音楽制作の必需品! オーディオ・インタフェース

パソコンで音楽制作を行う上で、SONAR X2のほかに絶対に欠かせないのが「オーディオ・インタフェース」です。簡単に言うとパソコンにマイクやギター、楽器の音を入力したり、SONAR X2に録音した音声やソフトウェア・シンセサイザーの音を再生したりするための機器です。パソコンにボーカルやエレキ・ギターのサウンドを録音しようと考えてみてください。パソコンにはミニサイズの音声入力ジャックはあっても、標準サイズの音声入力ジャックはなく、マイクやエレキ・ギターが接続できません。そこでオーディオ・インタフェースが必要になるのです。

一方、ソフトウェア・シンセサイザーだけで曲を作りたい場合はどうでしょうか。パソコンのヘッドホン端子にイヤホンやスピーカーを接続すれば一応音は再生されますので、オーディオ・インタフェースは要らないのでは? とも思えます。いえいえ、そんな場合でも、やはりオーディオ・インタフェースは必要なのです。

ではなぜオーディオ・インタフェースが必要なのでしょうか? もっともわかりやすいのが“音質”です。パソコンのヘッドホン端子にイヤホンを繋いでみるとすぐに分かりますが、「サー」というノイズ音が聞こえた経験はないでしょうか? また、妙に“シャカシャカ”したサウンドが気になったことはないでしょうか? これでは、高機能なソフトウェアを使っていても“宝の持ち腐れ”で、良い音楽を作っても台無しになってしまいます。そこで活用したいのがオーディオ・インタフェースなのです。これらは音楽制作用に作られていますから、音質もバッチリ! いつもパソコンのヘッドホン端子で聴いていた音楽をオーディオ・インタフェース経由で再生すれば、よりクリアなサウンドで出力されます。初めて聴いた瞬間、音の良さにビックリすると思いますよ!

自宅ユースの定番モデルとして、高い人気を誇るRoland QUAD-CAPTURE

また、オーディオ・インタフェースを使う理由に“音の遅れ”を低減するという目的もあります。パソコンへサウンドを録音するとき、またソフトウェア・シンセサイザーをリアルタイムで演奏するとき、再生開始から音が出力されるまでにタイムラグが発生します。これを「レイテンシー」と呼ぶのですが、音楽制作を行う上で大きな問題になります。例えばエレキ・ギターの演奏を録音する場合、ギターの弦を弾いてからワンテンポ遅れて音が聴こえてきたらどうなるでしょうか? おそらく、伴奏に合わせて演奏することはできないはずです。どうしてこのような問題が発生するのか、どうしたら回避できるのかは、今後の連載で詳しく解説していきますが、オーディオ・インタフェースを用いることで大半の問題は改善します。

オーディオ・インタフェースの選び方

さて、ひとくちにオーディオ・インタフェースといってもさまざまな製品が存在します。では、オーディオ・インタフェースを選ぶとき、どれをチョイスすればよいのでしょうか? そのポイントをいくつかまとめてみました。

●入出力
最初のチェックポイントは同時に録音/再生できる楽器の数。例えばボーカルだけ、エレキ・ギターだけ録音したいという場合は、マイクまたはギターどちらか1つだけ接続できればOKです。しかし、弾き語りでボーカルとギターを同時に録音したい場合には、同時に2つの楽器を接続できる入力数が必要になります。もしバンドを組んでいて、バンドの演奏を同時に録音したい場合や、レコーディングでアコースティック・ドラムを録音したい場合は使用する楽器の数、使用するマイクの数だけ入力が必要になります。

●接続端子
入出力数とも関係してくるのが、接続端子です。楽器とオーディオ・インタフェースはケーブルを使って接続するので、楽器のタイプに合わせた端子が付いていることを確認しましょう。

<基本的な接続端子>

XLR端子:主にマイクやプロ仕様の電子楽器との接続に使用。一般的にキャノン端子とも呼ばれる

標準端子:シンセサイザーやギターエフェクトなど一般的な電子楽器との接続に使用。2極(TSフォーン)と3極(TRSフォーン)がある

XLR/TRSコンボジャック:上記2種類がどちらも接続できる端子

RCA端子:主に一般のオーディオ機器や映像機器との接続に使用

光デジタル端子:光タイプの一般オーディオ機器をデジタル接続するための端子。オプティカル端子とも呼ばれる

同軸デジタル端子:主に同軸タイプの一般オーディオ機器や電子楽器とデジタル接続するための端子。コアキシャル端子とも呼ばれる

マイクを使いたい場合は「マイク・プリアンプ」を搭載しているかも要チェック。マイクの信号は非常に小さいので、録音するときにアンプで増幅する必要があります。このマイク専用の増幅回路をマイク・プリアンプと言います。このマイク・プリアンプが搭載されたモデルを選びましょう。ちなみにローランドのオーディオ・インタフェースには「VS PREAMP(ぶいえす・ぷりあんぷ)」という高音質なマイク・プリアンプを搭載したモデルも多いので、それらのモデルを選べば“さらに良い音”でマイク録音ができます。

