SBクリエイティブは、このほど『その「一言」が子どもの脳をダメにする』(990円/成田奈緒子、上岡勇二著)を発売した。本書は、脳科学×心理学×教育学でわかった認知力・自律力・思考力を奪う言葉、伸ばす言葉を紹介している。子どもの脳を伸ばす"科学的に正しい言葉がけ"とは?

  • 『その「一言」が子どもの脳をダメにする』(990円/SBクリエイティブ刊)

著者は、小児科医・医学博士であり文教大学教育学部教授の成田奈緒子氏と、臨床心理士・公認心理師の上岡勇二氏。同氏らが立ち上げた「子育て科学アクシス」という組織では、脳科学、心理学、教育学のエビデンスに基づいた独自の理論「ペアレンティング・トレーニング」(よりよい脳育てのための生活環境づくり)を確立してきた。

その理論をもとに、同書では「科学的に正しい、子どもの脳をよりよく育てる言葉がけ」を解説している。今回はその中から、子どもの「考える力」を奪う言葉の一例を紹介。みなさんは普段、どんな言葉をお子さんにかけているだろうか。ぜひチェックしてみてほしい。

■子どもの「考える力」を奪う言葉

3歳、4歳の「やりたい!」は鵜吞みにしない

3歳とか4歳の子どもが「やりたい!」「楽しい!」と言ったからと、塾や習い事を始めさせるケースを最近多く見受けます。

しかし、この年齢の子どもの言うことは鵜吞みにしないようにしましょう。この年齢は、まだまだ自分で考えて行動する脳が育っていません。親から見て全く向いていないように見えたり、サボっているように見えたりするなら、やめさせてOKです。

幼児期は無理に習い事をさせるよりも、親子で一緒に遊んだり、出かけたり、できるだけさまざまな経験をさせてあげる方がいいでしょう。脳は、同じ刺激を与え続けられるよりも、多種多様な刺激を与え続けられることで活性化するからです。

多種多様なコミュニケーションを楽しむことが、子どもの脳を豊かに育てることに役立ちます。

「学校に行きたくない」も脳育ての糧

「もう少しだけ頑張りなさい」は、「学校に行きたくない」と子どもが言い出したときにも使われる言葉です。「子育て科学アクシス」で「ペアレンティング・トレーニング」を学ばれている親御さんで、次のようなケースがありました。

ユカ(小4)はある日、「学校に行きたくない」と言い出しました。母親は、私たちの理論を学んでいるので、慌てずに、「そうなのね、行きたくない のね」とオウム返しをしました。すると、「うん、担任の先生がいつも怒鳴ってて、その声が怖いの」とユカは休みたい理由を話し始めました。

「いいよ。でも、ズル休みだから、家には一人で置いておけないよ。じゃあ、一緒にお母さんと出かけようか!」と母親はユカを自分の職場に連れて行くことにしました。

母親の同僚はユカも知っている人ばかり。みんなやさしく迎え入れてくれるのですが、最初に必ずみんなから「あれ? ユカちゃん、学校は?」と聞かれます。ユカは母親に「ズル休みであることを隠さないこと」と約束をしていたので、その度に「今日はズル休みなの」と答えました。仕事が始まると、母親はもちろん、誰もユカの相手をしてくれません。ユカは休憩室の片隅で、一人で絵を描いて過ごすしかありませんでした。

1日が終わり、家に帰ってくると、「明日から学校に行くことにする」とユカ。「今日1日、とっても退屈だった。先生が嫌いでも、学校に行く方がましな気がしてきた」と続けました。ユカは、1日学校を休むことにより、自分なりに前頭葉を使って考えて、「学校に行きたくない」という問題に対する答えを出したのです。

もし子どもに「学校に行きたくない」と言われたら、そのネガティブな気持ちを親はいったん受け止めて、その上で、「考えるための材料」を与えてみましょう。ユカの場合は、母の職場という普段と異なる環境で一人きりで過ごすことが、「考えるための材料」でした。

どんなトラブルも、脳を成長させる糧です。あくまで答えを出すのは、子ども自身。大人は、子どもに気がつかれないようにさりげなく、その手を差し伸べてあげましょう。


書籍『その「一言」が子どもの脳をダメにする』(990円/SBクリエイティブ刊)

同書では、本稿で伝えた内容以外にも親として注意したい言葉がけや行動が、多数紹介されている。気になる方は、ぜひ本を手に取ってみてはいかがだろう。