ついに樽オープン、マイ味噌の味に感動
2008年1月に「無農薬栽培の米と大豆でマイ味噌を仕込む」と題して、味噌作りに参加した話を紹介した。それから5カ月間、マイ味噌の樽を階段の隅っこで寝かせてきた。
味噌の発酵熟成にはさまざまな方法があり、「仕込んで1カ月後から毎月1回くらいヘラでかき混ぜて酸素を入れた方がいい」という説もある。しかし、ぼくはこの"切り返し"と呼ばれるプロセスを行わずに、そのまま静かに放置しておいた。なにしろはじめての挑戦なので、できる限り作業の数は少ない方が失敗しないように思えたからだ。
味噌作りに詳しい知り合いから「5月になったらもう食べられるよ」と聞いていたので、5月下旬のある日、ドキドキしながら開けてみた。
仕込んだときのビニール袋に入った状態のまま、樽の中で発酵している味噌を取り出してみる。指先ですくって、ひとなめ。むむむ、これはうまい! 思ったほどしょっぱくない!いや、それどころか、かなりギリギリの絶妙な低塩レベルに仕上がっている分、大豆の何ともいえない香りや甘味が口中に広がり、そこへ重なるようにアミノ酸のうま味が押し寄せてくる。スバラシイ!
それからは毎日のように味噌を食べた。キャベツやキュウリにつけて、うっとり。味噌汁や冷や汁を作って、またうっとり。味噌たっぷりの焼きおにぎりも、たまらない味わいだった。そもそも、これほどまでに味噌という調味料に感動したことがあっただろうか。
はじめての種蒔きはフライング大失敗
ぼくのようなシロウトのはじめて仕込んだ味噌が、なぜそこまでおいしくできたのか、といえば、やっぱり「味噌作りの会」の親切な指導と、用意してくれた原料のおかげ。無農薬栽培の大豆と、麹となる無農薬栽培米があったからこそ、ぼくは天然塩を用意するだけで、素晴らしいオーガニック味噌を作ることができた。
そこで今年は、味噌作りの"はじめの一歩"である大豆栽培も自分で体験してみたくなり、「味噌作りの会」の姉妹組織(?)である「大豆の会」から参加させてもらうことにした。
6月8日に小田原市永塚で行われた田植え(去年の様子はこちら)の直後、毎年「味噌作りの会」および「大豆の会」をとりまとめている中原茂樹さんに大豆栽培をしてみたいと話すと、さっそく種大豆(昨年収穫した大豆の一部を種として取っておいたもの)と、それを蒔いて苗を作るためのセルトレーを持ってきてくれた。
うちは海辺にあるので、庭に何か農作物を植えても潮風の影響でたいていうまく育たない。大豆もおそらくダメだろう、ということで、無難に25穴のセルトレー2つ分(=苗50本分)だけにしておいた。
実は中原さんにお会いした時、田植え後の"早苗振り"という名の宴会で酒を飲み、少々酔っぱらっていたため、中原さんの指示をしっかり聞いていなかった。そのため翌日に、種大豆をセルトレーに蒔いてしまったのだが、これはおよそ1カ月も早いフライングだった。
それがわかったのは、6月末。中原さんから「7月10日前後に種大豆を蒔いてください」というメールが届いたとき。もちろん、すでに我が大豆は潮風に負けることなく、立派な苗に成長していた……とほほ。
中原さんにありのままを告白すると、「毎年ひとりはいるんですよね、そういう人が。その苗はもう畑で使えないので、庭にでも植えてください。早い時期に蒔いてしまうと実のつきが悪いんですけど、運がよければ枝豆で食べられるかもしれません」。フライングを反省しつつ、それでもこっそり「枝豆ヤッホー!」と喜びつつ、多めにもらっていた種大豆を7月10日にあらためて蒔きなおした。
夏場の農作業にクラクラしながらも
そして、7月20日10時。「大豆の会」参加者は、それぞれ自宅で育ててきた苗を持ち寄って、小田原市西大友にある畑へ集合。
5月17日に15名が参加して、大豆畑の耕運と畝立て(苗を植えるための畝作り)を済ませてくれていたので、ぼくらが訪れたときには、1反(約992平方メートル)の畑に整然と畝が並んでいた。休耕田を利用した畑ゆえ、土はやわらかくて栄養たっぷり、大豆を栽培するにはもってこいの環境だという。
参加者たちの手には、約40cmの棒。後に畑の手入れをするときに、株間の間隔が40cm程あると、草刈り機を使いやすいそうだ。今回の定植に集まった人は総計65名(大人49名、子供16名)、みんなで持ち寄った苗の数は、おそらく2,000本前後。
この日は午前中から無風でカンカン照り、小さな穴を掘って苗を植えていく軽作業なのに汗がふき出る。それでも正午までの約2時間で、無事に定植完了。畑の空いたスペースに、余った種大豆も蒔いた。大豆の芽は鳩の大好物らしく、その後、半分以上が食べられてしまったそうだが。
今後の大豆畑での作業は草刈りが中心となり、まず8月に2回ほど草刈りが予定されている。昨年は11月下旬に刈り取った大豆を乾燥させて脱粒。約0.7反の畑で165kgもの大豆を収穫し、それを使って1月に味噌を仕込んだ。今年もおそらくほぼ同じ流れになるのだろう。
自分の蒔いた種から育った大豆が、やがて味噌になる。しかも、その味噌が素晴らしくおいしいことを、ぼくはもう知っている。