今回訪れたのは台東区千束にある「山田屋」。一時期休業していたとの噂だったが、無事再開したと聞いたので行ってみた。東京メトロ日比谷線「三ノ輪」駅もしくは「入谷」駅から徒歩8分くらい。三ノ輪駅からだと国際通り沿いを浅草方面に南下した先なのでわかりやすい。すぐ裏手には吉原神社、散歩するにも興味深いエリアでもある。
天ぷらも豊富で朝から大繁盛
店構えは老舗の蕎麦屋といった風格。「大盛」「味自慢」「立喰そば」の短いのれん。入れば分かるが、今は「立喰」席はない。ガラガラと戸を引いて中に入る。
店内はL字の着席カウンター、その中に厨房。右手の壁沿いにさらに着席カウンターと2人がけのテーブルが一脚のみ。左手には食券機、および給水機。入ったのは平日の10時半頃と実に微妙な時間帯だったものの、店内は8割方埋まっており、大盛況。これがビジネス街だと閑散としたものだが、街の特徴が垣間見えて面白い。
メニューは天ぷらを中心に豊富。イカ天やコロッケ、春菊にいも天、ごぼうなどなど、正統派が一通りそろっている。さらにそれぞれの具材はトッピングとしても購入できる。今回は「あじ天そば」(税込390円)に「なす」(税込80円)をトッピングした。
厨房では、いかにも"おかあちゃん"といった感じの女性含む4人の方が忙しなく動いている。食券を渡すときに麺の種類を「うどん・そば・きしめん・細めん」から選ぶ。ここは「細めん」をチョイス。さらに「天ぷらは入れていいの?」と聞かれるので、入れてもらう。別添でいただくこともできるようだ。
待つ間、店と客の会話をなんとなく聞きながら過ごす。店員から客は、ぽっちゃりと愛嬌のあるやや年配の女性は"ママ"と呼ばれ、背筋のピンとした老齢の男性は"マスター"と呼ばれていた。客は次から次へと入れ代わり立ち代わり。「いつものでね」とのやり取りも聞こえる。やはり常連と関わりの深い、地元に愛されている店のようだ。
下からちくわ天がこんにちは
そうこうする内に到着。直径の大きい丼から、ダシのいい香りがする。ツユは黒い。細めんは、クタッとやわらかくゆでられていておなかにやさしい。アジ天は小ぶりだが肉厚、トッピングしたなすは二つ割りが2枚入っていて、つまり丸ごと1本分だ。どちらも十分おいしい。
さらにその下にはちくわ天が入っているではないか。「ちくわそば」なんてメニューがあるくらいだから、サービスなのかもしれない。聞けなかったが、ありがたくいただく。
味よしコスパよし店の雰囲気よし、と三拍子そろった店だが、グルメ情報を頼りに外から大挙するような店ではない。静かに町と店の空気も味わおう。
筆者プロフィール: 高山 洋介(たかやま ようすけ)
1981年生まれ。三重県出身、東京都在住。同人サークル「ENGELERS」にて、主に都内の銭湯を紹介した『東京銭湯』シリーズを制作している。