たとえば、科学館。物理学や科学を駆使した面白い展示品やプラネタリウムなどが一箇所に集まっており、男一人で立寄っても2~3時間では足りないくらいに楽しめる。今まで「科学館が死ぬほど嫌いだ」という人に出会ったことがない。僕も科学館が大好きだ。科学館、最高! しかし、30余年の人生で4回しか行ったことがない。

興味はあるのに、どうしても仕事や他の娯楽に時間を使ってしまう。僕の意識下で科学館の存在感が薄いため、いざ遊ぶとなったときに、なかなか上位候補に上がらないのだ。逆に、強いインパクトを頭に刻んでおけば、足を運ぶ頻度が確実に高くなるだろう。

メーカーのショールームも同じ。自社開発の最新技術や製品が一堂に並び、わずか数歩歩くだけで新鮮な驚きが3~4連発で訪れる。技術好きやモノ好きならきっと楽しめるのに、行ったことがないという人も多いのではないだろうか。当コラムでは、各メーカーのショールームを渡り歩いて、記憶に残るような驚きを伝えていきたいと思っている。第一弾は「NEC U Gallery」だ。

緑とカフェと"ひと休み感"に囲まれた空間

NEC U Galleryは、イタリアンカフェ「espressamente illy(エスプレッサメンテ・イリー)」とコラボレーションしたショールームで、カフェ内の一角にNEC製のパソコンや携帯電話などが並ぶ。展示しているパソコンはすべて無料で開放しており、スタッフに声をかければ、インターネットやPC内蔵のアプリケーションが自由に利用できるのだ。

赤い「illy」の看板が目印。小道を挟んで高島屋本店がそびえ立つ

本場イタリアのエスプレッソコーヒーを飲ませてくれるespressamente illy日本橋中央通り店。広々として店内は、休憩や打ち合わせに最適だ

店内を進むと、「NEC U Gallery」の文字が見える。その手前のエリアからNECのパソコンが置かれている

ギャラリー内は緑が溢れており、illyのコーヒーを脇に置いて、リラックスした状態でパソコンに触れられる。ここが普通のショールームと決定的に違う。「今日はショールームでワクワクするぞ!」と気合いを入れて出かけなくても、カフェで休憩するついでに敷居をまたげるのだ。もし僕が日本橋で仕事しているなら、有力なサボりスポットになっていたに違いない。実際、Enterキーの中央が摩耗している展示機もいくつかあり、多くの人が長時間利用していることが伺える。

ショールーム側は業務用途の使用や長時間利用の遠慮を呼びかけているが、こっそりUSBメモリを挿してビジネスモードの顔でキーを叩いている男性や、5時間40分もネットの世界でサーフィンし続けた主婦もいるという。迷惑をかけてはいけないけど、彼らの気持ちはよく分かる。とにかく長居したくなるのだ。

カフェと同じように、椅子に座ってくつろぐのが基本スタイルとなる。壁際のテーブルにパソコンが並んでおり、その数は15台以上に上る

ギャラリー内のパソコンは2008年夏モデルが中心。VALUESTAR NやVersaProなどが試し放題だ。地デジチューナー搭載モデルも2台置かれていた

ギャラリー内のパソコンは有害サイトブロックの設定が施されている。しかし、2ちゃんねるは普通に閲覧できた

PaPeRoと遊びながら、照れと戦う

チャイルドケアロボットPaPeRo。2005年3月にリリースされた、子供向け機能に特化したパーソナルロボットだ

NEC U Galleryの顔といえるのが、パーソナルロボットの「PaPeRo(チャイルドケアロボットPaPeRo)」だ。音声認識と静電容量式タッチセンサーを備えており、話しかけたりボディに触ったりすると、様々なアクションを返してくれる。カウンター脇に割と地味に置かれているが、休日は子供の遊び相手として引く手あまたの人気だという。

PaPeRoに登録してある単語を並べた「パペトーク」一覧を参考に、いくつか話しかけてみる。

古田「こんにちは」
PaPeRo「よく聞こえないヨー」
古田「元気?」
PaPeRo「よく聞こえないヨー」

雑音の中でも音声を拾える高性能センサーを備えているはずだが、周囲にいるNECの関係者や一般のお客さんを気にした結果、とても小さくなった僕の声は感知されなかった。そこで、照れながらも少し声量を上げて「モノマネやって」とお願いすると、首を傾けて電子レンジのモノマネをしてくれた。続いて「おどって」と話しかけたら、ボディのLEDを点滅させながら、首や体をリズミカルに動かした。

コツを掴んだあとは、改めて「こんにちは」と挨拶を交わしあったり、頭をなでられて喜ぶ仕草に和んだりと、すっかりPaPeRoの虜になった。しかし、視界に微笑む女性スタッフの顔が入り、我に返る。

カフェの一部という空間で、大人ひとりがPaPeRoと戯れるのはなかなか危険な行為だ。しかし、ショールームであることを考えると、楽しまないと損な気もする。そのあたりの微妙な感情を刺激するのはNEC U Galleryならではといえよう。

しかも、似たような気持ちにさせる展示品が、ほかにも(これまた地味に)用意されていた。後編に続く。

「パペトーク」一覧を参考に、PaPeRoとのコミュニケーションを楽しんだ

PaPeRoにハマった子供には、特製のPaPeRoバッジをプレゼントするという。大人でもお願いすればもらえるそうだ

ショールーム情報
■名称:NEC U Gallery
■営業時間:11:00~19:00(※espressamente illyとは別に設定)
■休館日:なし
■住所:東京都中央区日本橋2-5-13 日本橋富士ビルディング1F espressamente illy日本橋中央通店内
■URL:http://www.nec.co.jp/ad/u-gallery/