副業元年と言われた昨年から、さまざまな副業が注目されているが、実際には副業をしたくても、何をどうすればいいのか分からないという人が多いのが現状だ。そこでオススメなのが「自分の得意なことを仕事にしてしまう」というパターン。この連載では、これまで起業の相談に応じてきたクライアントの中から、スキマ時間とこれまでの経験をいかし、自分の得意なことで収入を生み出している人を紹介していく。
第30回となる今回ご紹介するのは、元イベント・ブライダルのMC、その後、副業で始めた編み物教室をとうとう本業にしてしまった花村きみよさん(50代)。
お子さんが生まれてから小学校に上がるまで、趣味の編み物でも収入を得たいと考え、空きスペースとなっていたお父さんの町工場を「子連れで楽しめるレンタルスペース」として教室をスタート。その間、年に2回はハンドメイド作品の販売会も開き、「行列のできる手作り販売会」として取材を受けたことも。その後、お子さんの小学校入学を機に、不規則な本業を続けることが困難となったため、家族と家庭を大切にしながらできるハンドメイドの仕事をメインにしてこられたという。
バランスのコツは頑張りすぎないこと
今では、編み物教室の先生としてだけでなく、自身も編み物作家として、さらにはレンタルスペースの運営、そして、ほかの作家志望者や講師志望者に向けたコンサルティングに至るまで、活動の幅は広く、収入も前職を超えているという。
それでもスタート当初は苦労が絶えず、「子育てや親の介護、すべてにおいて完璧を目指し、その上仕事でも成果を出したいと思っていました。すべて100点を目指していた姿勢が苦しさを増したのかなぁと感じています」という花村さん。
その後も、収入に見合わない仕事であっても、その収入を手放すことに不安を感じ、時間的にも体力的にも効率無視の働き方をしてしまっていたそうで、大病も経験。「自分が頑張ればなんとかなる」と思いすぎていたことは反省点だとか。
今では
・休みの予定を必ず入れる
・ひとりで頑張りすぎない
・家族を頼る、上手くお願いする
・完璧を目指しすぎない
といった工夫をすることで、バランスを取っているのだそうだ。
生徒さんの笑顔がエネルギーに
そうした中、ここまで続けられた要因として、「毎日忙しく暮らしている人たちが、レッスン時に楽しそうな笑顔を見せてくださること」が支えになっているという。
「生徒さんたちが、『この時間があるからこそ毎日頑張れます!』『きみよさんから習いたい』と言ってくださることや、アドバイスによって成果を出していただけること、さらには私のような生き方をしたいと言っていただけたりすることは、何より嬉しいですね」
なお、花村さんが成果を出すために普段心がけていることとして、
「『ハンドメイド』という、生活になくても困らないものを、いかに欲しいと思っていただけるか、どうすれば長く継続して楽しんでいただけるか考える」
「既に成功している人から学び、実践すること」
「目標設定(遠い未来と近い未来)と時間管理を大切にする」
「望まれるコンテンツを提供するために、お客様に積極的にお話を聞く」
「参加者さまに楽しんでいただくのはもちろん、自分自身も楽しみながら活動する」
などを挙げてくれたが、そうした思考と行動が、今の成功につながっているのは間違いない。特に筆者が注目するのは、お客様に喜ばれることを意識されている点だ。
これから活躍する女性たちのために
そんな花村さんに今後の展望を聞いてみた。
「これからも、わかりやすく楽しいレッスンで、編み物の技術だけでなくリラックスとリフレッシュできる時間と空間を提供し、忙しい毎日に元気を与える編み物レッスンを続けていきたいです。また、自分の経験を生かして、これから活動していく方々……娘も含めて、これからを生きていく女性たちが、家庭も大切にしつつ、より自分らしく幸せに活動できるためのお手伝いや、そうしたことが当たり前となる社会の一端を担いたいと思います」
その若さとバイタリティから、来年60歳を迎えるようには見えない花村さん。「『きみよさんみたいな60歳になりたい!』と言ってもらえるようにがんばりまーす」と言ってのける姿を見ていると、本当にそんな社会を作ってしまう日も、そう遠くなさそうだ。
執筆者プロフィール:戸田充広
趣味起業コンサルタント。全日本趣味起業協会代表理事。
趣味起業のパイオニアとしてこれまで300名以上の趣味起業家を育て、現在は全国でのセミナー、講演活動のほか、数々の講座でさらに趣味起業家を育て続けている。著書に『稼げる! 自分に合った副業が必ず見つかる! 副業図鑑』(総合法令出版)、『決定版! 趣味起業の教科書』(マガジンランド)、『消費税率アップから家計を守る! サラリーマンのための安全「副業」のススメ』(すばる舎)などがある。「全日本趣味起業協会」