前々回の「新田毎」に引き続き、駅構内のそばを攻めたい。今回の一杯は、JR池袋駅。1・2番線と3・4番線の階段の間にある「爽亭」だ。ここ池袋駅のほか、上野駅や荻窪駅などにも店舗があり、あの名古屋駅の有名店「きしめん 住よし」と同じ会社が経営している。
とは言え、戸のない、ふきっさらし(屋内だが)立ち食いカウンターオンリーの風体は、まさに昭和の駅そば。ダシの香りにつられてフラフラと迷い込んでしまうこと間違いなしである。
「桜えび山菜」「ピリ辛菜の花」なるものも
食券機は両サイドに1台ずつ。やはりこちらも交通系電子マネー決済できるのは便利。ボタンの最上段には「桜えび山菜」「ピリ辛菜の花」といった、よそではちょっと見かけない創作メニューが並ぶ。ここは、その中のひとつ「豚肉生姜そば」(税込480円)を押してみた。
15時過ぎだったが、店内は8割の客入り。隙間を見つけて、カウンター越しに食券を渡す。冷水機はカウンター端に設置されているので、水を汲んでから陣取った方がスムースかもしれない。駅そばなので、こだわりよりスピード。1分も経たずに丼が置かれる。
香り・コシ・ツユ、全て良し
具材としてのっているのは、豚バラ肉の他にすりおろしショウガと岩のり、刻みネギ。このショウガと岩のりの風味が絶品中の絶品。以前、中野の「田舎そば かさい」を紹介した時にも書いたが、やはり温かいそばには七味よりもショウガがよく合う。
岩のりの磯の香りも素晴らしい。安易にわかめを使っていないところにこだわりが垣間見える。麺は歯切れよく、程よいコシがある。ツユはさっぱりとして濃すぎず、麺や具材を引き立てている。これまでこの連載では50杯以上のそばを紹介してきたが、間違いなく5本の指に入る一杯だった。
立ち食いそばのメニューは天ぷらやフライの種類に依存しがちなのだが、爽亭のように食材の組み合わせでオリジナリティを打ち出している店は貴重だ。メニューは季節によっても変わるようなので今後も注目していきたい。
筆者プロフィール: 高山 洋介(たかやま ようすけ)
1981年生まれ。三重県出身、東京都在住。同人サークル「ENGELERS」にて、主に都内の銭湯を紹介した『東京銭湯』シリーズを制作している。