今年は一際長く感じる東京の夏。7月も末だというのにセミの声をほとんど耳にしていない気もする。しかし今日は、昨日の雨と明日の雨予報の狭間の晴天。午前中からグングン気温は上がり、活性化した身体はお昼を待たず空腹を覚える。地下鉄を乗り継ぎ、向かったのは「ミスジ」だ。都営浅草線「蔵前」駅徒歩8分。春日通りと新堀通りが交差する角に店はある。屋号は、台東区三筋からきているのだろうか。

  • ごぼう天そば(380円)

今なおテレビデオが現役の人間味あふれる一軒

到着したのは午前10時半頃。外観は、立ち食いそば店というよりも、いわゆる町の一般的なそばうどん店のように見える。ガラガラと戸を開け、中に。店内には客はおらず、大将は背を向けながら作業中。気づいてもらうのに若干の時間を要した。店内は厨房を囲むL字カウンターと、2人がけのテーブルが2脚。隅には時代遅れのテレビデオが現役で稼働しており、情報番組を映していた。お世辞にもきれいとは言い難い雑然とした店内ではあるが、これはこれで人間味があって味わい深い。

水はセルフ。乾いた身体に一口潤しながら、揚げ物バットを見つつ「ごぼう天はありますか?」と尋ねる。アイドルタイムなので、お目当てのタネがない場合もあるからだ。「ありますよ」と快い返事があったので、「じゃあごぼう天そばで」と注文。380円は激安。代金引換である。

値段からは考えられないボリュームに大満足

完成までは1~2分。丼を見ると、イメージしていたごぼう天とは少し違う。最近は流行りもあり、福岡の「ごぼ天うどん」も広く知られるようになったが、こちらのごぼう天は、細切りのにんじんとごぼうを使ったかき揚げ。ごぼう特有のえぐみや苦味が抑えられており、甘くて食べやすい。その脇にわかめと刻みネギが少量添えられている。

そばはしっとりとした細麺で、値段からは考えられないくらいのボリュームで、飢えた胃袋を満たしてくれた。ツユは比較的塩味がたっており、甘みは抑えめ。ズズズッと最後まで飲み干して、ごちそうさま。

  • 都営浅草線「蔵前」駅徒歩8分の「ミスジ」

帰りは銀座線の「田原町」駅まで歩き、そこから帰宅。昼を過ぎれば小腹が空きはじめるかなと思ったが、なかなか腹持ちもいい。今週の一杯は、当たりだった。

筆者プロフィール: 高山 洋介(たかやま ようすけ)

1981年生まれ。三重県出身、東京都在住。同人サークル「ENGELERS」にて、主に銭湯を紹介する同人誌『東京銭湯』『三重銭湯』『尼崎銭湯』などをこれまでに制作。