今回は田端駅に。JR山手線の北側、駅前には束なった線路をまたぐように橋が架かっているのみで、オフィスビルや飲食店があまり見られない。京浜東北線の乗り入れ駅としての役割もあるが、乗降数は山手線の駅の中では下位のちょっと地味な駅でもある。

「天ぷらそば」(税込320円)

余談だが、大学時代に舞台演劇をやっていた頃、ペンキを買いに何度も田端を訪れた思い出がある。その手で有名な塗料店があるのだ。話を戻して、この日訪れた「立喰そば かしやま」は、駅前の橋を北側、ホテルメッツの前の階段を降りたところにある。隣は大衆食堂だ。

かき揚げからゲソも顔を出す

店内は狭く、6人くらいの立ち食いカウンターのみ。立って食べていると後ろも通りにくいくらいのスペースだ。入ってすぐ右手に券売機。店内にも「舌代」から始まるメニューが貼られているが、かけ、たぬき、きつねに玉子、わかめといった超正統派ラインナップ。こういったところで頼みたいのはやはり「天ぷらそば」(税込320円)だろう。

訪問したのは平日の9時頃。久しぶりの朝そばである。駅前ではひっきりなしに通勤客が行き交っており、時折この店に足先が向かう。気づけばほぼ満員で、外で客が待つほどになっていた。カウンターには七味と、割り箸入れ(蓋付きなのが懐かしい)、そして水のみ。食券を渡せば、30秒ほどでそばが運ばれる。

丼を覆う、やや白っぽいかき揚げ。サクサク感はなく、むしろ最初からちょっとしっとりしているのが何とも立ちそばっぽい。みるみるうちにツユに馴染んでいって、トロトロした食感に変わっていくのだが、そのうちに具材でこっそり隠れていたゲソが顔を出すのが面白い。ツユはやや酸味があり、麺もゆで置きの中太麺。しっかりとした歯ごたえとボリュームを感じることができる。

「立喰そば かしやま」はJR「田端駅」北口から徒歩3分

早く、安く、うまく。三拍子そろった立ち食いそば店であることは、ひっきりなしに訪れる客が裏付けていた。

筆者プロフィール: 高山 洋介(たかやま ようすけ)

1981年生まれ。三重県出身、東京都在住。同人サークル「ENGELERS」にて、主に都内の銭湯を紹介した『東京銭湯』シリーズを制作している。