今回紹介する店はその名も「歌舞伎そば」。ちょうど歌舞伎座の裏路地に回り込んだところにあり、歌舞伎座のWEBサイトにも掲載されている名店である。
銀座の観光スポットといえば真っ先に挙げたいのが歌舞伎座だろう。と言いながら、いつも前を通るだけで、実は中に入ったのは今回が初めて。中に入ったと言っても、歌舞伎座は東京メトロ日比谷線「東銀座」駅3番出口直結。歌舞伎そばがある場所も、お土産売り場のある広場からエスカレーターで地上に上がっただけである。
味も雰囲気も大事!
入口はまるで老舗蕎麦屋のような風格。食事は味だけでなく雰囲気も楽しむもの。銀座で蕎麦を食べるなら、たとえ安くともこうした店でありたい。引き戸から入り、うなぎの寝床のように奥に細長い構造の店内カウンターのみで、10席あるかないかの小さな店である。手前に食券機があるので、こちらで購入。
少しいつもの立ち食いそば店の気分に引き戻される。歌舞伎そばと言えば定番は「もりかき揚げそば」(税込470円)だ。チケットを取り、冷水機から水をくんで空いている席につく。ランチタイムは過ぎていたが、店内は8割方埋まっていた。
スナック感覚でかき揚げを食す
カウンター内には店員2人。食券を渡し、水をひとすすり。あっという間、30秒ほどでそばが目の前に置かれる。もりそばの周りに置かれた5つのかき揚げと、つゆ。かき揚げは一口大のサイズで、提供スピードから考えて揚げたてなわけはないのだが、これがサクサクで歯ざわり抜群。
野菜の甘みもしっかりしていて、スナック感覚でいくらでも食べられそうだ。麺はややコシがあり、長い。長いが、ここはせっかくの歌舞伎座のそば。切らずに一気にすすり込みたい。つゆは濃すぎず、甘さ控えめ。卓上のわさびはアクセントに。ふと気づけばカウンターには、いつの間にかそば湯が。最後はこれで身体を温めて、ごちそうさま。
食券機には「当店人気一番の冷たいもりかき揚げそばはこちら」の張り紙があった。常連はもちろん、場所柄一見客も多いのだろう。観劇の前にさっとかけ込む、お財布にやさしい一杯だった。
※記事中の情報は2016年10月取材時のもの
筆者プロフィール: 高山 洋介(たかやま ようすけ)
1981年生まれ。三重県出身、東京都在住。同人サークル「ENGELERS」にて、主に都内の銭湯を紹介した『東京銭湯』シリーズを制作している。