今回紹介するのは、台東区浅草橋にある「野むら」。JR「秋葉原」駅と「浅草橋」駅のちょうど中間ほどに位置しており、どちらからも10分弱は歩く。駅前の喧騒から離れた清洲橋通り沿いのオフィスビル1階に店を構えており、「スタンドそば」の看板が一風変わっている。

「きつねそば」(税込370円)

余談だが、おとなりの店舗はとんかつの名店「丸山吉平」。ややお値段は張るが、豚肉の脂の旨味を存分に味わえるとんかつをいただける。

ネギのあり・なしはお好みで

閑話休題。こちらは「スタンドそば」なので、実にリーズナブルで安心だ。入るとL字カウンターで、訪問した9時頃は相客ひとりのみだった。場所柄サラリーマン客が大半なのだろう。

カウンターに囲まれた厨房の中には、初老風のオヤジさんがひとり。忙しく天ぷらを揚げたり、ネギを刻んだりしていたが、のれんをくぐると「いらっしゃい! 」と威勢のいい声がかかる。こちらは食券機はなく、口頭注文の代引き式。注文は「きつねそば」(税込370円)にした。

手際よく麺がゆでられ、丼に盛られていく中、「ネギはお入れして? 」と聞かれる。立ち食いそばには極論ネギさえ入っていればいいと思っているくらいなのでもちろん入れてもらうが、後から来た客はネギ抜きで頼んでいた。人それぞれ。

大きなきつねにガッシリ麺

見よこのつゆの黒さ。これだけ漆黒に染まったつゆはなかなかお目にかかれない。関西風うどん愛好家は眉をひそめるかもしれないが、これが見た目ほどしょっぱくはなく、むしろ甘みと深いコクを感じる。大きなきつねもこのつゆをたっぷりと吸っており、熱くてうまい。麺は太くてガッシリとしているため、逆につゆを吸いすぎることなく軽く食べられる。

「野むら」へは、JR秋葉原駅とJR浅草橋駅どちらからも歩いて10分弱

今回はきつねそばだったが、かき揚げやコロッケなど、もちろん揚げ物も豊富。このつゆで天ぷらを溶かした時、どんな表情を見せてくれるのか。今から次回が楽しみである。

※記事中の情報は2016年9月取材時のもの

筆者プロフィール: 高山 洋介(たかやま ようすけ)

1981年生まれ。三重県出身、東京都在住。同人サークル「ENGELERS」にて、主に都内の銭湯を紹介した『東京銭湯』シリーズを制作している。