FP(ファイナンシャル・プランナー)として活動している筆者ですが、文字通り「お金に関するプランニング」や「ライフプラン」が重要だと強く感じることがしばしばあります。

そのうちの1つが雇用保険の教育訓練給付制度です。生活・仕事・そしてお金。「これから自分がどうありたいのか?」「どのような夢や目標があるのか?」「どれだけお金がかかるのか?」こういったことを考える上でぜひ今回の教育訓練給付制度を理解しておいてください。

  • 教育訓練給付制度を理解していますか?(写真:マイナビニュース)

    教育訓練給付制度を理解していますか?

以前、「今でしょ」というフレーズが流行しましたが、まさに読者の皆さんにとって、そういうタイミングが訪れることがあると思います。早すぎても、遅すぎてもダメで、今まさに受けるべき講座をお得に受講し、スキルアップ・キャリアアップできるように、教育訓練給付制度を上手に活用したいところです。

一般と専門実践の違い

まず、教育訓練給付制度は大きく2つあり、その違いから確認します。1つは「一般教育訓練給付金」です。以前からある制度なので見聞きしたことがあるかもしれません。そしてもう1つは「専門実践教育訓練給付金」制度で、2015年に創設された新しい制度です。

一般教育訓練給付金

  • 一般教育訓練給付金

    一般教育訓練給付金

一般教育訓練給付金は原則3年以上雇用保険期間がある、または、前回の教育訓練給付金受給日から今回受講開始日前までに3年以上経過していることが必要です。つまり、会社員として働き、雇用保険に加入することで3年に1回は利用できる制度です。

なお、初めて教育訓練給付金を受給する場合のみ、この期間が1年と定められています。よって、早ければ入社後1年で利用することができます。文字通り「教育訓練」として資格取得などを目指す場合が対象で、「厚生労働大臣教育訓練講座検索システム」でどのような講座があるのか調べることができます。

パソコン技術や英語をはじめとする語学、税理士や会計士などの資格取得講座など様々です。建築関係の技術系の講座も多くあります。

英会話スクールなど一定期間通学すると受講料が数十万に及ぶことも少なくありません。そんな際に2割(上限10万円)負担してもらえると助かりますよね。受講できる地域などで検索することもできますので一度調べてみてください。

より職業として専門実践的なスキルや知識を身につける場合、専門実践教育訓練給付金の対象になるかもしれません。これが2つ目の制度です。一般教育訓練給付金よりもより一層手厚い給付金を受け取ることができます。

専門実践教育訓練給付金

  • 専門実践教育訓練給付金

    専門実践教育訓練給付金

看護師や介護士、社会福祉士など医療系現場で働きたい方が本格的に専門学校に通う場合や、経営幹部や経営者を目指してMBA(経営修士学)を取得するためにビジネススクールに通う場合などが対象講座になります。

1年から2年通学する講座や学校が多いようです。長期間かつ本格的な学習ということもあり費用がかさみますが、この費用の最大5割、その後の成果に応じて追加で2割、よって費用の最大7割まで負担してもらえます。

例えば、弁護士になりたくて司法試験合格を目指し、おもいきって会社を辞めたとします。退職後すぐに国立大学の法科大学院(ロースクール)に入学し、条件を満たせば受講費用の5割(1年間の上限額40万円)を受給できます。

その後、在学中に司法試験に合格し、見事法律事務所に就職することができた場合はさらに受講料の2割を追加で受給してもらえるという流れです。

会社を辞めた場合の支援

上の例のように「会社を辞めて人生をかけて大勝負」というケースで心強い制度ではありますが、受講料は何とかなっても、当面の生活費が心配という人も多いのではないでしょうか。実は、この場合も手厚い給付があります。

自己都合で退職した場合の失業手当の最大給付日数は150日、つまり5カ月で手当がなくなってしまいます。通学中2年間は司法試験合格に向けて集中したいという場合、約1年半、無収入で乗り越えなければなりません。

よって、そういうケースを想定し、雇用保険の基本手当の日額に相当する額の80%が「教育訓練支援給付金」として、失業かつ該当講座を受講中の人に給付されます。雇用保険のおかげで、おもいきって退職し、新たな目標に向けて安心して勉強に打ち込むことができますね。ただし、年齢が45歳未満でなければならないなど細かい条件があります。

受講要件とタイミングが重要

多くのビジネスマンが共感してくれると思うのですが、大人になり社会に出てから、「学生の頃もっと勉強しておけばよかった」と学ぶことの重要性を痛感します。そんな時に雇用保険に加入していればいいのですが、そうではない場合、あるいは期間要件等を満たしていない場合、全て自分で負担しなければなりません。

どうしても受けたい講座があるが、前回の教育訓練給付金受給から3年以上経過していないということも考えられます。また、雇用保険の対象とならない勤務形態の場合も同様に、条件を満たさない可能性があります。そして条件を満たしていたとしても、離職後しばらく経過するとその権利を失うことになります。そういう点で受講するタイミングが大切です。

実は、この事例はまさに筆者自身の経験です。独立しFPとして活動をはじめるとさらに学びへの欲求が高まり大学院(ビジネススクール)への受験を決め、合格した後に見たパンフレットで給付金の存在を知りました。

既に前職の会社を退職し数年が経過していた時の話です。自営業や経営者はそもそも雇用保険に加入していません。2年間の大学院生活で授業中、隣に座る同期生は半分程度の費用負担なのに自分は全額負担。こんな経験を通して「教育訓練給付金はタイミングが重要」と強く感じました。

先に紹介した司法試験合格のため退職した事例では給付金の対象になりましたが、その理由は離職してすぐだったからです。原則、離職後1年以内であれば教育訓練給付金の対象となります。せっかくの権利なので慎重に大胆に、上手に活用したいですね。

退職直後を有効に活用する

退職を決め有給消化中にしばらくのんびり過ごす人もいますが、まさに給付金該当講座を受ける最適なタイミングです。期間要件は満たし、時間的余裕があり、さらに新たな学びのおかげで次のキャリアが描きやすくなります。会社員として長年勤務する場合も3年に1度は給付金の対象になりますので、定期的に自身のキャリア、今後のビジョンを明確にしながら該当講座を調べてください。

もし、一念発起して会社を辞めて勉強に専念するなら45歳までがいいですよね。45歳未満であれば失業中も「教育訓練支援給付金」がサポートしてくれます。

このように適したタイミングで必要な講座を受講するためには、これからのあなた自身のプランニングが大切だということを強く感じてもらえたと思います。あなたにとっての「今でしょ」というタイミングを逃さないようにしてくださいね。
※受給要件等それ以外にも細かい定めがあります。詳細はハローワーク等にお問い合わせください。

著者プロフィール: 内山 貴博(うちやま・たかひろ)

内山FP総合事務所
代表取締役
ファイナンシャルプランナー(CFP)FP上級資格・国際資格。
一級ファイナンシャル・プランニング技能士 FP国家資格。 九州大学大学院経済学府産業マネジメント専攻 経営修士課程(MBA)修了。