12月とは思えぬ暖かい日が続いたと思えば、一気に真冬の風が吹き込んできた。こんな日は、温かいそばでホッと気持ちを落ち着けたくなる。今回ご紹介するのは、八丁堀の「そばのスエヒロ」。都営浅草線「宝町」駅から首都高の下をくぐってすぐの角にある。JR「八丁堀」駅や東京メトロ「新富町」駅からのアクセスも良い。

  • 八丁堀「そばのスエヒロ」で、食べ応え十分の「イカつみれそば」を賞味

    「イカつみれそば」(360円)

年季の入った昔ながらの立ち食い店

黄色い庇の下に、紺色ののれん。ガラスの引き戸には日に焼けたメニューが張り出されている。この黄色の目印は「六文そば」の店舗に似ているなと思ったら、ファンの間では「六文そば系」のひとつとして数えられているようだった。時は平日の11時前。半開きの戸から早速中に入る。

正面に厨房とカウンターテーブル。出入り口付近にもカウンターがあり、オールスタンディング形式。相客は2~3人いた。流れるラジオは、ニッポン放送。厨房内には、いかにも熟練といったおじさまが2名。入るやいなや、注文を促される。

メニューは壁にも張り出されており、天ぷらがメイン。いんげんや春菊、なす、ピーマン、いも、ごぼうやソーセージ、いか、あじ、コロッケ……豊富な顔ぶれが揃う。ふと脇に「数量限定」のメニューとして「イカつみれそば」(360円)を見つけたので、これを告げる。代金引換式。

着丼までおよそ30秒。その間に店内を見回してみたが、これがなかなかの年季の入り具合だ。お世辞にも小奇麗にしているとは言えず、正直なところ若い人や女性は抵抗を感じる人もいるかもしれない。と同時に、この店に馴染んでそばをすするのが、どこかひとつ大人になったような気もする、そんな不思議な空間だ。

大振りのトッピングが食べ応えあり

というわけでそばである。真っ黒なツユは、見かけほど塩辛くないことはもう知っている。どちらかといえばダシの旨味が強い風味豊かなツユと言ってもいい。麺は太めでやわらかい。立ち食いそばならではの、いわゆる「もうひとつのそば」である。そして、イカつみれ。食べごたえのあるゴロッと大きいのが2つ。おでんの練り物のような食感と味で、これもなかなか美味い。

  • 都営浅草線「宝町」駅から首都高の下をくぐってすぐの角にある「そばのスエヒロ」

ツユに振りかけたのは刻み唐辛子。これも「六文そば」でお馴染みの薬味だが、少量でも体全体がポカポカする味に大変身する。店を出る頃には体感温度、2度上昇(個人の感想です)。今年の冬も、温かいそばにお世話になろう。

筆者プロフィール: 高山 洋介(たかやま ようすけ)

1981年生まれ。三重県出身、東京都在住。同人サークル「ENGELERS」にて、主に銭湯を紹介する同人誌『東京銭湯』『三重銭湯』『尼崎銭湯』などをこれまでに制作。