ネットもスマホもない昭和の時代、テレビは人々に大きな影響を与えたメディアでした。後に「名作」と呼ばれるドラマの数々が生まれた昭和。

今回は「中村雅俊の青春もの」「ウルトラシリーズ」(TBS)などのロケ地に選ばれ、印象に残るシーンが多い、東京都狛江市の和泉多摩川周辺を取り上げます。名作のロケ地は、昭和、平成、令和を経て、どのように変わったのでしょうか? リアル世代も、そうではない世代も注目です!

「青春ド真中!」の狛江駅前は変わった?

東京都の西端、多摩川の流れと豊かな自然環境に恵まれた狛江市は、昭和から現在に至るまで、数々のドラマのロケ地として登場してきました。その理由は、変化に富んだ、美しく味わい深い風景にあるといえるでしょう。

  • 狛江駅前(写真:マイナビニュース)

    狛江駅前

また、隣接する世田谷区や調布市内に、撮影所や映像プロダクションが数多く存在することも関係がありそうです。狛江市では、狛江市観光協会内に「狛江ロケーションサービス」を設置し、各種調整・撮影の立ち会い・ロケ弁当の手配など、ロケーション撮影の総合窓口事業を通じて、地域の活性化を目指しているそうです。

  • 「青春ド真中!」の最終回で登場した店舗は、いまも営業中

    「青春ド真中!」の最終回で登場した店舗は、いまも営業中

「青春ド真中!」(日本テレビ)の最終回で俊介(中村雅俊)と弓子(藤真利子)が出会った小田急線の狛江駅南口のロータリー。高架駅に変わったいまも1978年(昭和53)当時の面影が残っています。手前の喫茶店「poem」と不動産店舗の先にある焼き鳥屋は、建物は変わっていますが41年前とほぼ同じ場所で営業中。

小田急線の和泉多摩川駅前を散策

歩いて隣の和泉多摩川駅へ。和泉多摩川商店街は、数々のドラマのロケ地として有名です。このアングルは、1974年(昭和49)の多摩川水害を背景とするドラマ「岸辺のアルバム」(TBS)第1話で、買い物帰りの則子(八千草薫)が駅に向かって歩いていたシーン。

当時、通りの先には、駅の改札方面に渡る踏切と大きな桜の木がありました。

  • 和泉多摩川駅前を散策

    和泉多摩川駅前を散策

和泉多摩川駅~登戸駅間が高架線化される前、多摩川土手には踏切がありました。点滅する警報機と対岸の枡形山をバックに鉄橋を渡る小田急線の姿がよみがえります。

ここは「大場久美子のコメットさん」(TBS)第9話にも登場。コメットさん(大場久美子)と沢野佐和子(真屋順子)が並んで家路を急ぐラストシーンなど、数々の昭和ドラマの名場面として語り継がれています。

  • 「大場久美子のコメットさん」の小田急線踏切

    「大場久美子のコメットさん」の小田急線踏切

「ウルトラセブン」に登場した多摩川水道橋

多摩川に架かる世田谷通りの橋「多摩川水道橋」と小田急線踏切間の土手も数々の昭和ドラマに登場します。

  • 多摩川水道橋

    多摩川水道橋

特に「ウルトラセブン」(TBS)第45話「円盤が来た」を始めとする、円谷プロの「ウルトラシリーズ」(TBS)には、対岸の川崎市側の土手と共に、現在も頻繁に使われているそうです。

狛江高等学校に変化は?

都立狛江高校は、サッカー部、ダンス部、吹奏楽部、筝曲部などの部活が盛んで、進学校としても有名です。

この五本松付近の河原から校舎を臨むアングルは、ありとあらゆる昭和ドラマに登場します。1970年代には、背後のマンションも土手下の大きな体育館もなく、手前の樹木も小さかったため、多摩川と白亜の校舎が美しく調和していました。

  • 東京都立狛江高等学校

    東京都立狛江高等学校

多摩川土手の撮影場所で有名な五本松

五本松は「多摩川50景」、「新東京百景」の一つに選ばれている狛江市内の名所。この場所も、「スーパーロボット マッハバロン」(日本テレビ)や「ゆうひが丘の総理大臣」(日本テレビ)など昭和ドラマの舞台として有名です。1970年代は、むき出しの広い砂地でしたが、現在は、根本の周りに綱が張られ、大切に保護されています。

  • 多摩川土手にある有名な五本松

    多摩川土手にある有名な五本松

五本松から川崎側の対岸を臨む。1970年代は、対岸の高層住宅はなく、多摩丘陵の向こうに富士山がそびえる開放的な風景が広がっていました。中村雅俊主演の青春ドラマ「青春ド真中!」(日本テレビ)や「あさひが丘の大統領」(日本テレビ)でも欠かせない舞台です。

  • 五本松から川崎側の対岸を臨む

    五本松から川崎側の対岸を臨む

「青春ド真中!」の西河原公園はどう変わった?

