2018年は副業元年と言われているが、実際には副業をしたくても、何をどうすればいいのか分からないという人が多い。そこでオススメなのが「自分の得意なことを仕事にしてしまう」というパターン。この連載では、これまで起業の相談に応じてきたクライアントの中から、スキマ時間とこれまでの経験を活かし、自分の得意なことでそこそこの収入を生み出している人を紹介していく。
第16回となる今回紹介するのは、利酒師として活動されている会社員、瀧村健治さん(56歳)だ。現在、酒類の卸売会社に勤務しながら、個人では日本酒の地位向上のために新たな仕組みづくりに取り組んでいる。
きっかけは、市場に出回っている日本酒がひどい扱いを受けているのを目の当たりにしたこと。料亭やコンビニの棚など、日本酒が平気で光の当たる場所に陳列されていたり、中には変色してしまった物がそのまま売られていたりしている現状を目撃。何とかしなければ、と感じたのだそうだ。
日本酒に関わるすべての方に喜んでもらうことから
具体的な活動として、まず利酒師の資格を取得、その後選手権大会で日本一の称号を獲得した。それを引っ提げて、料亭などとコラボレーションし、日本酒と日本酒に合う料理を楽しむ会などを開催してきた。
地道ながらもそうした場を通して、日本酒の本当の楽しみ方や、保存方法などをレクチャーすることで日本酒の正しい知識を持ったファンを増やし、さらに理解を深めてもらおうというのである。
筆者も2度ほど参加したが、舌鼓を打つ料理があり、美味しい日本酒があり、その場でミニ講座があり、クイズもあり、しまいには抽選で、お酒の銘柄が入った前掛けのプレゼントまであるという、もはやエンターテインメントな催しとなっていた。
また、参加者が楽しめるほかにも、料亭側は参加者に味を知ってもらうきっかけになり、酒造メーカー側はお酒の本当の良さを知ってもらうことができ、ひいてはそれが日本酒の地位向上につながっていくという、何方も良しのイベントだ。
日本酒の良さを再認識してほしい
そして瀧村さんのすごいところは、これが国内だけで終わらないことである。ハワイの日本料理店ともコラボレーションを行い、現地でも同じようにイベントを開催しているのだ。
瀧村さんをそこまで駆り立てるのは何なのかを聞いてみた。
「日本酒の地位向上はもちろんのことですが、現在日本酒の蔵元は約1,000蔵あると言われており、有名な蔵のお酒以外にも、あまり知られてない素晴らしいお酒が沢山あります。製造技術はすごいのに営業はまったくの素人。私は、そんな蔵元をもっと世に送り出したいと思っているのです。また、ワインのようなテイストの日本酒や、お肉によく合う酸の高いお酒、最近では甘くないスパークリングなども開発され、日本酒もますます幅広くなってきています。日本酒の可能性は無限大で、海外の人からも高く評価されていることを知ってほしいですね! 」
「日本酒鑑定士」とは?
こうした瀧村さんのプロジェクトは、すでに次の段階に入っている。日本酒の味や香りはもちろん、その製造方法、最適な保管方法、どんな料理と合わせると良いかまで、すべての知識を併せ持つ「日本酒鑑定士」資格の新設である。
この知識を、一般の人はもとより、料亭や酒販業界など、お酒に関わる多くの人に伝えることで、一気に日本酒の正しい楽しみ方を広げようというのである。すでにテスト講座は開講済みで、日本酒鑑定士資格の認定証もできている。
また、瀧村さんのインスタグラム(@umaisake.takimura)もすでにフォロワー数が3,000を超え、「いいね! 」も500~1,000を超えるなど、WEBでの発信にも力を入れている。
来年2月からはインターネットラジオのパーソナリティとしても活動を開始することが決まっていて、そこでも日本酒の魅力を語っていくという。
人を喜ばせることが収入につながる
現在、副業としての収入は、イベント開催時にほんの少しあるかどうかだが、いよいよスタートする「日本酒鑑定士」の講座では、月に50万を超える予想だ。
そんな瀧村さんに、今後の展望を聞いてみた。
「2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催で、外国の方も多数訪日されます。当然日本酒に触れる機会も多くなるでしょう。日本酒を通じて、その土地その土地の文化や風土を味わってほしいですね。また、この日本酒鑑定士の資格を通して日本酒に携わる方々、お米作りの農家さんから消費者まで、すべての方が笑顔になれるよう、日本の文化を守りたいと思っています。そして、資格講座に関しては日本だけでなく、世界中の日本酒を扱う飲食店へと展開予定です」
瀧村さんの夢は尽きないが、行動力のある人だけに、すべてを実現してしまうように思えてならないし、実際そうなる日も近いと、筆者は感じている。
筆者プロフィール: 戸田充広
趣味起業コンサルタント。全日本趣味起業協会代表理事。
趣味起業のパイオニアとしてこれまで300名以上の趣味起業家を育て、現在は全国でのセミナー、講演活動のほか、数々の講座でさらに趣味起業家を育て続けている。著書に『稼げる! 自分に合った副業が必ず見つかる! 副業図鑑』(総合法令出版)、『決定版! 趣味起業の教科書』(マガジンランド)、『消費税率アップから家計を守る! サラリーマンのための安全「副業」のススメ』(すばる舎)などがある。「全日本趣味起業協会」