前回の「三松」に引き続き、新橋である。新橋で立ち食いそばと言えば外せない一軒がある。それが、今回紹介する「丹波屋」だ。
外国人が作る本格そのものなカレー
場所はJR「新橋」駅烏丸改札出てすぐ、SL広場に隣接するニュー新橋ビルの1階にある。この店の看板メニューは、実はそばではなくカレー。それも本格派のインド(ネパール)カレーを頂けることで、テレビや雑誌などでもしばしば紹介されている。
店構えは至って地味。本当に駅前の「立ちそばスタンド」といった感じで、知らない人は気にも止めないだろう。小さなドアをあけると、狭いL字カウンターの店内。もちろん立ち食い席オンリーで、6人も入ればぎゅうぎゅうだと思う。
この日は平日の11時前。まだランチタイム前だったので、相客は2人だった。カウンター内、厨房の中も狭い。狭いのに、3人も店員がいる。ひとりは立ち食いそば屋らしいオヤジさんだが、あとのふたりは外国人女性。この方々が丹波屋のインドカレーをつくっているということで、本格的というよりも本格そのものな味なのである。注文は口頭で、代金は引き換え式。ここはやはりせっかくなのでそばも味わいたい。「ミニカレー&かけそばセット」(税込500円)を注文。
やさしいダシが辛味をリセット
小皿に盛られたカレーは、具のようなものは特に見られず、シンプル。これがクセになる辛さ&旨さ! 思わず小声で「おいしい」とつぶやいてしまう味で、ミニサイズにしたことをすぐさま後悔した。具はないものの、何種類もの野菜を溶かし煮込んで作られているらしく、複雑なコクを感じる。辛味の中に、甘味も見つかるのだ。
かけそばの方だが、わかめと刻みネギがのっている。白くて、やわらかい麺が特徴で、やさしいダシの風味が、エッジの効いたインドカレーの口をリセットしてくれる。自宅では、カレーとそばを一緒に、それも別々に食べる機会はそれほどないだろう。立ち食いそばだけに許された禁断のコンビネーション。至福のひとときだ。
丹波屋は早朝から営業しているが、カレーの提供は10時半頃からのよう。カレー目当てで訪れる際は注意しよう。
筆者プロフィール: 高山 洋介(たかやま ようすけ)
1981年生まれ。三重県出身、東京都在住。同人サークル「ENGELERS」にて、主に都内の銭湯を紹介した『東京銭湯』シリーズを制作している。