今回はひさしぶりに新橋へ。言わずと知れた(?)立ち食いそば激戦区であり、この連載でも何杯か紹介したが、読み返してみれば一年近く訪れていないことに気がついた。目指す店は「そば田」。JR「新橋」駅・銀座改札を出て外堀通りを渡ってすぐ、高架下の立ち食いそば屋である。
夕方以降は新橋サラリーマンもホイホイ
木目調の外観に白いのれん。真新しい様子だが、レトロな雰囲気を演出している。店頭には写真入りのお品書きとともに、ビールが大きく載っていたり、各種おつまみも掲示されていたりするところを見ると、そこはやはり場所柄、夕方以降は立ち飲み屋としても機能しているようだ。入り口脇には液晶タッチパネルの券売機があるのでこちらでオーダーする。 きつねやたぬき、かき揚げや鴨南蛮などメニューは多くないが、一通りそろう。かき揚げそばの写真が一番大きかったが、前回の新宿「立喰いそば山吹」で取り上げたばかりだなと思い、この日は「ごぼう天そば」(税込470円)にタッチ。
中に入ると、右手に厨房。入口側に返却口、その隣に揚げ物の入ったバット、お渡し口と並ぶ。配置はセルフのうどん店に少し似ているような印象を受けた。左手には周囲の壁に沿って、着席カウンター。中央にテーブルがあり、そちらにもイスが置かれている。
店内はギュッと狭いが、10人ちょっとは入るだろうか。平日13時過ぎの訪問で、5~6人の客入りだった。取り付けられたテレビと外国人らしき店員さんの声が、店内を一層にぎやかにしている。
香るごぼう天は黒いツユとともに
食券を渡して2分ほど待てば、自分の番号が呼ばれる。丼片手に隅の方の席に陣取る。ごぼう天にも様々な形があると思うが、この店のは、薄くスライスしたゴボウをカリカリに揚げたチップス風のごぼう天。短冊状よりもゴボウ特有の歯ざわりは弱いが、香りは強い。量もケチらずどっさり盛られているのがうれしい。
麺はもっちりした食感。ツユは黒いが、見た目ほど味は濃くない。ダシがよくきいており、天ぷらの油と絡まって全体をまとめてくれている。
気どらない雰囲気と、適度な窮屈さが心地よい。壁にはおつまみの短冊が目立ち、一日働いた人が帰宅する前に一杯やっていくのにも楽しそうな店だ。
筆者プロフィール: 高山 洋介(たかやま ようすけ)
1981年生まれ。三重県出身、東京都在住。同人サークル「ENGELERS」にて、主に都内の銭湯を紹介した『東京銭湯』シリーズを制作している。