前回の「そば田」に引き続き、新橋のそばをお届けする。向かった先は「蕎麦さだはる」。JR山手線「新橋」駅の西口からまっすぐ、日比谷通りを渡ってすぐのあたり。歩くと7分くらいだろうか。駅前の喧騒からは少し離れており、ランチタイム時でも比較的ゆったりしたエリアだ。都営三田線「内幸町」駅からも近い。

「漁師そば」(税込560円)

かけそばでも十分具だくさん!?

赤い戸枠とサッシがよく目立つ。訪問したのは平日の13時半頃。遠くからでも続々と人が吸い込まれていくのが見え、自然と足早になる。店外には小さい券売機がひとつ。こちらで食券を買ってから中に入る。選んだのは「漁師そば」(税込560円)。特に前知識もないまま押してしまったが、字面から察するにきっとうまいそばに違いないだろうと思う。

引き戸を開けると、案の定カウンター前にはそばを待つ人が4~5人。正面が厨房・受け渡しカウンターになっていて、入るとすぐ店の人から食券を渡すように言われる。店内は薄暗く、入って左右に立ち食いカウンターが並ぶ。詰め合って並んでも10人ちょっとほどのスペースだ。この時点でほぼ満席で、自分の席が確保できるか少し不安になる。

そうこうしているうちに、そばは次々と作られていく。受け渡し時に「薬味と玉子1個どうぞ」と伝えているのが聞こえた。見るとどうやら、「ねぎ」「わかめ」「大根おろし」「天かす」はセルフサービス、さらに「生玉子」か「温泉玉子」がいずれか1個無料のようだ。これでは"かけ"で頼んでも、十分具だくさんのそばが作れてしまうではないか。

海産物=漁師な具たちがツユに溶け合う

待つこと約3分。ようやく自分の漁師そばが完成した。幸い自分の席も確保できそうだ。せっかくなので、天かす以外の薬味と、玉子は生の方をいただいた。写真はそれを全て乗せた状態のもので、元々の漁師そばに入っている具材がどれだか分からなくなってしまった(笑)。

バラのり、とろろ昆布、めかぶあたりが海藻(=海産物=漁師)なので、おそらくそれなのだと思う。それぞれがツユに溶け合うことで、まさに一期一会、複雑でぜいたくな味わいになった。麺は太めで、コシしっかり。そばの香りには無頓着な方だが、それでも立ち食いそばのクオリティは越えているなとはっきり感じる。

「蕎麦さだはる」はJR山手線「新橋」駅の西口から徒歩7分

数多い都内の立ち食いそば店の中でも、味・ボリューム・コストパフォーマンスの面で、指折りの店であることは間違いない。新橋を訪れた際は、駅前の誘惑かをグッと我慢して、さだはるまで足を伸ばしてみてほしい。

筆者プロフィール: 高山 洋介(たかやま ようすけ)

1981年生まれ。三重県出身、東京都在住。同人サークル「ENGELERS」にて、主に都内の銭湯を紹介した『東京銭湯』シリーズを制作している。