経済キャスターの鈴木ともみです。連載『経済キャスターが惚れた、"珠玉"の一冊』では、私が読んで"これは"と思った、経済・投資・お金に関連する書籍を、著者の方へのインタビューなども交えながら、紹介しています。第3回の今回は、丸山晴美さんの著書『節約の作法~年100万円必ず貯める55の知恵』(ソフトバンク新書)を紹介します。

丸山晴美さんプロフィール

外国語の専門学校を卒業後、旅行会社、フリーター、会社員、コンビニ店長へと転職。22歳で節約に目覚め、年収が350万円に満たないころ、1年で200万円を貯める。26歳でマンションを購入。2001年に節約アドバイザ―として独立。ファイナンシャルプランナー、消費生活アドバイザーの資格を取得し、お金の管理、運用のアドバイスなどを手掛け、TV、雑誌などで幅広く活躍している。

所得の増えない昨今、「まずは年100万円を貯金する」

『節約の作法~年100万円必ず貯める55の知恵』(ソフトバンク新書(定価730円+税))

米国のニューヨークタイムズ誌が、『SETSUDEN』(節電)を社説の題材に選ぶほど、日本で行われた今夏の節電は、世界でも注目を集め、評価されたようです。企業はもちろん、私たち一人一人の意志と努力と行動力で、なんとか暑い夏を乗り切り、やっと冷房のいらない過ごしやすい季節が到来しました。と思いきや……すでに冬将軍が待ち構えている様子。今のうちに暖房の上手な節電方法を心得ておきたいものです。

そうした中、今回ご紹介する一冊は、節約アドバイザ―の丸山晴美さんが書かれた『節約の作法』です。本書には55の「節約の作法(知恵)」が記されています。節電に関して言えば、「作法44」に節電の具体的な方法が、「作法45」に冬の暖房効率の高め方がまとめられています。

これらは、今すぐ実践できる「節約(=節電)の知恵」ですので、まず最初にお読みいただきたい箇所です。もちろん本書の狙いは、節電だけではありません。基本テーマは、なかなか所得の増えない昨今、無駄を省き節約することで、「まずは年100万円を貯金する」。そして、貯めたお金で目標や夢を達成させるというところにあります。つまり、「節約しながら豊かな人生を送りましょう!」ということをテーマにしているのです。

「節約=ケチ」ではない

実は私、正直なところ「節約」という言葉にあまりポジティブなイメージを持っていませんでした。どうしても「節約=ケチ」という印象があり、「あれもダメ」「これもダメ」といった形で、いろいろなことをあきらめて、日々の生活が味気ないつまらないものになってしまう…そう思っていました。ですが、本書の「作法13・14・15」を読み、「節約=ケチ」ではないことを教えられました。

節約は他人に不快感を与えてはなりません。 よく節約とケチを同義語として使う方がいますが、他人に不快感を与えるような節約は、節約ではなく「ケチ」なのです。(「作法13」より抜粋)
節約は無駄を省くこと、ケチはやみくもに出費を惜しむこと。節約とケチは全く異なるもの。(「作法14」より抜粋)
貧乏である理由の一つは、「お金にだらしない」ことです。収入以上に使ってしまう。一方、私はこれまで仕事の縁で、さまざまなお金持ちに出会ってきました。その経験からしても、成金ではない本当のお金持ちは、質素な生活を送っています。資産が数億円はあろうかというお金持ちこそ節約しています。お金の大切さを知り無駄遣いをせず、しかし使うべきところではきちんと使います。この基本がお金を生む良い循環となるのでしょう。(「作法15」より抜粋)

上記の内容について、取材に応じてくれた著者の丸山さんは、自身の経験をもとに、こう解説してくれました。

「私が節約アドバイザーとして活動し始めた理由の一つは、多くの皆さんに『節約=ケチ』ではなく、『節約=楽しい』を広めていきたいと思ったからなのです。私は22歳で節約に目覚めました。それまではギャンブル好きの浪費家。節約なんて考えたことがありませんでした。ですが、22歳のある日、一軒の輸入住宅を目にしたとき、『どうしても住宅が欲しい!』という思いが湧きたち、突如「住宅購入」という夢と目標ができたのです。