●録音フォーマット
オーディオ・インタフェースが録音/再生できるフォーマットを表しているのが「サンプリング周波数」と「量子化ビット数」という数値です。少し難しい用語なので詳しくみていきましょう。サンプリング周波数は、アナログ音声をデジタル化するときに1秒間に何回の処理を行うかを表しています。回数が増えるほど元のアナログ波形に近い、つまり高精度なデジタル・データを得ることができます。身近な例だとオーディオCD のサンプリング周波数は44.1kHz。これは「1 秒間に44,100 回の検出を行う」ということを表しています。

サンプリング周波数で検出したデータの音量差を表すのが量子化ビット数です。こちらも数値が高くなるほど元の音に近い信号が得られるのですが、具体的にどのくらいの音量変化を表現できるのでしょうか? 例えばCD。CD のビット・レートは16bitで、これを分かりやすい数字に変換すると2 の16 乗、つまり一番小さい音と大きな音の音量差に65,536 段階もの変化を付けられるということなのです。つまり、どちらも数値が高くなるにつれて高音質になっていくということ。ローランドのオーディオ・インタフェースはどれもCD 以上の音質で録音できます。近年の音楽制作現場では24bit/48kHz や24bit/96kHz が常識となってきています。また最近では24bit/192kHz で録音されることも増えてきており、ローランドのオーディオ・インタフェースならそれらのフォーマットでも対応することができます。

以上を踏まえた上で、オススメのオーディオ・インタフェースと、簡単な比較表を紹介します。

                                                                                                                                    
STUDIO-CAPTURE QUAD-CAPTURE DUO-CAPTURE-EX
こんな人にオススメバンドの一発録りや複数のマイクを使った録音、音質に妥協したくない人自宅でも、気軽にスタジオ・クオリティのサウンドで録音したい人iPadを使った録音やモバイル環境、手軽に始めたい人
信号処理AD/DA変換:24ビット
サンプリング周波数44.1/48/96/192kHz
※DIGITAL(IN/OUT)は44.1/48/96kHz
44.1/48kHz
録音/再生チャンネル16イン/10アウト
※192kHz時は
8イン/4アウト
4イン/4アウト
※192kHz時は
2イン/2アウト
2イン/2アウト
MIDI端子入力:1、出力:1
マイク・プリアンプVS PREAMP 12系統VS PREAMP 2系統
音量レベルの自動適正化AUTO-SENS
低レイテンシー・テクノロジーVS STREAMING
iPad対応
(camera connection kitが必要)

ローランドからは、これ以外にも多彩なモデルがリリースされています。目的別に自分に合ったオーディオ・インタフェースを見つけられるウェブページがありますので、ぜひチェックしてみてください。

キーボードが弾けない人でも持っておこう! MIDI キーボード・コントローラー

次に揃えておきたいのが「MIDI キーボード・コントローラー」です。ソフトウェア・シンセサイザーをリアルタイムで演奏したり、SONAR X2 にフレーズ(MIDI※データ)を入力するための専用キーボードです。「ピアノは弾けないから関係ないやっ」なんて思った方も多いのではないでしょうか? でもそれは大間違い! 打ち込みするのに鍵盤の演奏技術は要らないのでご安心を。詳しい打ち込み方法については、今後ご紹介していきますが、MIDI キーボードを持っていない場合、音(MIDIデータ)を1つ1つマウスで入力しなくてはならないので、非常に面倒です。例えば「ド」「ミ」「ソ」という3つの音を打ち込む場合、マウスなら最低3 回のクリックが必要になるのですが、MIDI キーボードならば3つの鍵盤を同時に押すだけでOK。ピアニストのように流れるような打鍵をする必要はありません。(※MIDI:Musical Instrument Digital Interface の略。電子楽器をコントロールするための信号の総称)

なお、シンセサイザーのような鍵盤楽器に見えますが、MIDI キーボード・コントローラー自体は音源が入っていないため、これ単体だけでは音が出ません。またMIDI キーボードには、複数のツマミやスライダーがついています。難解そうにみえるかもしれませんが、このボタンやツマミは、SONAR X2をマウスなしでコントロールできる“リモコン”のようなものと思ってください。曲の録音/再生、ミキサーの音量を変更する……といった操作が手元で行えるのです。もちろんマウスで操作することもできますが、マウスの場合は一度に1つの操作しかできません。その点、ボタンやツマミは指先で実際に操作できるのでストレスもありません。MIDI キーボード・コントローラーは、ピアノが弾ける人の機材ではなく、曲作りをよりスムーズに、より快適なDAW ライフを提供してくれるアイテムなのです。

