立ち食いそばの魅力のひとつはやはりワンコインでお釣りがくる値段だろう。お財布にはうれしい反面、空腹時には少しボリュームが物足りなく感じることがある。そんな時、筆者は結局2店はしごをしてしまうのだが、それだと結局1,000円弱。これなら普通にラーメンやカレーを食べた方が良かったのでは……と思うこともあったりなかったり。
さて、前回は旗の台駅前で肉天玉そばを食べた。最後の一滴までツユを飲み干したのに、なんとなく胃に余裕を感じたので、このあたりに他にそば屋はないものかと探してみる。そしたらあった、二駅隣の東急大井町線中延駅「大和屋」。こちらも前回に勝るとも劣らない駅前そば。改札を出てまさに目の前にのぼり。左にくるっと回ればそこにある"駅そば"だ。
今度は「ピーマン天きしめん」を
看板を見ると、珍しいきしめんの文字。立ち食いカウンターのみで、10人入るかどうかのスペース。相客はこの時ひとりだけだったが、店の隅角にはテレビがついており、店員3人が談笑しながら仕事をしているのでそれなりににぎやかだった。
自家製の天ぷらを使ったメニューが壁に貼られていて、人参ごぼう天やピーマン天のようなユニークなそばもある。食べ歩きレポートとしては「ピーマン天きしめん」を食べるべきだったのだが、注文したのは「コロッケそば」(税込380円)。おなかにたまるメニューを優先してしまった。
コロッケを引き立たせる麺とネギ
しかし、これが大正解! 写真の通り見た目はシンプル平凡なのだが、ぎゅっと身がつまったコロッケはずっしり分厚い。しかもホクホクでとても甘い。それがややしょっぱめのツユとよく合っている。
麺はやや細めで、さっぱりした口当たり。コロッケという主役をうまく立たせている。もうひとつうれしいのが、ドサッと盛られた小口切りのネギ。極論、立ち食いそばにはネギだけあればいい、と思っているくらいなので、これは満足度が高い。
桜が咲く季節も近いが、まだまだ寒い日も続く。そんな時、ホッと身体を温めてくれるのにぴったりの一杯だった。
筆者プロフィール: 高山 洋介(たかやま ようすけ)
1981年生まれ。三重県出身、東京都在住。同人サークル「ENGELERS」にて、主に都内の銭湯を紹介した『東京銭湯』シリーズを制作している。