmbeddedでも本格的にUSB 3.0が使われ始めるタイミングが訪れると思われ、このあたりで次の大きなビジネスになりそうではある。こうしたトレンドをうまく読者各位が捕らえて、自社のビジネスにつなげて頂けるといいなぁ、というのをUSB編の最後のご挨拶としたい。