「青春ド真ん中!」(日本テレビ)第12話で小森昭治(神田正輝)が宮本典江(斉藤とも子)に勉強を教えるシーンなど、こちらも数々の昭和ドラマに登場する西河原公園。

「あさひが丘の大統領」(日本テレビ)1979年(昭和54)~、「スーパーロボット マッハバロン」(日本テレビ)1974年(昭和49)~※造成中に撮影、「大場久美子のコメットさん」(TBS)1978年(昭和53)~など、使われたドラマは数知れず。まさに狛江市内ロケ地の聖地といえる場所。

  • 狛江市内ロケ地の聖地といえる西河原公園

    狛江市内ロケ地の聖地といえる西河原公園

1975年(昭和50)に開園した西河原公園。昭和ドラマの全盛期だった1970年代末、同公園は出来たばかりで、低木と芝生が広がる開放感あふれる場所でした。

現在、成長した樹々に覆われた公園の中で、変わらないのがこの噴水。水は止められていましたが、いまでも現役だそうです。

  • いまでも現役の噴水

    いまでも現役の噴水

ウルトラシリーズによく登場する多摩川住宅

調布市と狛江市にまたがる、多摩川のほとりに建設されたマンモス団地「多摩川住宅」。

  • マンモス団地「多摩川住宅」

    マンモス団地「多摩川住宅」

同団地は1968年(昭和43)完成。33万4,000平方メートルの敷地に88の住宅棟(約3,870戸)がたち並び、建設当時は異例の規模だったことから、現在の上皇陛下が皇太子時代に視察に訪れるほど話題になりました。

この団地も「ウルトラシリーズ」(TBS)を始め、数々の昭和ドラマの舞台に使われています。

  • 高さ40メートルの給水塔

    高さ40メートルの給水塔

同団地のシンボルは、高さ40メートルの給水塔。団地内に5基がそびえています。「ウルトラマン」(TBS)第26・27話「怪獣殿下」、「ウルトラセブン」(TBS)第9話「アンドロイド0指令」、「ウルトラマンA」(TBS)第25話「ピラミッドは超獣の巣だ!」、「怪獣ブースカ」(日本テレビ)第3話「ブースカ対パースカ」など、給水塔、団地内の公園、住居棟など、あらゆる場所がロケ地として使われました。

「ゆうひが丘の総理大臣」にも登場した樋門

「ゆうひが丘の総理大臣」(日本テレビ)第33話「初恋は甘くせつなく」に登場する調布排水樋門(ちょうふ・はいすい・ひもん)と多摩川土手。当時とほとんど変わらない姿をいまでも見ることができます。

ちなみに、調布排水樋門より少し上流にある、調布排水樋管(ちょうふ・はいすい・ひかん)は、多摩川住宅に住んでいた、漫画家つげ義春の作品「鳥師」に登場する水門のモデルとして有名です。

  • 調布排水樋門

    調布排水樋門

「大場久美子のコメットさん」に登場した神社

最後は狛江市の総鎮守「伊豆美神社」へ。こちらも「ウルトラシリーズ」(TBS)や時代劇のロケ地として有名です。

その中でも同神社が全面的に撮影協力した「大場久美子のコメットさん」(TBS)第56話「ふるさと恋し七夕祭り」は圧巻! 境内に縁日や盆踊りの櫓などの大規模なセットを組み、ミス七夕コンテストも開催。圧倒的なスケールとリアリティでドラマを盛り上げました。

  • 撮影に全面協力した「伊豆美神社」

    撮影に全面協力した「伊豆美神社」

東京都狛江市内の代表的なロケ地散策、いかがでしたか? 数十年の時を経て、様変わりした場所もあれば、昭和の面影を残す、ほとんど変わらない場所もありました。令和の時代が始まりましたが、古き良き昭和の世界は、いまもロケ地に息づいていました。