最近、別件の取材で一週間毎日杉並区に出かける用事があった。20代の頃高円寺に住んでいたので地の利はあったが、それでも杉並区は広い。今回は、レンタサイクルであっちこっちと路地をかけぬけていた時に見つけた一軒からお届けする。と言っても、店はJR「阿佐ヶ谷」駅の北口バスロータリーの目の前。在勤・在住の皆様にとっては当たり前のような店だが、ご容赦願いたい。「蕎麦冷麦 嵯峨谷 阿佐ヶ谷店」である。
立ち食いそば価格の十割そば店
嵯峨谷はチェーン店の一種で、渋谷店を2016年にご案内済み。チェーンらしからぬ、ちょっとシックで大人のそば屋の雰囲気が漂う外観をしている。屋号の肩についているように、冷麦を出す店としても有名だ。それよりもまず、立ち食いそば価格の十割そば店として知られているかもしれない。
平日の午前9時頃、店に入った。この日は快晴であったが店内は薄暗く、落ち着いている。朝そばサービスタイムの時間帯だったが、先客は1名のみ。20名前後は入るであろう比較的大型店で、立ち食いはなくカウンターとテーブルが並ぶ。食券機は1台。冷麦が有名とあってもこの日は2月。そろそろ春の足音……というにもまだ早い。ここは無難に一番人気の「天ぷらそば」(430円)と「追加ねぎ」(60円)のボタンをプッシュする。ちなみに冷麦だけでなくうどんも対応しているようで、丼やビールもある。また、十割そばを全力で味わいたい人はもりそばにするのがよい。
風味が強い十割そばに舌鼓
カウンターに食券を出し、半券を受け取る。水をくんでいると、油がパチパチはねる音がする。かき揚げは揚げたてだ。待つこと2分ほど。番号で呼ばれて、不要の半券は受け渡し口の容器に捨てる。追加ねぎは小鉢に別添えだが、これが本当に多い。写真にあるように、丼の3分の1をラクラク覆ってしまった。また嵯峨谷は、カウンターの壺にフリーわかめも設置されているので、こちらも節度を保って好きなだけ入れる。ふたつかみくらいか。「天ぷらそば」をオーダーしたが、これで立派な「ねぎわかめ天ぷらそば」に早変わりした。七味もスプーンで振りかけるタイプだが、これはかけすぎに注意しよう。かき揚げはカリッと、そして甘みが強い。ツユ自体も甘いので、万人が食べやすいやさしい味わいだ。そばは十割だけあって、風味に特徴があり、この丼の中では主張が強いが食べにくさはない。麺のモチっとした食感からトッピングのおかげで歯ざわりも多彩に楽しめ、食べ進めるのが嬉しい一杯である。
繰り返しになるがこちらの店舗はゆったりしており、立ちそばの「安かろう」のイメージも全くないので若い女性や家族連れにもオススメしたい。営業時間も朝から通しでやや深めの時間帯まで開いているので、腹ごなしをしたりビールと楽しんだりと、個々のニーズにあわせて使い分けやすい良店である。