エアコンもコートも要らない陽気になった。寒い日にすする"かけそば"、暑い日にすする"もりそば"も趣があるが、この季節は、具材で春を感じたい。この日、朝8時過ぎ。通勤ラッシュに揉まれながら向かったのは、「天かめ 江戸川橋店」。都内に数店舗を展開する立ち食いそば店で、以前この連載でも飯田橋と半蔵門の店舗をご紹介している。
アクセスは、東京メトロ有楽町線「江戸川橋」駅1b出口を上がってすぐのところで、新目白通りに面している。江戸川橋ビルのテナントのひとつで、ここにはほかにもファストフード店がいくつか入っており、出入口も通り沿いとビル内の2箇所があった。
安くてうまい王道メニューがズラり
店外、店内に各1台ずつ券売機がある。看板には、もり・かけ、月見、たぬき、かき揚げ……実直な顔ぶれの下には「基本は安くてうまい」の文字。ほかにも、細切り蕎麦ののどごしとか、茹でたて、自慢の鰹節つゆ、など書かれてはいるものの、どの店もそれくらいは言っているだろう……と、取り立てて注目するコピーはない。立ち食いそばは結局、安くてうまいのが一番大事なのだ。
チョイスは「山菜そば」(360円)にした。山菜そばは、かき揚げそばやカレーそばに比べれば、少し地味である。さらに言えば、山菜そばは、神社のお参りに行った後、甘味と一緒に頂くもの、などという偏ったイメージまであるのだが、春には春らしいものを積極的に取り入れたい。
時間は9時になったばかり。店内に先客はいなかった。2人がけのテーブルが2脚。あとは立ち食い用のカウンターになっている。店内には少し不釣り合いなFM風のラジオがかかっていた。正面に食券を渡し、奥で水をくむ。完成までは約1分。箸は受取口から持っていく。
そばにマッチする山菜のやさしい甘さ
山菜の緑が鮮やかで食欲をそそる。おなじみのわらびとぜんまいは既成品かと思われるが、えぐみもなく、やさしい甘さでそばによく合う。色の黒いツユは、これ以上もこれ以下も求めない正統派の東京ダシ。意外に特徴が際立っていたのはその麺で、ねっとりした舌触りがほんのりと。細く切られているのでするするっと胃に入っていく。きっと、冷やしで食べればさらに美味いと思う。
ボリュームは小盛サイズなので、食べ歩き散歩にもぴったり。というわけで、次回も引き続き江戸川橋のそばをご案内したいと思う。