若い人はバリバリ体を動かし、趣味や運動を楽しんでいる人も多いと思います。ただし、それが30代、そして40代となり、徐々に思うように体を動かせなくなることも。
筆者も若い頃から野球を続けていますが、年々、速い球が見えにくくなったり、昔は取れたボールが取れなかったり……。書き出すとキリがないほどプレーを通して年齢を感じます。
このように私達は年を重ねていき、そしていつか「老い」と向き合っていかなければなりません。できれば70代や80代でも元気なおじいちゃん・おばあちゃんになりたいものですが、病気を患うなどのリスクが高まり、その結果、食事やトイレといった日常生活に支障をきたすことも考えられます。
こんな時に介護保険が私たちの生活を守ってくれます。まだまだ先のことかもしれませんが、あなた自身にとって先のことでも、あなたの両親や大切な人が介護を必要とすることも考えられます。ぜひどんな制度なのか今のうちから理解しておいてください。
介護保険は40歳以上から加入
20代や30代は一般的に介護状態になるリスクが低いとされているため、介護保険の加入は40歳からです。65歳以上か未満かで被保険者の区分が分かれています。
年齢 | 保険料 | |
第1号被保険者 | 65歳以上 | 原則、老齢年金から源泉徴収される |
第2号被保険者 | 40歳以上65歳未満 | 健康保険料に上乗せして徴収される |
第2号被保険者は、いうなれば現役世代です。よって、「末期がんなど特定疾病によって要支援者・要介護者になった者」に限定されるという点が第1号と第2号の最大の違いです。
つまり、65歳以上の第1号被保険者は介護になった理由は問いませんが、現役世代に該当する第2号保険者は指定されている疾病が原因である時に限られるため、例えば交通事故などで介護状態になっても介護給付の対象とはならないということです。
2000年に介護保険制度が始まりましたが、当初より「40歳ともなると、親が介護状態となり介護保険の恩恵を受ける可能性がありますよね。よって保険料を負担してください」こういった位置づけとみなされています。よって65歳までは保険料は払うことになりますが、自身が給付を受ける可能性はそれほど高くはないのです。
介護が必要な状態になるとどうなるの?
どの程度で介護が必要と判断されるのか? それは居住地の市町村が主体で行われます。市町村の職員と面談などを通して、要支援1または2、要介護1~5の区分に認定された場合、要支援者は「予防給付」を、要介護者は「介護給付」の対象となります。
給付の対象は、それぞれ在宅でできること、施設で行うことなど細かく決まっています。ホームヘルパーさんや老人ホームの利用などがその代表例です。
もちろん、要支援より要介護の方が重度の症状であり、要介護の中でも要介護5が最も重度とされます。要介護の場合、要介護1と要介護2に認定されている人が非常に多いのですが、要介護1の場合、月額16万6,920円までの介護サービスを原則1割負担、つまり1万6,692円の負担で受けることができます。
認定区分 | 支給限度額(月額) | |
予防給付(介護予防サービス) | 要支援1 | 5万30円 |
要支援2 | 10万4,730円 | |
介護給付(介護サービス) | 要介護1 | 16万6,920円 |
要介護2 | 19万6,160円 | |
要介護3 | 26万9,310円 | |
要介護4 | 30万8,060円 | |
要介護5 | 36万650円 |
各種施設やサービスの利用には一定の費用負担が生じますが、ご自身が必要とするものを上手に組み合わせた介護サービスを1割負担で受けることができるのは安心ですよね。なお、限度額を超えることも想定されますが、限度額以上は全額自己負担となります。
介護給付費等実態調査月報(平成30年4月審査分)によりますと、介護予防サービスを利用している人は約70万人、介護サービスを利用している人は424万人に及びます。多くの人が予防または介護給付があることで、日々の生活をサポートしてもらっているのです。
介護にそなえる
介護を必要とする人は今後も増えることが想定されます。私達は介護をされる側と介護をする側、どちらのケースも考え事前にできる準備はしておきたいですね。こういったコラムを通して勉強するのももちろん準備の1つです。
近年、「終活」という言葉があり、自身の死に対して準備をするという傾向は高まっていますが、「介護になる前の活動」についてはあまり取り上げられていません。認知症のような状態になると、自らが施設に入りたいのか、在宅で介護してほしいのかといった意思表示もできなくなるかもしれません。
あるいは、意思表示をしても配偶者や親族が納得してくれるとも限りません。「介護の話」となると少し重たいテーマになりますので、ぜひ老後の楽しい話をしながら介護についても少し盛り込んでください。
「退職した後は夫婦2人でハワイに行こう」
「日本一周旅行もいいな」
「あ、そうそう、介護が必要になったら家をバリアフリーに改装して……」
こういった具合に、老後シナリオの1つとして介護へのリスクを、ご夫婦やご家族と話をすることも有意義ですね。筆者も60歳代の両親がいますので、70代、80代をどのように過ごしたいのか? 次、帰省した際に聞いておきたいと思います。
早めに行動するとトクすることもたくさんあります。例えば、バリアフリー改修工事などを行うと一定条件を満たすと減税を受けることができます。こういったことを現役世代から知っておくとよりスマートに老後、そして介護環境を整えることができそうです。
最近では「認知症予防のための食事」といった健康志向のTV番組なども増えています。お金、健康面で介護に備え、できる限り「取り越し苦労」となるといいですね。
著者プロフィール: 内山 貴博(うちやま・たかひろ)
内山FP総合事務所
代表取締役
ファイナンシャルプランナー(CFP)FP上級資格・国際資格。
一級ファイナンシャル・プランニング技能士 FP国家資格。
九州大学大学院経済学府産業マネジメント専攻 経営修士課程(MBA)修了。