当時、年収350万円に満たない状況で一人暮らしをしながら、1年で200万円を貯めることができ、貯金額は4年で600万円になりました。それを頭金にして、ついに26歳でマンションを購入できたのです。節約していくことで、禁欲的になるどころか、逆に欲しいものが買えるようになり、実生活でも仕事でもゆとりができて、人生が好転するようにもなりました。節約って本当に楽しいんですよ!」

丸山晴美さん

確かに、丸山さんの言葉にある通り、節約を重ね、その努力の結果、「住宅購入」という夢がかなえられたのなら、後から考えれば節約は楽しいものと言えるのかもしれません。ですが、問題はその過程です。お金が貯まるまでの禁欲的であろう日々は、私のような意志の弱い人間には、辛くてたまらないのではないだろうか? そんなふうに思えてならなかったのです。しかし、その解決策が「作法54」に記されていました。

節約も人生も楽しまなければ損です。年100万円貯めるには「予算」があります。しかし、これしか使えない「制約」とマイナスに捉えるか、それとも限られたなかでどれだけコストパフォーマンスにあふれるものを買えるかと、前向きにゲーム感覚で捉えるかは、大きな違いです。
(中略)私はドラゴンクエストにハマった"ドラクエ世代"。ドラクエがお金の思考回路を築くのに役立ちました。(中略)敵を倒してゴールドを獲得(給料をもらう)→無駄遣いをしない(節約する)→装備を充実させる(よりベストなものを購入する)→(中略)ラスボスに打ち勝ち平和を取り戻す(貯めたお金で夢や希望を叶え幸せに暮らす)私はお金を貯めるとき、何かを購入するときは、ドラクエのことを思い出します。(「作法54より抜粋」)

たとえ100円でも「100円も貯まった」と楽観的に考える

上記について、さらに、丸山さんがコメントして下さいました。

「たとえ節約で残ったお金が100円でも、『100円しか貯まってない』と悲観的に考えるか、『100円も貯まった』と楽観的に考えるかで、節約の効果は違ってきます。『100円も』と前向きにとらえられる人は節約ができる人です。また、どんぶり勘定で浮いた100円と、計画的にやりくりした100円とでは、その価値は違ってきます。大切なのは、お金をどのように使うことが自分にとって有意義で有益なのか、その都度よく考えること。その習慣を身につけることで、お金の価値、お金のありがたみ、さらには、お金への感謝の気持ちが高まってくるのです」

丸山さんは、このようにしてお金の価値観を常に磨き続けてきました。今ある30代の幸せのために、20代は楽しみながら節約に励み、なんと今は、60歳を迎えたときの幸せのために、楽しみながら節約生活を送っているというのです。

いやはや、私も見習いたいものです。整理すると、節約はそれ自体が目的ではなく、あくまでも、夢や目標を達成するための手段であるということ。足元をしっかりと見つめ、今後のライフプランを立てられるよう、まずは年100万円貯金することから始める。スタートはそこからとなります。具体的な方法については、本書の「作法1」から始まる前半部分に実例が記されていますので、ぜひご一読ください。「節約=ケチ」「節約=禁欲」ではないと分かった私も、今日から、「節約」を楽しみながら実践します!

『節約の作法~年100万円必ず貯める55の知恵』

はじめに
節約の作法1~55
家計診断
おわりに

執筆者プロフィール : 鈴木 ともみ(すずき ともみ)

経済キャスター、ファィナンシャルプランナー、DC(確定拠出年金)プランナー。中央大学経済学部国際経済学科卒業後、ラジオNIKKEIに入社し、民間放送連盟賞受賞番組のディレクター、記者を担当。独立後はTV、ラジオへの出演、雑誌連載の他、各種経済セミナーのMC・コーディネーター等を務める。現在は株式市況番組のキャスター。その他、映画情報番組のパーソナリティとして、数多くの監督やハリウッドスターへのインタビューも担当している。