本日の舞台は、人形町。この連載でも、初期から何軒も取り上げてきた街だ。石を投げれば蕎麦屋に当たる、とはいささか盛り過ぎかもしれないが、本当にこのエリアは立ち食いそば屋が多い。その中で選んだ店は「十割蕎麦専門店 名代天下そば」だ。東京メトロ日比谷線「人形町」駅A1、A3出口を上がって徒歩1分。路地を挟んで2軒隣は「おにやんま」、水天宮通りの向こうは「立喰そば きうち」がある。いやはやなんとも羨ましい。
種類豊富な「無料薬味コーナー」に感激
開店は11時からと、ランチタイムに合わせている。伺ったのはちょうど11時だが、先客はまだいなかった。戸は開いており、中に入るとすぐ右手に券売機がある。店そのものは大きくなく、厨房を取り囲む形で客席が組まれている。手前はハイスツール、給水機を挟んで奥は普通のイスのカウンター。10人少しのキャパか。BGMはジャズだ。
さて、メニューのチョイス。ここでカロリーを摂るぞと朝食を抜いていたので「ミニかつ丼セット」(780円)のボタンをプッシュ。そばは「もり蕎麦」か「つけ蕎麦」を選ぶようだが、十割蕎麦専門店ということなので、久しぶりにもり蕎麦を頂きたい。他のメニューを見ればつけ蕎麦もこちらの名物のようで、カレー南蛮つけ蕎麦や担々つけ蕎麦、三元豚の肉つけ蕎麦など変わり種もいくつか。ほか、明太子丼やねぎとろ丼などごはんメニューも豊富だ。もちろん、トッピングを組み合わせてお馴染みの温かいそばをいただくこともできる。
厨房内には心地よい接客のお姉さまが一人。食券を渡し、もり蕎麦である旨を伝える時に目に入るのがカウンターの無料薬味コーナーだ。ねぎ、わかめ、すりごま、煎りごま、天かす、しょうが、わさび、天丼のたれが使い放題のほか、温泉玉子か生玉子を一個無料サービスとのこと。注文してから2~3分は待つので、どういう組み立てで盛ろうか思案する。まず、ねぎとわさびは必須だ。もり蕎麦なので、わかめは使い所的に微妙。ごまや天かすはつけ蕎麦のつけ汁用だろう。さて、温玉か生か。そもそも、もり蕎麦の玉子って難しい。麺にそのままかけるわけにもいかず、かと言ってそばつゆに入れてしまうと存在感半減だ。と、ここで思いついたのがカツ丼の上に生玉子を落としてマシマシ作戦。これはなかなか素敵なんじゃないですか。
見た目麗しい「かつ丼」と香り高い「十割そば」
そしてそば到着。うん、見た目も素敵なセットだ。カツ丼も、十分単品で成立する美しさである。お箸はリユースのプラ製。これが少しそばを掴みづらく大変だったが、エコとは我慢することである。早速ひとすすり。角切りのしっかりしたコシ、十割ならではの香ばしい香りも美味い。そばつゆは少し濃い目で、江戸の蕎麦っぽい。さて、マシマシ作戦だが、これが半分成功半分失敗。白身部分がツルリと丼からこぼれ落ちてしまい、お盆を汚してしまった。だが、味は最高で、コクが大幅にアップしてリッチな一杯に。次回はもう少し頭を使いたい。
欲をいえばもう少しボリュームが欲しいところだが、この場所であれば腹が減っていれば他の店を回ればいいのだ。ありがとう人形町、また立ち食いそばを食べに来ます。