引き続き、三ノ輪である。東京メトロ日比谷線「三ノ輪」駅を出てすぐ、明治通りと昭和通りが交差するところにある「峠の蕎麦」だ。

前回「長寿庵」で胃を満たし、さて移動しようと駅に向かったところ、のれんが出ているのが目に入った。峠の蕎麦は立ち食いそばファンの間で人気の店舗。私も一度訪れてはいるが、日曜定休・夜営業なしということで近隣以外ではなかなかハードルの高い店のひとつである。せっかくの縁なので、ハシゴそばを決めた。

  • 三ノ輪「峠の蕎麦」でハイレベルな一杯「ジャコカツ天そば」を食す

    「峠の蕎麦」の「ジャコカツ天そば」(税込500円)

清潔感ある店内でしばし待つ

9時半頃とあって、店内に相客なし。入ればすぐ右手に券売機がある。広めの厨房を取り囲むL字のカウンターテーブルになっていて、座って食べることもできる。真新しいカウンターやスツールは清潔感があって、人気のラーメン店のような雰囲気も感じられる。

さて、早速注文しよう。店の外のガラスに券売機メニューを拡大した紙が貼られているので、入る前にゆっくり吟味できた。ここでは「ジャコカツ天そば」(税込500円)を。チケットを、一人で厨房をまわす大将に渡す。

ちょうど券売機の上にテレビが設置されており、朝の情報番組が流れていたのでそれを見やりながらしばし待つ。そばは注文を受けてから茹でていて、天ぷらも揚げたて。後から入ってきた客のかき揚げを揚げるいい音がする。3分ほどで、トレーに置かれて、完成。

ご当地グルメと信州そばのハイレベルな一杯

ジャコカツは魚のすり身のフライと捉えてもらえればいい。さつま揚げにサクッとした食感をプラスしたようなタネで、愛媛県のご当地グルメでもあるらしい。主張が強いので、ツユに染み込んでマリアージュ…… のようなことはあまりないが、おかずとして嬉しい一品。噛むほどに甘みがうまい。

そばは外ののぼりの通り、信州そばの細麺。シコっとした歯ざわりと生麺特有のハッキリとした香り。上品で濃すぎないツユと絡み合い、相当うまい。カウンターには一味唐辛子と七味唐辛子が置かれているので、時々それを使って味を変えながら頂くもよし。多少ボリュームが少なめなのか、それともうまくてあっという間になくなってしまったのか、気づけば丼は空っぽに。なんともハイレベルな一杯だった。

  • 「峠の蕎麦」は東京メトロ日比谷線「三ノ輪」駅から歩いてすぐ。明治通りと昭和通りが交差するところにある

店を出る頃には満腹感よりも先に、隣客のかき揚げそばが羨ましくなった。また三ノ輪に無理にでも用事をつくって訪れたい。

筆者プロフィール: 高山 洋介(たかやま ようすけ)

1981年生まれ。三重県出身、東京都在住。同人サークル「ENGELERS」にて、主に銭湯を紹介する同人誌『東京銭湯』『三重銭湯』『尼崎銭湯』などをこれまでに制作。