ソニーが開発した“着るエアコン”「REON POCKET(レオン ポケット)」をご存じでしょうか。このたびソニーグループが最新のREON POCKETをベースに、女性の健康を見守るサブスクリプション型のコネクテッドサービス「REON WIZ(レオン ウィズ)」を2月10日に開始ししました。
欧米では最先端のスマートテクノロジーや、これに基づいて獲得した知見をデバイスやサービスとして形にして提供する「Femtech(フェムテック)」が注目されています。REON WIZはソニーが新しく展開するフェムテックのサービスブランドです。その内容を詳しく解説しましょう。
ベースは着るエアコン「REON POCKET」の最新モデル
REON POCKETは専用のウェアやネックバンドを使って身体に密着させて、手軽に冷感・温感が得られるウェアラブルデバイスです。その利便性をわかりやすく伝えるために筆者はよく「着るエアコン」に例えたりもしますが、冷感・温感は空気によって作り出すのではなく、ポケットサイズのウェアラブルデバイスに組み込んだペルチェ素子に電圧をかけて、REON POCKETが接触している肌を冷やしたり、温めたりする仕組み(ペルチェ素子に電圧をかけると、ペルチェ素子の片方から片方へと熱が移動します)。
2022年4月に発売された最新モデルのREON POCKET 3は、iOS・Android対応のモバイルアプリを使って冷温感を手動で切り換えるだけでなく、センサーを活用して人間が心地よく感じる30℃前後に冷感を自動で保つ「SMART COOL MODE」を新搭載しました。
専用のネックバンドを使えば性別を問わず誰でも快適に装着して使えることから、徐々にREON POCKETユーザーが拡大しています。最新モデルの体験レポート『夏が来た! ソニー「REON POCKET」で賢く涼む&節電する』も合わせてご覧ください。
女性の健康を先端テクノロジーで支援する「REON WIZ」
REON WIZには専用のデバイス「RNP-3F」があります。デザインや機能の基本はREON POCKET 3と同じですが、40歳後半〜50歳台前半の女性をメインターゲットにした専用サービス向けに最適化しているところが大きく違います。
このREON WIZが目的とするのは、日常生活の中で突然起こる首もとのほてりや発汗を緩和すること。REON POCKETには肌の温度を計るセンサーのほか、複数のセンサーが内蔵されています。それぞれが連携しながら、ユーザーが心地よく感じる肌温度へと自動調整するわけです。SMART COOL MODEのテクノロジーをREON WIZのサービスに応用したカタチですね。
REON WIZは、端末料金と最大6カ月分のサービスをセットとして、初期費用は4,800円で提供されます。月額サービス利用料金は770円。使い方サポートや故障のケアなども、月額料金に含まれます。
7カ月目以降は1カ月ごとに利用料金がかかります。7カ月目以降もサービスの解約は自由ですが、解約後は専用アプリが使えなくなることから、実質としてデバイスも使用不可となります。
デバイスは専用ネックバンドとセットでユーザーに提供されます。通常版のREON POCKETはホワイトですが、REON WIZの専用機は、本体とバンドのカラーリングを肌なじみのよい落ち着いたベージュとしています。本体表側のパネルは指紋が付着しにくいマットコーティングです。
ネックバンドは一般的な女性の首まわりの寸法に合わせて、REON POCKET専用のネックバンドよりも開き角度を少し狭くしています。シリコン製のバンドは通常モデルのネックバンドよりも少し柔らかく、曲げが効くように設計されているので、あまりキツく感じられることはないと思います。
タートルネックのニットなど、襟が少し高めの服を着ているときもデバイスの冷却効果が落ちないよう、ファンの排気を襟の外側に逃がすエアフローパーツが付属します。ネックバンドのトップ側に装着して、排気経路を長く伸ばすような使い方です。
本体の大きさと重さは、REON POCKET 3から大きく変わっていません。通勤時のほか、オフィスや自宅で過ごす数時間のあいだ「着けっぱなし」でも疲れにくいサイズ感という印象です。
ユーザーが心地よく感じる温度設定をキメ細かく
デバイスは専用のモバイルアプリと連係しながら、クラウドプラットフォームにユーザーに固有のプロファイルを作ります。ユーザーはアプリを通じて、デバイスが肌に接触している部分の「温度の感覚」を3段階(冷たすぎる・ちょうど良い・温かい)から評価。一定期間のあいだ(1週間程度)にフィードバックを返すと、ユーザーが心地よく感じる温度プロファイルが作られる仕組みです。
REON POCKETシリーズのソフトウェア開発を担当するソニーの伊藤陽一氏に、REON WIZのプロファイル調整の仕組みを聞きました。
「首もとのほてりや発汗を抑えるため、REON WIZの場合は通常のREON POCKETよりも細かく、デバイスが肌に触れる接触面の冷感コントロールを0.25度単位で微調整する必要がありました。室内外を問わずユーザーがいつも快適な使い心地を得られるように、パーソナライゼーションの仕組みを発展させています」(伊藤氏)
ユーザーのフィードバックはまず、Bluetoothでスマホとつながっているデバイスの設定温度へとすばやく反映され、その後はスマホからクラウドに反映されます。
ユーザーの利用状況もクラウド上で管理されます。例えば、直射日光にさらされる環境下ではデバイスの冷却効果が正しく発揮されないので、アプリを通して「日傘の利用」や「白など淡色系の服を着ること」といったアドバイスを送ります。
このような正しい使い方のナビゲーションについて、ソニーの伊藤氏は「あらかじめユーザーの使い方を想定して、固定されたアドバイスのメッセージをいくつか、アプリに組み込んでいます。イレギュラーなケースの場合もサポートできるよう、動的なメッセージを作成してユーザーに届ける仕組みも整えているところです」としています。
REON WIZのデバイスは、ユーザーの体温が変化しやすい日中の時間帯に使うことを想定して、内蔵バッテリーで6〜8時間の連続駆動ができるように設計されています。往復の通勤時間を中心に使う場合は、日中の充電は不要かもしれません。または、オフィスなどで急速充電機能を活用してチャージするとよいでしょう。
なお、REON WIZは家電量販店やソニーストアでは取り扱いがなく、専用のWebサイトから申し込みます。REON POCKETの開発チームが、そしてソニーが新しい領域に挑戦するサービスですが、ウェルネス・ヘルスケアのサービスを提供する他業種とのコラボレーションにも拡大しながら、必要とする多くのユーザーに届くことを期待しています。