Roland A-300PRO。SONAR X2 のリモコンとして使えば、音楽制作がさらに快適になる

MIDI キーボード・コントローラーの選び方

●演奏性と鍵盤数
やはり鍵盤型のアイテムですから、一番優先したいのはキーボードの“演奏感”。できるだけしっかりとしたタッチのモデルを選びましょう。鍵盤が弾けない人にとって、演奏性と言われてもピンとこないかもしれませんが、タッチの軽いキーボードでは細かいニュアンスが出せません。例えば弱い音を入力するとき、自分では軽く打鍵したつもりでも、鍵盤が奥まで沈んでしまい大きい音として入力されてしまいます。それをマウスで修正すると2 度手間になってしまいますよね? その点、シンセサイザー・メーカーであるローランドのMIDI キーボード・コントローラーは、演奏性を追求したこだわりの鍵盤を搭載しています。鍵盤楽器に馴染みのない人にはタッチが“重い”と感じるかもしれませんが、そのくらいでないと表情豊かな打ち込みは行えないのです。また、鍵盤数についてもバリエーションがあります。両手でしっかり弾きたい人は61鍵や88鍵、ちょっとした打ち込みや設置場所に制限がある人は32鍵や49鍵モデルを選ぶとよいでしょう。

                                                   
A-49 A-PRO Series
こんな人にオススメコンパクトでもしっかりとした演奏感で打ち込みたい人打ち込みだけでなく、コントローラーでSONAR X2をより快適に使いたい人
鍵盤数49鍵32鍵(A-300 PRO)
49鍵(A-500 PRO)
61鍵(A-800 PRO)
コントローラーボタン=S1、S2(アサイナブル)
つまみ=C1、C2(アサイナブル)
フット・ペダル=ホールド
エクスプレッション
ピッチ・ベンド/モジュレーション・レバー
Dビーム・コントローラー
パッド(A1-A8)
ボタン(L-L9、B1-B4)
つまみ(R1-F9)
スライダー(S1-S9)
フット・ペダル(P1、P2)
ベンダー・レバー(BEND、MOD)
鍵盤アフタータッチ(AFTERTOUCH)
バリュー・エンコーダーつまみ

●コントローラー機能
前述した“リモコン”の部分に当たるのがコントローラー機能で、ツマミやスライダーの数によって選べます。コントローラーを複数搭載したモデルを選べば、SONAR X2 やソフトウェア・シンセサイザー、プラグイン・エフェクターのパラメーターを手元で瞬時にコントロールすることができます。

音楽制作用のヘッドホンを用意しよう!

オーディオ・インタフェースから出力される音を聴くためにはスピーカーやヘッドホンが必要です。一般的なオーディオ・スピーカーやイヤホンがあればよいのでは、と考える方も多いと思いますが、本格的にやるなら音楽制作用に作られた製品がオススメです。というのも、リスニング用に作られた一般的な製品の場合、曲をカッコよく聴かせるために音を脚色しているケースがあるのです。音がカッコよくなることの何が悪いの? なんて声が聞こえてきそうですが、音楽を作る上で録音された音を正確に聴くことは非常に大切です。

例えば、低域が響くヘッドホンで曲を作ったとしましょう。もちろん曲を作っている最中は低域が強調され、思い通りの迫力を持った仕上がりになったと感じます。ところが、その曲を友人に聴かせた場合、話は変わってきます。友人のヘッドホンが低域再生能力に乏しいものだったら……。自分が意図したのとはまったく別の、低域がスカスカな曲になってしまうのです。極端な例ですが、音を聴く環境は人それぞれですからこのようなことは十分に考えられます。どんな環境で聴いても音の変化が少ない曲を制作するためには、正確な音を再生するスピーカーやヘッドホンが必要となるのです。

電子楽器に最適な、高音質ヘッドホンRoland RH-300

ウーファーがセットになった2.1ch システムで、迫力の重低音から繊細な高域までをありのままに再生してくれるRoland CM-110

今月はSONAR X2 と組み合わせて使いたい周辺機器を紹介しました。パソコンとSONAR X2 のソフトだけでも音楽は作れますが、より快適でクオリティーの高い楽曲を作るために、組み合わせて使う周辺機器にもこだわりましょう!

事前準備編は今回で終了。次回から実際にSONAR X2 を使って音楽を作る具体的な作業を紹介します。まずはソフトウェア・シンセサイザーの使い方や、打ち込み方法から解説していきますので、お楽しみに!