一人暮らしの理由はいろいろです。仕事や就学で親元から離れるケース、単身赴任などのケース、配偶者との死別や離別など様々です。独身でも、結婚せずに親元でパラサイトシングル生活をなんとも思わない人もいれば、親との暮らしが煩わしくなり、一人暮らしをしたいと考えている人もいるでしょう。
結婚年齢が高くなり、結婚しないまま独身を続ける人の比率も高くなっています。結婚を希望するにしても、しないにしても独身生活が長くなることに対するリスクを知り、それに備えておくことが大切です。結婚してもそれは無駄にならず、人生の様々なリスクに役立つはずです。
誰もが可能性がある生涯独身生活
下記のグラフは平成28年の統計局の人口動態統計月報年計の概況の中のグラフを抜粋したものです。婚婚姻年齢が高くなっているばかりでなく、そのまま独身継続となるのか、婚姻率も低くなっています。同時に離婚率もここ10年は減少しているものの、以前と比較すれば急上昇しています。経済が活性していれば、離婚率はもっと上昇していたのではないかと思います。
一旦結婚しても独身に戻る可能性もあるのです。離婚率は結婚年数が浅い方がやはり高くなりますので、初婚年齢が高く、その後離婚すると考えた場合、再び相手を探して子供をもうけるとなると、特に女性の場合は時間的余裕がないことになります。
平成28年人口動態統計月報年計(概数)の概況より
独身だと何が問題?
ひとつは結婚していれば二人の目でチェックできますが、健康管理などは自分でだけで管理しなければなりません。病気になって寝込んでいても一人であれば、食事の用意も必要です。しばらく寝込むようであれば、家政婦を派遣してもらわなければならないでしょう。具合の悪い時だけでなく日々の食生活も独身だとルーズになりがちです。入院するにも保証人が必要なことが多く、年を取れば親もいなくなります。健康管理だけでも、いろいろ不具合が考えられるのです。それを補うのがお金です。扶養家族がいない分、余裕があるはずですので、その分はしっかり蓄えておかないと、独身リスクに対応できなくなりかねません。人一倍資産形成が大切になるのです。
気楽な分、のほほんとしていたら年とともに次第に不自由になりかねません。今時、子供に老後を託す親はいないと思いますが、困ったときに一時的にでも頼れる人がいることは大きな保険のようなものです。独身者はリスク回避の手段が少なくなる分、人一倍人生設計をしっかり立てて、資産形成に努めていく必要があるのです。節約や貯蓄、保険、年金などのほか、地域とのつながりなども大切です。
誰でも生涯独身になりえること、そのためには独身であるが故のリスクをよく理解することが大切なこと、そのために十分な対策が必要なここと、そしてその準備は結婚しても十分に役立つことが今回のシリーズのテーマです。
よく考えれば、ファイナンシャルプランニングはライフプランシートに始まってライフプランシートに終わると言われるくらい生涯収支の設計が大切であるのですが、それは人生の過程で発生する様々なリスクを早く察知して早くに対策を立てることを目的としています。病気やケガ、子供の教育、老後の生活、災害やリストラなど、人生には様々な不安要素(リスク)があります。いつ頃どんなリスクがあるのかを早くから理解し、早くから対策を行使せることによって、安心して人生を楽しむことができます。独身のリスクもそのひとつです。
■ 筆者プロフィール: 佐藤章子
一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。