今回のそばは高円寺。「伊藤松吉商店」という、開店して比較的間もない店だ。調べてみると、フランチャイズ展開をしている立ち食いそばで、椎名町などにも店舗があるらしい。最寄りは東京メトロ丸ノ内線「新高円寺」駅。歩いて4分くらいのところで、高南通りと呼ばれるJR高円寺駅から青梅街道につながる都道沿いにある。

「岩のりそば」(税込450円)

次回こそは「松吉そば」を

向かいには24時間営業立ち食いラーメンの「タロー軒」があるのと対照的に、こちらは早朝から夕方15時までの営業。高円寺に住む単身者よりも近隣で働く人たちをターゲットにしているのかもしれない。

黄色と赤で派手な看板とノボリで、よく目立つ。居抜きで入ったのだろうか、店内は2間の壁をぶち抜いたような構造をしており、それなりに広い。扉は向かって右側のみが出入口になっていて、入って右手側に券売機がある。訪問したのは15時前。そろそろ店じまいの時間ということで、メニューにはチラホラ売り切れも目立つ。

看板メニューらしき「松吉そば」も売り切れてしまっていたのは残念だ。外のガラス戸に貼られた写真によると、かき揚げや生玉子、バラ肉(?)など、具材盛りだくさんのそばらしい。

仕方なくその他のラインナップを確認。カレー、肉、げそ……春菊、紅生姜、ちくわ、コロッケなど揚げ物もバランス良く取り揃えられている。天丼やカレー丼といったご飯物にセットメニューまで。変わり種としては、つけそばでは一般的になった組み合わせの「ラー油そば」などがある。この日は最初に目に飛び込んだ「岩のりそば」(税込450円)を注文。

相客はひとりいたが、間もなく自分ひとりの貸し切り状態に。厨房カウンターのハイチェアと立ち食いテーブルがあり、10人ちょっとは入るくらいのキャパだ。BGMの代わりにラジオが流れている。

丼を覆う黒はツユで更に真っ黒に

1~2分ほどで着丼。この手のそば屋にしては珍しくレンゲがついている。丼のおよそ半分を覆い尽くす岩のり。さらにもう片方にはわかめが添えられていて、"真っ黒な"そばだ。

さらにツユも黒い。ザ・関東風で、甘みが強い。たっぷりの岩のりを溶かしつついただくと、深みが増す。麺は中太で、良くも悪くも等身大の立ち食いそばの麺。コシや香りとは無縁だが、ツユによく絡み、腹にもたまる。ねぎはセルフで入れ放題となっている。

「伊藤松吉商店」は東京メトロ丸ノ内線「新高円寺」駅から徒歩4分

高円寺でもこのあたりは殊に飲食店が多くないエリアになるだけに、こういった正統派の立ち食いそば店は穴場かもしれない。次回訪問時には、「松吉そば」が売り切れていないといいのだが。

筆者プロフィール: 高山 洋介(たかやま ようすけ)

1981年生まれ。三重県出身、東京都在住。同人サークル「ENGELERS」にて、主に都内の銭湯を紹介した『東京銭湯』シリーズを制作している。