東京も梅雨が明けるやいなや、酷暑。日中出歩くと、ちょっと危険なくらい暑い。子どもの通う保育園では、毎朝持たせる水筒に「塩と砂糖をひとつまみずつ入れろ」とのお達しがあった。まだ8月は始まったばかり。熱中症対策は十分にされたし。

  • 「ねばとろ冷やしそば」(520円)

立ち食いそばは温かい派だ。立ち食いそばは、ダシの旨味をいつも感じていたい。こんなことを書くと怒られそうだが、冷たいそばは、どこも似たりよったりの味がする気がする。庶民的な立ち食いそばに、そばの香りも求めていない。むしろ、つなぎ多めのそば風うどん、どんと来いだ。

ただし、こんな暑い日は別だ。脳より体が、「冷やし」を求めている。新宿駅の西口地下街。どの時間帯を切り取っても、人の往来が絶えないこの地に「新和そば」はある。京王線の百貨店口改札から30秒とかからない場所。外から丸見えの店内はうなぎの寝床型で、立ち食い席オンリーである。

京王線の百貨店口からほど近い立ち食いそば店

店頭に出ていたポスターを軽く見やった後、短いのれんをくぐる。時刻は午前10時を過ぎたばかり。店内にはリタイアされたと思しき男性が2名で、店を一歩外に出た慌ただしさとは無縁の空間がある。普段ならどの天ぷらにしようかと思案を巡らせるところだが、今日は冷たいそばと決まっているのだ。オススメメニューであろう一番左端のボタンを迷わず押した。「ねばとろ冷やしそば」(520円)である。

食券を店員さんに手渡し。待つ間、立て続けに水を2杯飲む。飲み終えた頃には早くも完成、さすが新宿駅の立ち食いそばだ、何が一番重要かがわかっている。

食欲を増進させる夏にぴったりの一軒

520円は少し高いかな? と思ったが、器を見て納得。温玉、とろろ、オクラ、めかぶにワカメ、ネギ、たっぷりと具材が盛られている。美しささえ感じるところだが、ここはごちゃまぜにかき混ぜてこそのねばとろ冷やしそばだ。

温玉も躊躇なく潰す。第一印象、めかぶの酸味が良い。口当たりがよく、さらに食欲も増進させてくれる、まさにこの季節にぴったりの味。温玉はコク、とろろはまとめ役だ。オクラの食感もなくてはならないアクセント。麺とツユはベーシックなもので、派手な主役の邪魔をしない。結局ツユまで飲み干し、さらに飲む3杯目の水も美味い。

  • 京王線の百貨店口改札から30秒とかからない場所にある「新和そば」

ボリュームもちょうど良く、夏バテ気味の方でもスルッと完食できる量。医食同源、この夏を乗り切るスタミナを立ち食いそばに見つけるのもいいかも。

筆者プロフィール: 高山洋介(たかやま ようすけ)

1981年生まれ。三重県出身、東京都在住。同人サークル「ENGELERS」にて、主に銭湯を紹介する同人誌『東京銭湯』『三重銭湯』『尼崎銭湯』などをこれまでに制作。