副業元年と言われた昨年から、さまざまな副業が注目されているが、実際には副業をしたくても、何をどうすればいいのか分からないという人が多いのが現状だ。そこでオススメなのが「自分の得意なことを仕事にしてしまう」というパターン。この連載では、これまで起業の相談に応じてきたクライアントの中から、スキマ時間とこれまでの経験をいかし、自分の得意なことで収入を生み出している人を紹介していく。

第22回となる今回紹介するのは、会社勤め時代、育休明けから子ども服のハンドメイドを始め、やがてはお店を持つまでに至った大橋理恵さん(40代)だ。

  • 入園グッズ作りをきっかけに子ども服作りを開始! 今では店舗を持つまでに

    子ども服のハンドメイド製作のかたわら雑貨店も営む大橋理恵さん(40代)

大橋さんはもともと、裁縫が好きとかそういう趣味があったわけではない。子どもの保育園入園をきっかけに、学生時代の家庭科でミシンを触って以来、久しぶりに裁縫を始めることになったのだそうだ。

入園グッズの手作りからスタート

「入園グッズの作り方をネットで調べているうちに、子ども服作りにたどり着き、私も作ってみたい! と思うようになったことが始まりです。最初は自分の子どものために作っていたのですが、お友達やお世話になった方へプレゼントするととても喜ばれ、大切に長く着てくださったのです。私自身も、上質な生地で丁寧に縫製したお洋服は、お洗濯を繰り返しても長持ちすることを実感していましたので、そんなハンドメイドのお洋服の良さを一人でも多くの方に知って欲しいと思い、フルタイムで仕事をするかたわら、作家活動を始めました」

  • 入園グッズ作りをきっかけに子ども服作りを開始! 今では店舗を持つまでに

    入園グッズ作りから始まった子ども服作りは、今では店舗を構えるほどに

今では、子ども服の作家として活動しながらハンドメイド雑貨店も営む大橋さんだが、作家活動だけの収入でも月に10万円は越えるという。

知人や友人に手作りの子ども服をプレゼントすると喜ばれることは分かるが、そこからいかにして作家としての売り上げを積み重ねていったのだろうか。

委託販売先で売れるコツ

「会社勤めをしていた頃は、県外のお店に委託販売をしていました。でも委託作家を募集しているお店は多数あるものの、長くお付き合いできる委託先を探すのは意外と簡単ではありませんでした。というのも、自分の作品の雰囲気に合うお店、そしてオーナーさんとの相性がとても大切なのです」

しかし実際のところ、どれだけ委託販売先を開拓して作品を置かせてもらったとしても、そう簡単には売れないのが現実。筆者も、数々のハンドメイド作家が委託販売で苦労しているのを見てきた。大橋さんはそこにどんな工夫をしてきたのだろうか。

「そうですね、委託先のオーナーさんと積極的にコミュニケーションをとるようにして、お店側の需要などを聞いては、可能な限り対応するようにしました。また作品に取り付けるタグに、ブログのURLやメールアドレスを記載し、購入されたお客様と直接繋がれるようにしました」

お店によって客層も違えば需要も違う。そこをしっかり掴んで対応することで、売り上げを伸ばす。これができている作家はなかなか少ないので、少し頑張れば委託先でも目立つ存在になれるだろうし、オーナーもお客様へオススメしてくれやすくなるだろう。

作家活動と販売計画のバランスが大切

「でも一時期、委託先を増やしすぎて納品がままならなかった時期があり、そこは反省です。委託販売をやめて店舗を構えた今でも、衣類は季節によってアイテムが変わるため、計画的に作らないと販売時期を逃してしまうことがあります。また、子ども服は大きめサイズをオーダーしてくださることが多いのですが、納期が遅れてサイズアウトなんてことがないように、計画的にオーダー数を設けなければいけないと思っています」

ハンドメイド作家であれば誰もが経験するであろう「作る時間」と「完成のタイミング」、オーダー数とのバランスの難しさなどを、大橋さんは経験を積むことで着実にクリアしていったそうだ。それにしても気になるのは、育児や本業と掛け持ちで作家活動をしていた駆け出しの頃、製作時間をどのように取っていたのかということだ。

「育休明けと同時に作家活動を始めたのですが、当時娘は11カ月。最初は、子どもを寝かしつけてからミシンの時間を確保するという方法をとっていたのですが、そのまま自分も寝てしまうことが多かったので、夜は子どもと一緒に本気で寝てしまおう! と決め、朝早起きして時間を確保していました」

  • 入園グッズ作りをきっかけに子ども服作りを開始! 今では店舗を持つまでに

    育児・本業・作家活動のバランスをとるにはメリハリが大切

ハンドメイドは作品でなく作家の個性を売る

そんな大変な時期を乗り越えてきた大橋さんに、やりがいや今後の展望を聞いてみた。

「手作りした子ども服を、こちら側が思う以上に大切に着ていただけることにとても幸せを感じます。卒園記念撮影の時に着てくださったり、家族旅行の時に着てくださったり。お洗濯も必ず手洗いしています! とか、私以上に私の作ったお洋服を大切にしてくださるお客様がいることに喜びを感じます。そうして2015年に実店舗を構え、今では県内外のハンドメイド作家さんの作品をお預かりする立場になりました。作品だけでなく、それぞれの作家さんの『想い』や『人』を伝えられる売り方をしていきたいなと思います」

作家の個性が「売りもの」と言ってもよいのがハンドメイドの世界。それを自ら実践し、そして自分のお店を通してそれを広めてゆく大橋さんの、ますますの活躍が楽しみだ。

筆者プロフィール: 戸田充広

趣味起業コンサルタント。全日本趣味起業協会代表理事。
趣味起業のパイオニアとしてこれまで300名以上の趣味起業家を育て、現在は全国でのセミナー、講演活動のほか、数々の講座でさらに趣味起業家を育て続けている。著書に『稼げる! 自分に合った副業が必ず見つかる! 副業図鑑』(総合法令出版)、『決定版! 趣味起業の教科書』(マガジンランド)、『消費税率アップから家計を守る! サラリーマンのための安全「副業」のススメ』(すばる舎)などがある。「全日本趣味起業協会