今回の一杯は、東京駅にある「東京グル麺」。こちらでいただいた温かいそばを紹介したい。

  • 「東京グル麺」の「野菜コロッケそば」(税込420円)

    「東京グル麺」の「野菜コロッケそば」(税込420円)

18・19番線「名古屋・大阪方面」へ、いざ!

この日は、東京駅近くの会社で仕事の打ち合わせがあった。天気予報は雪。東京に大雪警報が出た、あの日だ。テレビからは「不要不急の外出は控えるように」と繰り返しのアナウンスがあったが、仕事なので仕方ない。

打ち合わせを終え、外に出たのはちょうど12時頃。朝の雨はもう雪に変わっていた。指先足先の冷えと空腹が相まって、少し悲壮な気分になる。こんな時は温かいそばだ。できればこれまで行ったことのないところで、記事にもできればなおよい。

調べてみると、JR東京駅その場所にあるではないか。「東京グル麺」、場所をよく見ると「東海道新幹線18・19番線ホーム」とある。18・19番線は名古屋・大阪方面に向かうホームだ。東海道新幹線にはよく乗るのだが、いつも品川駅を使っているので東京駅のこの店は知らなかった。早速、入場券(140円)を購入し、ホームに向かった。

ホロッと崩れるにくいやつ

店はすぐに見つかったが、さすがお昼時。出張移動中などのビジネスマンらで、店外まで列ができていた。取り急ぎ、券売機で「野菜コロッケそば」(税込420円)を交通系ICカードで購入。列の最後尾に並んだ。当然ながら客の回転はよく、2分足らずで食券を手渡すことができた。

店内はL字の立ち食いカウンターになっており、10人ほどの男性客が入れ替わり立ち替わり。奥側が返却棚になっているようだったが、混んでいたので機能しておらず。丼は店員さんがさげてくれるシステムになっていた。チケットを渡してこちらも2分くらい。目の前に湯気のたったアツアツのそばが置かれた。

コロッケそばは立ち食いそばならではだ。かき揚げや天ぷらと違い、家ではまずわざわざコロッケそばは作らないだろう。酒を飲むようなそば屋でもしかり。それだけにコロッケはなるべく安っぽい(失礼)ものの方が合う。

揚げ置きで少しヒンヤリしているが、ツユにつけるとホロッと崩れ、口の中に甘みが広がる。後載せされたシャキシャキのサヤエンドウがとてもうまい。麺は白く細めで、香りたったツユと一緒にすすれば内臓から体温が上がっていく。

  • 「東京グル麺」は東海道新幹線18・19番線ホームにある

    「東京グル麺」は東海道新幹線18・19番線ホームにある

食べ終えたらすぐに出たい。ここは新幹線ホーム。移動の合間をぬって、温まる場所だ。特に昼時は入場券を買って悠長に過ごす者の時間ではないのだ。何かに追い立てられるように外に出れば、また一層雪が強くなった気がした。店内に折りたたみ傘を忘れたことに気がついたのは、もう少し先の話だ。

筆者プロフィール: 高山 洋介(たかやま ようすけ)

1981年生まれ。三重県出身、東京都在住。同人サークル「ENGELERS」にて、主に銭湯を紹介する同人誌『東京銭湯』『三重銭湯』『尼崎銭湯』などをこれまでに制作。