今回は、蒲田の「しぶそば」をご案内したい。「しぶそば」は、主に東急沿線沿いに展開する立ち食いそばチェーンのひとつで、二子玉川や大井町、武蔵小杉、中央林間などにも店舗がある。本店は「本家しぶそば」として、渋谷に店を構えており、連載でもご紹介済みである。

  • 蒲田「しぶそば」で、老舗の趣を感じながらすする「いかげそのかき揚げそば」

    「いかげそのかき揚げそば」(420円)

この蒲田店は、公式サイトによれば、昨年50周年をむかえた歴史ある立ち食いそば店であるとのこと。東急線ホーム内にあるので、利用客でなければ少々立ち寄りづらい。かくいう自分も、五反田駅で東急池上線に乗り換え、終点まで揺られて向かった。

老舗ながら明るく清潔感がある店内

店は横に広く、もちろん何度か改装されていると思われるが、明るく清潔感があり、老若男女立ち寄りやすい雰囲気だ。開け放たれた出入口と短いのれんで、混雑状況がひとめでわかるのもよい。左右両側に券売機があり、交通系ICカードの決済が可能。表には「姫川筍と菜の花天そば」なる、なんとも素敵な響きのそばがポスターになっていたが、こちらは春の季節限定メニューと思われる。こちらも捨てがたかったが、もうひとつ写真付きでおすすめされていた「いかげそのかき揚げそば」(420円)をセレクトした。

店内は厨房に向かって、立ち食いカウンターが横いっぱいに広がっている。午前中だったが、先客は3名。その後も一人出ては、また一人と、入れ替わり客足が絶えない人気店の様子。後から入ってきた若いサラリーマン風の男性が、店員さんに「普通のかき揚げってありますか?」と尋ねると「全部いかげそです」との回答。なるほど、自信が窺える。

具沢山のかきあげが食欲をかきたてる

天ぷらはスピード重視、揚げ置きのため、1分足らずでそばは完成。かき揚げ、わかめ、ねぎで覆われた、食欲をそそる丼が目の前に置かれる。かき揚げには、いかげそ・いんげん・玉ねぎ・にんじんと具だくさんで、野菜の甘みをふんだんに味わえる一方、いかげそのコリコリとした食感、いんげんのシャキシャキ感と、歯ざわりも愉しい。ツユはさっぱりと、麺はやわらかめで、癖がなく、揚げ物と一緒にいただくのにちょうどいい。返却口は右手奥で少々不便を感じたが、気の利く店員さんにカウンター越しに下げていただいた。

  • 東急線ホーム内にある蒲田「しぶそば」

昨年の周年にあわせて、50日間毎日しぶそばが食べられる定期券の限定販売や、記念特別メニューの販売など、大々的にイベントが行われたらしい。さすが東急、というところだが、入れ替わりの激しい飲食店で50年は快挙。ぜひ60年、70年と続いていっていただきたい。

筆者プロフィール: 高山 洋介(たかやま ようすけ)

1981年生まれ。三重県出身、東京都在住。同人サークル「ENGELERS」にて、主に銭湯を紹介する同人誌『東京銭湯』『三重銭湯』『尼崎銭湯』などをこれまでに制作。